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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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鈴は濡れる双眸で隼人を見詰め、里桜を見る。
「鈴は今もこれからも俺の弟だよ」
「兄ちゃん、兄ちゃん」
里桜に手を伸ばし、ワッと泣く鈴を里桜が抱き締める。
「鈴、お前の家族は此処に居るんだからな?」
「うん」
鈴は真っ赤な眼になりながらまるでウサギだと疾風にからかわれた。
後日、鈴は疾風から、隼人を怒らせた後に車には乗るなと、忠告されて首を傾げていたのだった。
少しずつだが光が溢れるように、鈴の記憶の片隅にそれは突如として表れた。
『私はいつも笑顔の鈴ちゃんが大好きなの』
滝沢鈴音は泣き止まない鈴を膝に載せて、苛立ちながら云った。四歳の誕生日、小さなケーキを買って貰えた嬉しさで、ケーキの入った箱を手にしたまま、玄関で盛大に転びケーキを台無しにしてしまったのだ。
『いつまでも泣く鈴ちゃんは、ママは嫌いよ?』
ヒクッと泣き顔を、背後の鈴音に向ける。
『鈴ね? 泣かないの。だからママは鈴を嫌いにならないでっ』
涙で濡れた顔を、小さな手でゴシゴシと拭う。泣かなければこの人に嫌われない。
捨てられない。だから良い子で居る。だからいっぱい抱き締めて。
『泣かない鈴は良い子ね。ママ好きよ?』
『うん。いいこでいるの』
『鈴ちゃんのママ遅いね』
託児所の窓から外を見る鈴に、保育士が云う。外はマンハッタンの高層ビルが建ち並び、託児所が在るのは鈴音の職場の近くだ。
『ママ、おしごといそがしいの。だからりんまつの』
振り向かずに、自分に云い聞かせる鈴に、他の保育士が顔を見合わせる。
『あの子、此処に来てから一度も泣かないのよね』
『確かお母さん、出版社の勤務よね? 他に頼れる人いないのかしら…もうこんな時間よ?』
『アパートで二人暮らしらしいわよ』
鈴は俯いて、涙を堪えた。泣いたら嫌われる。ママに捨てられる。鈴の小さな胸は、張り裂けそうだった。鈴音と鈴の親子関係に、終止符が打たれたのは、鈴が四歳の冬。鈴音の仕事が原因で子育てが難しくなった為だった。
『鈴は、薫おばさんの所に行くのよ?』
鈴音は鈴の手を握り締めながら、日本の祖母の家に連れて来られた。
『ママ?』
鈴は首を傾げて見上げ、鈴と眼を合わせた天音薫を見る。その人は膝を着いて、鈴と同じ目線になる。
『初めまして鈴。私は天音薫よ。同じ年の里桜って子が居るんだけど、仲良くしてね? 今おばあちゃんとお買い物に行ってるの。もう直ぐ帰るわ』
『じゃあ、薫。悪いけどお願い』
立ち去ろうとする姿に、鈴はびっくりした。
『急に来たと思ったら、母さんきっと驚くわよ』
『だって、向こうに子供は無理よ。この間も事件が起きて…危険だもの。それに』
云いながらふと鈴を見る。
『可愛い所、薫にそっくり。だからいらないの』
『姉さん!』
鈴は双眸を見開き、涙を浮かべた。
『バイバイ鈴』
『…っ!』
車に乗り、エンジンを掛ける音に鈴は駆け寄る。
『危ない!』
背後から慌てて鈴の手を掴む。
『ま、マ~マ、ママ~あ~う~、うわ~っ!』
ーーーなんで? どうして? いいこにしてたらすてられないんじゃなかったの?
腕の中で暴れて泣く鈴の声がおかしい。
『鈴っ? 声…』
『う~っ!』
「鈴は今もこれからも俺の弟だよ」
「兄ちゃん、兄ちゃん」
里桜に手を伸ばし、ワッと泣く鈴を里桜が抱き締める。
「鈴、お前の家族は此処に居るんだからな?」
「うん」
鈴は真っ赤な眼になりながらまるでウサギだと疾風にからかわれた。
後日、鈴は疾風から、隼人を怒らせた後に車には乗るなと、忠告されて首を傾げていたのだった。
少しずつだが光が溢れるように、鈴の記憶の片隅にそれは突如として表れた。
『私はいつも笑顔の鈴ちゃんが大好きなの』
滝沢鈴音は泣き止まない鈴を膝に載せて、苛立ちながら云った。四歳の誕生日、小さなケーキを買って貰えた嬉しさで、ケーキの入った箱を手にしたまま、玄関で盛大に転びケーキを台無しにしてしまったのだ。
『いつまでも泣く鈴ちゃんは、ママは嫌いよ?』
ヒクッと泣き顔を、背後の鈴音に向ける。
『鈴ね? 泣かないの。だからママは鈴を嫌いにならないでっ』
涙で濡れた顔を、小さな手でゴシゴシと拭う。泣かなければこの人に嫌われない。
捨てられない。だから良い子で居る。だからいっぱい抱き締めて。
『泣かない鈴は良い子ね。ママ好きよ?』
『うん。いいこでいるの』
『鈴ちゃんのママ遅いね』
託児所の窓から外を見る鈴に、保育士が云う。外はマンハッタンの高層ビルが建ち並び、託児所が在るのは鈴音の職場の近くだ。
『ママ、おしごといそがしいの。だからりんまつの』
振り向かずに、自分に云い聞かせる鈴に、他の保育士が顔を見合わせる。
『あの子、此処に来てから一度も泣かないのよね』
『確かお母さん、出版社の勤務よね? 他に頼れる人いないのかしら…もうこんな時間よ?』
『アパートで二人暮らしらしいわよ』
鈴は俯いて、涙を堪えた。泣いたら嫌われる。ママに捨てられる。鈴の小さな胸は、張り裂けそうだった。鈴音と鈴の親子関係に、終止符が打たれたのは、鈴が四歳の冬。鈴音の仕事が原因で子育てが難しくなった為だった。
『鈴は、薫おばさんの所に行くのよ?』
鈴音は鈴の手を握り締めながら、日本の祖母の家に連れて来られた。
『ママ?』
鈴は首を傾げて見上げ、鈴と眼を合わせた天音薫を見る。その人は膝を着いて、鈴と同じ目線になる。
『初めまして鈴。私は天音薫よ。同じ年の里桜って子が居るんだけど、仲良くしてね? 今おばあちゃんとお買い物に行ってるの。もう直ぐ帰るわ』
『じゃあ、薫。悪いけどお願い』
立ち去ろうとする姿に、鈴はびっくりした。
『急に来たと思ったら、母さんきっと驚くわよ』
『だって、向こうに子供は無理よ。この間も事件が起きて…危険だもの。それに』
云いながらふと鈴を見る。
『可愛い所、薫にそっくり。だからいらないの』
『姉さん!』
鈴は双眸を見開き、涙を浮かべた。
『バイバイ鈴』
『…っ!』
車に乗り、エンジンを掛ける音に鈴は駆け寄る。
『危ない!』
背後から慌てて鈴の手を掴む。
『ま、マ~マ、ママ~あ~う~、うわ~っ!』
ーーーなんで? どうして? いいこにしてたらすてられないんじゃなかったの?
腕の中で暴れて泣く鈴の声がおかしい。
『鈴っ? 声…』
『う~っ!』
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