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闇に咲く華
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「おはよう律」
「おはよう先生」
頬を紅くしながら、キッチンステンレスの上に置かれた二人分の朝食に、竹塚が双眸を見開く。焦げたパンにぐちゃぐちゃのスクランブルエッグ。頑張って作ったであろう、ポテトサラダ。
「しょうがないだろう? 料理なんか初めてだし、不味かったら捨てるし」
「馬鹿を云うな。食べ物を粗末に出来るか。それに、律が俺の為に作ってくれたんだろう?」
「う、うん…」
全身真っ赤になってコクコクと頷く律の頬にキスをすると、二人分の料理の載った皿を竹塚は手にもって、ダイニングテーブルへ運んだ。律は冷蔵庫からミネラルウォーターと、フォークとナイフを手にダイニングテーブルへ持って行く。
「「いただきます」」
二人は向かい合って手を合わせると、律の作った朝食を口にした。律がジッと見詰めている。
「…形はどうあれ味は美味い」
「本当?」
竹塚が微笑んで「あぁ。美味い」と返答し、律は嬉しくて自分の分をパクリと口に運んだ。我ながら美味い味だと自画自賛して、律はふわふわとした時間を過ごした。
深夜に降った雨は翌日にはからりと止んで、木々の隙間に作られていた蜘蛛の糸に、絡み付いた雨水が太陽の光でキラキラと輝いている。
律は昨日竹塚が云っていた、井戸が在った筈だと話していた場所を二階の小窓から見下ろしていた。そこは更地になっていて、井戸が存在していたなんて思えない程に何も無い。在るのは側に大きな木が在るだけだ。
「律?」
呼ばれて振り返ると、レオンを連れた竹塚が部屋の扉を開けて立っている。
「少し車で遠出でもするか?」
「何処行くの?」
「目的地は決めていない」
明日は家に帰る日だ。この優しい時間は終わりを告げる。竹塚は車のエンジンを掛けに先に行くと云うと、レオンが律に駆け寄って脚に顔を擦り寄せた。
「何処へドライブするんだろうね」
律の手が、レオンの頭を撫でた。
山梨の山中湖村から車で沼津市までやって来た。
「富士山綺麗だね!」
道の駅の駐車場で車から降りた律は、思いっきり背伸びをして、後部座席で眠るレオを眺めた。
「少し寝かせておこう。後で散歩に出せば良い」
「うん」
『道の駅くるら戸田』の産地野菜を見に二人は店内に向かう。
「デコポンだ」
袋詰めされた柑橘系を眺めていると、竹塚がそれを手に取る。
「おはよう先生」
頬を紅くしながら、キッチンステンレスの上に置かれた二人分の朝食に、竹塚が双眸を見開く。焦げたパンにぐちゃぐちゃのスクランブルエッグ。頑張って作ったであろう、ポテトサラダ。
「しょうがないだろう? 料理なんか初めてだし、不味かったら捨てるし」
「馬鹿を云うな。食べ物を粗末に出来るか。それに、律が俺の為に作ってくれたんだろう?」
「う、うん…」
全身真っ赤になってコクコクと頷く律の頬にキスをすると、二人分の料理の載った皿を竹塚は手にもって、ダイニングテーブルへ運んだ。律は冷蔵庫からミネラルウォーターと、フォークとナイフを手にダイニングテーブルへ持って行く。
「「いただきます」」
二人は向かい合って手を合わせると、律の作った朝食を口にした。律がジッと見詰めている。
「…形はどうあれ味は美味い」
「本当?」
竹塚が微笑んで「あぁ。美味い」と返答し、律は嬉しくて自分の分をパクリと口に運んだ。我ながら美味い味だと自画自賛して、律はふわふわとした時間を過ごした。
深夜に降った雨は翌日にはからりと止んで、木々の隙間に作られていた蜘蛛の糸に、絡み付いた雨水が太陽の光でキラキラと輝いている。
律は昨日竹塚が云っていた、井戸が在った筈だと話していた場所を二階の小窓から見下ろしていた。そこは更地になっていて、井戸が存在していたなんて思えない程に何も無い。在るのは側に大きな木が在るだけだ。
「律?」
呼ばれて振り返ると、レオンを連れた竹塚が部屋の扉を開けて立っている。
「少し車で遠出でもするか?」
「何処行くの?」
「目的地は決めていない」
明日は家に帰る日だ。この優しい時間は終わりを告げる。竹塚は車のエンジンを掛けに先に行くと云うと、レオンが律に駆け寄って脚に顔を擦り寄せた。
「何処へドライブするんだろうね」
律の手が、レオンの頭を撫でた。
山梨の山中湖村から車で沼津市までやって来た。
「富士山綺麗だね!」
道の駅の駐車場で車から降りた律は、思いっきり背伸びをして、後部座席で眠るレオを眺めた。
「少し寝かせておこう。後で散歩に出せば良い」
「うん」
『道の駅くるら戸田』の産地野菜を見に二人は店内に向かう。
「デコポンだ」
袋詰めされた柑橘系を眺めていると、竹塚がそれを手に取る。
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