39 / 54
闇に咲く華
しおりを挟む
竹塚がアルバムを受け取ると、ベッドの上に広げる。そこには直子の子供の頃の写真が在る。直子と浩一は不審げに写真を見詰め、二人は双眸を見開いた。直子の子供の顔が、今の律の顔そのものだったからだ。
「な、何よこれ!? 他人のそら似よ!」
「DNA鑑定をすれば解ることだ」
「は? 翔、何云ってんのよ? 私の子供は病院で死んでんのよ?」
「ち、がうっ、違うんだ母さん」
再び浩一に視線が集中した。
「律は、俺の子供で…俺は母さんの産んだ律と、父さんの愛人の産んだ子供をすり替えたんだ!」
ギョッとして直子が浩一に掴みかかった。
「馬鹿な事云わないで!! あんたと私の子供な訳無いじゃない!」
「直ちゃんあなた、まさか」
竹塚の母親が、真っ青になった。
「本当の事だろ! あの時寝ていた俺に母さんが部屋に忍び込んで来て、俺をレイプしたんだっ、父さんが愛人作って家に帰らなくなった腹いせに!」
直子は真っ赤になって手を振り上げたが、警察のひとりが直子の腕を掴んだ。
「母さんの腹が大きくなる度に、俺は怖くなって行って…父さんの愛人の子供が同じ病院に運ばれて、帝王切開で産まれたのを知って…」
浩一は自分の掌を見詰めた。涙が溢れ出す。
「この手でその赤ん坊の口を押さえて殺したんだ。子供を急いですり替えて、事故死に見せ掛けて」
「…そんなっ」
床に直子が放心状態で座り込むと、警察官二人が浩一に向き直った。
「署までご同行願えますか」
浩一は観念したように頷くと、警察のひとりが浩一の乗った車椅子を押して病室を後にした。後日、浩一の証言で、和也の愛人を殺害。(当時母親の直子と二人で殺害したと自供)別荘の裏に在った古井戸に、和也の愛人の遺体が在ると話し、土を掘り起こして見付かったのは、泥まみれのワンピースを着た白骨遺体だった。
和也は直子の『別荘が古いから建て替えたい』と懇願され、その序でに『危険だから』と設計士に話して井戸を取り壊させたのだ。
オペ室のランプが消え、運び出された律に竹塚親子が駆け寄った。頭髪は全て剃られていて、包帯に巻かれた姿に竹塚と夏紀は息を呑んだ。
「先生律君は!?」
夏紀が医師に問う。医師は難しい顔で竹塚親子を見た。
「手術は一応は成功しましたが、もしかしたら後遺症が残るかも知れません。脳に溜まった血を抜くのが、早かったのでそれだけは幸運ですが」
「……」
ボロボロと泣き崩れる夏紀を支えながら、竹塚は長椅子に座らせてICUに運ばれた律を、ガラス越しに見詰めていた。
翌日はメディアに『堀井総合病院、院長の虐待で次男重体』『家庭内謎の確執』等とテレビや新聞の紙面に大きく書かれていた。
それから律は昏睡状態のまま、二週間が過ぎた。
武井が担任教師の滝本と、個室のドアをノックすると先に平川が来ていた。
「なんだお前来てたのか」
ベッドの周りには花や千羽鶴、寄せ書きが置かれ、平川が必死に律へ話し掛けていた。
「おい今の聞いたか? 来たは酷いよなぁ? 律。俺は律に今日学校で何があったか話していたんだよ。それにもう今は十月で、文化祭は月末だってのも。なんせ『親友』なんだからな、俺達」
意識の戻らない律を、毎日訪れては学校の話しをしている。ICUから出たのが手術から三日後。人工呼吸器を昨日外された。医者からは意識が戻っても、通常の生活に戻れるかは解らないと云う。
「な、何よこれ!? 他人のそら似よ!」
「DNA鑑定をすれば解ることだ」
「は? 翔、何云ってんのよ? 私の子供は病院で死んでんのよ?」
「ち、がうっ、違うんだ母さん」
再び浩一に視線が集中した。
「律は、俺の子供で…俺は母さんの産んだ律と、父さんの愛人の産んだ子供をすり替えたんだ!」
ギョッとして直子が浩一に掴みかかった。
「馬鹿な事云わないで!! あんたと私の子供な訳無いじゃない!」
「直ちゃんあなた、まさか」
竹塚の母親が、真っ青になった。
「本当の事だろ! あの時寝ていた俺に母さんが部屋に忍び込んで来て、俺をレイプしたんだっ、父さんが愛人作って家に帰らなくなった腹いせに!」
直子は真っ赤になって手を振り上げたが、警察のひとりが直子の腕を掴んだ。
「母さんの腹が大きくなる度に、俺は怖くなって行って…父さんの愛人の子供が同じ病院に運ばれて、帝王切開で産まれたのを知って…」
浩一は自分の掌を見詰めた。涙が溢れ出す。
「この手でその赤ん坊の口を押さえて殺したんだ。子供を急いですり替えて、事故死に見せ掛けて」
「…そんなっ」
床に直子が放心状態で座り込むと、警察官二人が浩一に向き直った。
「署までご同行願えますか」
浩一は観念したように頷くと、警察のひとりが浩一の乗った車椅子を押して病室を後にした。後日、浩一の証言で、和也の愛人を殺害。(当時母親の直子と二人で殺害したと自供)別荘の裏に在った古井戸に、和也の愛人の遺体が在ると話し、土を掘り起こして見付かったのは、泥まみれのワンピースを着た白骨遺体だった。
和也は直子の『別荘が古いから建て替えたい』と懇願され、その序でに『危険だから』と設計士に話して井戸を取り壊させたのだ。
オペ室のランプが消え、運び出された律に竹塚親子が駆け寄った。頭髪は全て剃られていて、包帯に巻かれた姿に竹塚と夏紀は息を呑んだ。
「先生律君は!?」
夏紀が医師に問う。医師は難しい顔で竹塚親子を見た。
「手術は一応は成功しましたが、もしかしたら後遺症が残るかも知れません。脳に溜まった血を抜くのが、早かったのでそれだけは幸運ですが」
「……」
ボロボロと泣き崩れる夏紀を支えながら、竹塚は長椅子に座らせてICUに運ばれた律を、ガラス越しに見詰めていた。
翌日はメディアに『堀井総合病院、院長の虐待で次男重体』『家庭内謎の確執』等とテレビや新聞の紙面に大きく書かれていた。
それから律は昏睡状態のまま、二週間が過ぎた。
武井が担任教師の滝本と、個室のドアをノックすると先に平川が来ていた。
「なんだお前来てたのか」
ベッドの周りには花や千羽鶴、寄せ書きが置かれ、平川が必死に律へ話し掛けていた。
「おい今の聞いたか? 来たは酷いよなぁ? 律。俺は律に今日学校で何があったか話していたんだよ。それにもう今は十月で、文化祭は月末だってのも。なんせ『親友』なんだからな、俺達」
意識の戻らない律を、毎日訪れては学校の話しをしている。ICUから出たのが手術から三日後。人工呼吸器を昨日外された。医者からは意識が戻っても、通常の生活に戻れるかは解らないと云う。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる