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闇に咲く華
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『この世から消えて欲しいわ。こいつの家族クソじゃん』
どれも悪意のある投稿に律は怒りと悲しみで震えた。
『一緒に居るの学校の先生じゃないの?』
『どんな関係?』
「律っ」
声を殺して泣くしか出来ない律を抱き締める。
「酷いわ、今時の子はなんなのよ!?」
「母さん律を二階に運ぶから、明日の診察キャンセルして、訪問診察出来ないか訊いてみてくれないか? 俺は律についてるから」
「解ったわ」
突然、抱き上げられた律が驚いて竹塚にしがみつく。
夏紀が自分の携帯から病院に問い合わせの電話を早速掛け始めていた。律はベッドに下ろされると、竹塚の手を震えながら握り締めた。
「大丈夫か?」
「……少し寝るよ。まだ、なんか疲れてるみたいだ」
極力平静を装って云う。
「…そうか。後で様子を見に来るからな?」
掛け布団を肩まで掛けてやると、部屋を後にした。律の携帯はリビングに置いたままだ。
ーーーやっぱりあの時の視線は勘違いじゃなかった。
「あれ? ちょっと、待って? そしたら……」
律がこの家に居るのも、その内バレるのではないか? 律は慌てて起き上がり、竹塚親子を思い浮かべ、頭を抱えた。
「関係無い人まで巻き込むんじゃないのか?」
律はベッドから出ると机の上にメモを残す。次にクローゼットからコートと帽子、事件の前まで小遣いにと、和也から渡されていたお金をポケットに突っ込むと、マスクを手に部屋の外を伺った。早くこの家から出なくては。
携帯はリビングに置いたままだが諦めた。そっと階段を下りて気配を消し、靴を履いてそっと玄関を出る。レオンが耳をピクリと動かして、リビングの扉に向かって吠えた。
律は焦る気持ちを何とか抑えながら大通りを目指した。
ーーーごめんなさい。先生、おばさん。これ以上此処に居たら迷惑になる。
涙が冷えた空中に舞う。律はタクシーを探した。
「病院どうだって?」
リビングで竹塚が問う。夏紀が振り返って首を横に振った。
「診察はどうしてもレントゲンと脳波の検査があるから、来て貰わないとダメだって」
「…そうか」
「でも本当に許せないわ。さっきテレビでも携帯に出ていた画面と同じ物が流れたのよ! 賛否両論だって。人を何だと思ってるのかしらっ律君は被害者なのに」
「ワンっ!!」
二人がビクッと肩を揺らした。レオンがソワソワとしている。
「レオン?」
竹塚が天井を見上げた。
「……律?」
竹塚がリビングの扉を開けると、レオンが真っ先に玄関のドアを、前足で叩いている。
「母さん上を見てくる」
竹塚は急いで律の部屋へ向かった。
「律っ!」
どれも悪意のある投稿に律は怒りと悲しみで震えた。
『一緒に居るの学校の先生じゃないの?』
『どんな関係?』
「律っ」
声を殺して泣くしか出来ない律を抱き締める。
「酷いわ、今時の子はなんなのよ!?」
「母さん律を二階に運ぶから、明日の診察キャンセルして、訪問診察出来ないか訊いてみてくれないか? 俺は律についてるから」
「解ったわ」
突然、抱き上げられた律が驚いて竹塚にしがみつく。
夏紀が自分の携帯から病院に問い合わせの電話を早速掛け始めていた。律はベッドに下ろされると、竹塚の手を震えながら握り締めた。
「大丈夫か?」
「……少し寝るよ。まだ、なんか疲れてるみたいだ」
極力平静を装って云う。
「…そうか。後で様子を見に来るからな?」
掛け布団を肩まで掛けてやると、部屋を後にした。律の携帯はリビングに置いたままだ。
ーーーやっぱりあの時の視線は勘違いじゃなかった。
「あれ? ちょっと、待って? そしたら……」
律がこの家に居るのも、その内バレるのではないか? 律は慌てて起き上がり、竹塚親子を思い浮かべ、頭を抱えた。
「関係無い人まで巻き込むんじゃないのか?」
律はベッドから出ると机の上にメモを残す。次にクローゼットからコートと帽子、事件の前まで小遣いにと、和也から渡されていたお金をポケットに突っ込むと、マスクを手に部屋の外を伺った。早くこの家から出なくては。
携帯はリビングに置いたままだが諦めた。そっと階段を下りて気配を消し、靴を履いてそっと玄関を出る。レオンが耳をピクリと動かして、リビングの扉に向かって吠えた。
律は焦る気持ちを何とか抑えながら大通りを目指した。
ーーーごめんなさい。先生、おばさん。これ以上此処に居たら迷惑になる。
涙が冷えた空中に舞う。律はタクシーを探した。
「病院どうだって?」
リビングで竹塚が問う。夏紀が振り返って首を横に振った。
「診察はどうしてもレントゲンと脳波の検査があるから、来て貰わないとダメだって」
「…そうか」
「でも本当に許せないわ。さっきテレビでも携帯に出ていた画面と同じ物が流れたのよ! 賛否両論だって。人を何だと思ってるのかしらっ律君は被害者なのに」
「ワンっ!!」
二人がビクッと肩を揺らした。レオンがソワソワとしている。
「レオン?」
竹塚が天井を見上げた。
「……律?」
竹塚がリビングの扉を開けると、レオンが真っ先に玄関のドアを、前足で叩いている。
「母さん上を見てくる」
竹塚は急いで律の部屋へ向かった。
「律っ!」
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