鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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「どうしたイムホテップ」
 近衛隊で同僚のアンリが、私が連れて来た子供を見る。子供は怯えて私の服の裾を握り締めていた。
「道中、流行病で死んだ女に縋り付いて泣いていたんだ」
「おま、流行病だと!?」
 アンリがズサッと後ずさった。
「なんだ怖いのか?」
「当り前だろう!? 流行病だぞ!」
 アンリの態度にショックだったのか、子供は声を殺してポロポロと泣き出してしまった。
「この子は大丈夫だ、見付けて直ぐに薬湯に入れて磨いたし、薬草を無理やり飲ませたからな」
「あ、あのすんげぇまずいやつか…ぼうず気の毒だったな」
 アンリが同情の眼を子供に向け始めた。
「失礼な。先祖代々の秘儀の薬草だぞ」
「……あ~はいはい。で? どうするんだよ子供を養子にでもする気か?」
「いや。ちょうど下働きの下男が不足していると聞いていたからな」
「お前名前名ていうんだ? 随分と綺麗なめん玉してんな。碧くてラピスラズリみたいだ」
『おじさん何云ってるか解んない』
 子供が外国語を話す。
「なんて云ったんだ?」
「アンリ、この子は移民の子供だ。どうやら内戦に巻き込まれて姉と逃げて来たみたいだ」
「へえ」
『ルリ、こいつはアンリだ。私の幼馴染だ』
『あ、ん、り?』
「お? 今のは通じたぞ? お前ルリっていうのか?」
 ルリが頷く。
「そうか、ルリか。ルリはエジプトの守り神の石の名だ。ラピスラズリだ」
『?』
『守り神の石と、同じ名と一緒だとアンリが云っている』
『本当? なら僕はイムホテップ様の守り石になる』
 ルリの嬉しそうな顔を、イムホテップは優しく見詰めていた。碧い瞳の愛らしい少年を。
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