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闇に咲く華
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様子を見に竹塚がリビングへ向かう。セキュリティが作動して、今頃は母親の元に連絡が行くだろう。
「…先生」
竹塚はパンっと律の頬を叩く。律は双眸を見開いて顔をくしゃっと歪ませた。涙が溢れる。
「皆がお前をどれだけ心配したと思っているんだ!?」
怒鳴られてレオンが律を庇おうと竹塚に吠える。
「レオンは黙れ! 俺はお前の飼い主だぞ!」
「ウ~」
レオンが唸る。竹塚はレオンの顔を押しのけて、律を睨んだ。
「心配したんだぞ、お前が死んだらとずっとっ」
「ごめ、なさ、ごめっ」
竹塚は泣く律を力一杯抱き締めた。
「もう馬鹿な事はするな。俺を置いて逝こうとするなっ」
ふと顔を上げた律は、玄関で困り顔の警察官二人と眼があった。玄関が開いていたのだ。
「あの~」
「うわっ!?」
竹塚がビビる。背後に律を庇うと、警察官二人が頬を染めながら、
「タクシードライバーから子供がひとりで別荘へ向かったからと、心配して署に通報がありまして……家出じゃないかと云うので探していたら、こちらに車が入るのが外の監視カメラに映ったと連絡が来まして…」
「セキュリティが作動したんですね。ご心配なく別荘の持ち主の家族なので」
「……身元確認できます?? さっきあんたその子を怒鳴って引っぱたいたでしょう?」
虐待かと疑いの眼差しで訊かれる。
「あ、あの、お巡りさんごめんなさいこの人僕のお父さんなの。家出して探しに来てくれたんだ。だから怪しい人じゃないよ?」
「「あぁ、そうなんだ」」
警察官二人がハモり、竹塚が固まる。
ーーーお父さん???
「じゃあ、さっき別荘の前の道路で、白いワンピの女の人が君のお母さんかな? その人息子がこの中に居るからって、教えてくれてね」
「それじゃ事件性無さそうだからこれで」
「どうもありがとうございます」
竹塚がお礼を云って見送ると、玄関のドアの鍵を掛ける。
「……女の人?」
竹塚が首を傾げた。
「律、俺はいつからお前の『お父さん』だ?」
「えっと……つい。ごめんなさい先生」
竹塚が溜め息を零す。
「次は無いと思えよ。俺はお袋に電話してくるから。レオンは律を見張っていろ」
「ワンっ!!」
頼もしく返事が返ってきたので、竹塚は自宅に電話を掛けた。
警察官二人がパトカーに乗り込んで、ホッとした刹那。
「そういえば雪降ってるこの時期に半袖のワンピース姿って、寒くないんですかね」
「風邪ひきそうだよな」
「ですね」
「…先生」
竹塚はパンっと律の頬を叩く。律は双眸を見開いて顔をくしゃっと歪ませた。涙が溢れる。
「皆がお前をどれだけ心配したと思っているんだ!?」
怒鳴られてレオンが律を庇おうと竹塚に吠える。
「レオンは黙れ! 俺はお前の飼い主だぞ!」
「ウ~」
レオンが唸る。竹塚はレオンの顔を押しのけて、律を睨んだ。
「心配したんだぞ、お前が死んだらとずっとっ」
「ごめ、なさ、ごめっ」
竹塚は泣く律を力一杯抱き締めた。
「もう馬鹿な事はするな。俺を置いて逝こうとするなっ」
ふと顔を上げた律は、玄関で困り顔の警察官二人と眼があった。玄関が開いていたのだ。
「あの~」
「うわっ!?」
竹塚がビビる。背後に律を庇うと、警察官二人が頬を染めながら、
「タクシードライバーから子供がひとりで別荘へ向かったからと、心配して署に通報がありまして……家出じゃないかと云うので探していたら、こちらに車が入るのが外の監視カメラに映ったと連絡が来まして…」
「セキュリティが作動したんですね。ご心配なく別荘の持ち主の家族なので」
「……身元確認できます?? さっきあんたその子を怒鳴って引っぱたいたでしょう?」
虐待かと疑いの眼差しで訊かれる。
「あ、あの、お巡りさんごめんなさいこの人僕のお父さんなの。家出して探しに来てくれたんだ。だから怪しい人じゃないよ?」
「「あぁ、そうなんだ」」
警察官二人がハモり、竹塚が固まる。
ーーーお父さん???
「じゃあ、さっき別荘の前の道路で、白いワンピの女の人が君のお母さんかな? その人息子がこの中に居るからって、教えてくれてね」
「それじゃ事件性無さそうだからこれで」
「どうもありがとうございます」
竹塚がお礼を云って見送ると、玄関のドアの鍵を掛ける。
「……女の人?」
竹塚が首を傾げた。
「律、俺はいつからお前の『お父さん』だ?」
「えっと……つい。ごめんなさい先生」
竹塚が溜め息を零す。
「次は無いと思えよ。俺はお袋に電話してくるから。レオンは律を見張っていろ」
「ワンっ!!」
頼もしく返事が返ってきたので、竹塚は自宅に電話を掛けた。
警察官二人がパトカーに乗り込んで、ホッとした刹那。
「そういえば雪降ってるこの時期に半袖のワンピース姿って、寒くないんですかね」
「風邪ひきそうだよな」
「ですね」
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