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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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「痛くないよ」
微笑する隼人を見上げる鈴は、その凛々しい顔立ちに見とれ、そして直ぐにチクンとした感触に瞬きした。
「ほら終わった」
鈴は隼人の腕と自分の腕を見比べ、傍に居た里桜を見る。
「りんすごいよ、おわったよ?」
「……おわったの?」
鈴は双眸を見開き、隼人を再び見上げた。
「鈴ちゃん偉いな」
頭を撫でられて、胸がトクンと鳴る。
手にはウサギのキーホルダー。
その日から鈴は、ウサギのキーホルダーを宝物にし、小早川隼人に淡い恋を抱き始めたのだ。
天音鈴、季節は秋。五歳の恋だった。
ピピピピピ…。
枕許に置いている目覚まし時計を、布団から手を出してオフにする。窓辺には雀がチュンと鳴いている。兄の里桜が二段ベッドを降りた。
「鈴、先に階下へ行くからな? ちゃんと起きろよ?」
「う~ん…」
里桜が部屋から出て行く気配に急かされるように、鈴は眠たげに目蓋を擦った。枕許に置いた鍵に付けた、薄汚れたウサギのマスコット。前は通学鞄に付けていたが、教室で一度落としてから、鍵にぶら下げるようにした。これはとても大切な、鈴の宝物。
「おはよう、隼人さん」
ウサギのマスコットにキスをして、鈴はベッドから降りる。隼人というのは、鈴の片思いの人で、ハンサムで優しくてカッコイイ素敵なお医者様。鈴の憧れの人だ。
天音家の朝は、毎日暖かな味噌汁の匂いから始まる。
「おはよう鈴、顔洗って席に着いて」
「は~い、おはよう母ちゃん」
鈴はキッチンで挨拶をし、既に席に着いていた里桜を見る。
「兄ちゃん、ウインナー頂戴!」
叫んで鈴は洗面所へ駆けて行く。
「里桜は優しいわね」
里桜が鈴の皿にウインナーを移しているのを見た薫は、苦笑して里桜にヨーグルトを手渡した。
里桜と鈴は二卵生の双子だ。
父親は既に他界し、薫が女手ひとつで二人をを育てている。薫は隣街に在る個人病院『小早川医院』に勤める看護婦だ。二人はこの春に大学付属高校、王蘭学園に通う二年生となっていた。
「あ、兄ちゃんありがとう~」
席に着いた鈴はいただきますと手を合わせて、ウインナーを頬張る。薫は二人が食事をし始めたのを見届けて、コホンと咳をした。
「あのね、あなた達に大事な話が有るの」
薰は二人の向かい側に腰を降ろすと、改まった顔で見詰めて来た。
「私妊娠したの」
「「…………」」
爆弾発言に二人は固まり、鈴はウインナーを吹き出した。
「ちょっと、鈴!」
微笑する隼人を見上げる鈴は、その凛々しい顔立ちに見とれ、そして直ぐにチクンとした感触に瞬きした。
「ほら終わった」
鈴は隼人の腕と自分の腕を見比べ、傍に居た里桜を見る。
「りんすごいよ、おわったよ?」
「……おわったの?」
鈴は双眸を見開き、隼人を再び見上げた。
「鈴ちゃん偉いな」
頭を撫でられて、胸がトクンと鳴る。
手にはウサギのキーホルダー。
その日から鈴は、ウサギのキーホルダーを宝物にし、小早川隼人に淡い恋を抱き始めたのだ。
天音鈴、季節は秋。五歳の恋だった。
ピピピピピ…。
枕許に置いている目覚まし時計を、布団から手を出してオフにする。窓辺には雀がチュンと鳴いている。兄の里桜が二段ベッドを降りた。
「鈴、先に階下へ行くからな? ちゃんと起きろよ?」
「う~ん…」
里桜が部屋から出て行く気配に急かされるように、鈴は眠たげに目蓋を擦った。枕許に置いた鍵に付けた、薄汚れたウサギのマスコット。前は通学鞄に付けていたが、教室で一度落としてから、鍵にぶら下げるようにした。これはとても大切な、鈴の宝物。
「おはよう、隼人さん」
ウサギのマスコットにキスをして、鈴はベッドから降りる。隼人というのは、鈴の片思いの人で、ハンサムで優しくてカッコイイ素敵なお医者様。鈴の憧れの人だ。
天音家の朝は、毎日暖かな味噌汁の匂いから始まる。
「おはよう鈴、顔洗って席に着いて」
「は~い、おはよう母ちゃん」
鈴はキッチンで挨拶をし、既に席に着いていた里桜を見る。
「兄ちゃん、ウインナー頂戴!」
叫んで鈴は洗面所へ駆けて行く。
「里桜は優しいわね」
里桜が鈴の皿にウインナーを移しているのを見た薫は、苦笑して里桜にヨーグルトを手渡した。
里桜と鈴は二卵生の双子だ。
父親は既に他界し、薫が女手ひとつで二人をを育てている。薫は隣街に在る個人病院『小早川医院』に勤める看護婦だ。二人はこの春に大学付属高校、王蘭学園に通う二年生となっていた。
「あ、兄ちゃんありがとう~」
席に着いた鈴はいただきますと手を合わせて、ウインナーを頬張る。薫は二人が食事をし始めたのを見届けて、コホンと咳をした。
「あのね、あなた達に大事な話が有るの」
薰は二人の向かい側に腰を降ろすと、改まった顔で見詰めて来た。
「私妊娠したの」
「「…………」」
爆弾発言に二人は固まり、鈴はウインナーを吹き出した。
「ちょっと、鈴!」
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