43 / 54
闇に咲く華
しおりを挟む
「水分は摂取しているんですが、明日も食事を摂らないようなら点滴に切り替えると、担当医から…。律君、歩く練習をし始めてからどうやらマスコミやテレビのニュースに、今回のこと気付いたみたいで」
婦長が溜め息を零す。
「明日土曜日で休みですから、明日退院出来るか訊いて貰っても良いですか? 律に懐いている家の犬を見れば、元気が出るかと思うんですが」
「まあ、動物はセラピーのに良いんですよ! 早速先生に聞いてみます」
婦長が嬉しそうにナースステーションへ急いだ。
竹塚は病室のドアを開けると、律がベッドに横になって天井を見上げていた。意識が戻ってから、よく律は天井を見上げている。視界に竹塚が映ると、律は上半身を起こした。
「もうだいぶ動けるのか?」
手帳に書いて見せる。
「うん。今日は階段の上り下りしたよ?」
「そうか」
そっと律を抱き締めて、唇にそっとキスをする。
「担当の先生が、退院出来ると判断してくれたら、明日俺の家に一緒に帰ろうな」
と、手帳に書くと律は驚いて竹塚を見上げた。
「レオンに会えるの?」
竹塚が頷く。
「…行っても良いの? 僕、きっと迷惑掛けるよ?」
「子供はそんな事なんか気にするな」
手帳に書かれた文字に、律は涙を浮かべた。竹塚がベッドに腰を掛けて、律を寝かせながら前髪を優しく梳く。気持ちが良いのかうっとりとして、双眸を閉じるとやがて睡魔が訪れた。
「おやすみ律」
「…先生。僕、お母さんに会いたい」
髪を梳く手が止まる。
「捨てられたと思ってた。でも違ってた」
「…律?」
「隠れん坊は終わっていないんだ」
ーーーお母さん? 直子じゃないと思うが…殺された方の人のことか?
泣きすぎて紅くなった律の目尻にキスをして、病室を出る。
ーーーこの胸騒ぎはなんだ?
胸に手を当てて、律の言葉を思い出していた。
マスコミを避けて竹塚の自宅に戻ってきた二人は、竹塚の母親から「ずっとこの家に居なさい」と云われた律は、ホワイトボードにその言葉を書かれたのを見て、嬉しすぎてまた泣いた。
「お前どんだけ泣き虫なんだ?」
ホワイトボードに書かれて律は頬を赤らめる。レオンが久し振りの律を前に、遊んでと大騒ぎ。取り敢えず泣き虫発言はスルーすることに決めた。
午後からレオンと庭で遊んでいた律の声が聞こえなくなり、竹塚は和室の縁側から律を探した。
「…律?」
寝そべったレオンの腹に頭を乗せて、律は遊び疲れたのか眠っている。急いで膝掛けを手に、サンダルを履いて外へ出た。
「風邪をひいたらどうするんだ?」
竹塚が歩み寄るとレオンが竹塚に気付いて見上げ、その振動で律が眼を覚ました。竹塚を見る。竹塚が律を抱き上げて縁側に座らせた。食欲の無い律は元々華奢だったのが、また体重が落ちている。夏紀は律の体重を増やそうと、夕飯の献立に夢中になっている。
婦長が溜め息を零す。
「明日土曜日で休みですから、明日退院出来るか訊いて貰っても良いですか? 律に懐いている家の犬を見れば、元気が出るかと思うんですが」
「まあ、動物はセラピーのに良いんですよ! 早速先生に聞いてみます」
婦長が嬉しそうにナースステーションへ急いだ。
竹塚は病室のドアを開けると、律がベッドに横になって天井を見上げていた。意識が戻ってから、よく律は天井を見上げている。視界に竹塚が映ると、律は上半身を起こした。
「もうだいぶ動けるのか?」
手帳に書いて見せる。
「うん。今日は階段の上り下りしたよ?」
「そうか」
そっと律を抱き締めて、唇にそっとキスをする。
「担当の先生が、退院出来ると判断してくれたら、明日俺の家に一緒に帰ろうな」
と、手帳に書くと律は驚いて竹塚を見上げた。
「レオンに会えるの?」
竹塚が頷く。
「…行っても良いの? 僕、きっと迷惑掛けるよ?」
「子供はそんな事なんか気にするな」
手帳に書かれた文字に、律は涙を浮かべた。竹塚がベッドに腰を掛けて、律を寝かせながら前髪を優しく梳く。気持ちが良いのかうっとりとして、双眸を閉じるとやがて睡魔が訪れた。
「おやすみ律」
「…先生。僕、お母さんに会いたい」
髪を梳く手が止まる。
「捨てられたと思ってた。でも違ってた」
「…律?」
「隠れん坊は終わっていないんだ」
ーーーお母さん? 直子じゃないと思うが…殺された方の人のことか?
泣きすぎて紅くなった律の目尻にキスをして、病室を出る。
ーーーこの胸騒ぎはなんだ?
胸に手を当てて、律の言葉を思い出していた。
マスコミを避けて竹塚の自宅に戻ってきた二人は、竹塚の母親から「ずっとこの家に居なさい」と云われた律は、ホワイトボードにその言葉を書かれたのを見て、嬉しすぎてまた泣いた。
「お前どんだけ泣き虫なんだ?」
ホワイトボードに書かれて律は頬を赤らめる。レオンが久し振りの律を前に、遊んでと大騒ぎ。取り敢えず泣き虫発言はスルーすることに決めた。
午後からレオンと庭で遊んでいた律の声が聞こえなくなり、竹塚は和室の縁側から律を探した。
「…律?」
寝そべったレオンの腹に頭を乗せて、律は遊び疲れたのか眠っている。急いで膝掛けを手に、サンダルを履いて外へ出た。
「風邪をひいたらどうするんだ?」
竹塚が歩み寄るとレオンが竹塚に気付いて見上げ、その振動で律が眼を覚ました。竹塚を見る。竹塚が律を抱き上げて縁側に座らせた。食欲の無い律は元々華奢だったのが、また体重が落ちている。夏紀は律の体重を増やそうと、夕飯の献立に夢中になっている。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
深淵に囚われて
朝顔
BL
両親が死んだ。
一本の電話を受けて、春樹は十年ぶりに故郷に帰ることになった。
故郷は春樹にとって嫌な思い出と後悔だけが残る場所だった。
どうしても帰りたくなかったのには理由がある。そして一番大きな後悔は、大切な人を置いて逃げてしまったことだった。
義弟との十年ぶりの再会で思わぬ方向に針は動き出す。歪んだ愛はどこへ向かうのか……。
義兄を愛する弟×義弟を守りたいと思う兄
兄(受け)視点9話+弟(攻め)視点1話
完結済み。
他サイトでも同時投稿しています。
ずっと、ずっと甘い口唇
犬飼春野
BL
「別れましょう、わたしたち」
中堅として活躍し始めた片桐啓介は、絵にかいたような九州男児。
彼は結婚を目前に控えていた。
しかし、婚約者の口から出てきたのはなんと婚約破棄。
その後、同僚たちに酒の肴にされヤケ酒の果てに目覚めたのは、後輩の中村の部屋だった。
どうみても事後。
パニックに陥った片桐と、いたって冷静な中村。
周囲を巻き込んだ恋愛争奪戦が始まる。
『恋の呪文』で脇役だった、片桐啓介と新人の中村春彦の恋。
同じくわき役だった定番メンバーに加え新規も参入し、男女入り交じりの大混戦。
コメディでもあり、シリアスもあり、楽しんでいただけたら幸いです。
題名に※マークを入れている話はR指定な描写がありますのでご注意ください。
※ 2021/10/7- 完結済みをいったん取り下げて連載中に戻します。
2021/10/10 全て上げ終えたため完結へ変更。
『恋の呪文』と『ずっと、ずっと甘い口唇』に関係するスピンオフやSSが多くあったため
一気に上げました。
なるべく時間軸に沿った順番で掲載しています。
(『女王様と俺』は別枠)
『恋の呪文』の主人公・江口×池山の番外編も、登場人物と時間軸の関係上こちらに載せます。
ネームレスセックス
よもやま
BL
ゲイの河本大芽は今日の相手とラブホに入ろうとしていたところを安達廉太郎に止められる。
大芽のことをパパ活男子の高校生(成人済み童顔アラサー)と勘違いした廉太郎をからかうためにラブホへ引きずり込んだはいいものの、この男どうやらドMの童貞のようで!?
※本番未満のエロ多め
※着衣プレイが性癖なのでこの後も着衣エロが続きます
※最終的には本番までする予定です
九年セフレ
三雲久遠
BL
在宅でウェブデザインの仕事をしているゲイの緒方は、大学のサークル仲間だった新堂と、もう九年セフレの関係を続けていた。
元々ノンケの新堂。男同士で、いつかは必ず終わりがくる。
分かっているから、別れの言葉は言わないでほしい。
また来ると、その一言を最後にしてくれたらいい。
そしてついに、新堂が結婚すると言い出す。
(ムーンライトノベルズにて完結済み。
こちらで再掲載に当たり改稿しております。
13話から途中の展開を変えています。)
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
とろけてなくなる
瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。
連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。
雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。
無骨なヤクザ×ドライな少年。
歳の差。
一年前の忘れ物
花房ジュリー
BL
ゲイであることを隠している大学生の玲。今は、バイト先の男性上司と密かに交際中だ。ある時、アメリカ人のアレンとひょんなきっかけで出会い、なぜか料理交換を始めるようになる。いつも自分に自信を持たせてくれるアレンに、次第に惹かれていく玲。そんな折、恋人はいるのかとアレンに聞かれる。ゲイだと知られまいと、ノーと答えたところ、いきなりアレンにキスをされ!?
※kindle化したものの再公開です(kindle販売は終了しています)。内容は、以前こちらに掲載していたものと変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる