17 / 54
闇に咲く華
しおりを挟む
「なんだ律、進路希望の紙なんも書いてないじゃん」
背後から平川が紙を覗き込んできた。
「お前んとこ医者決定だって? 他に遣りたいこと無いのか?」
律の前の席の椅子を引くと、腰を下ろして向かい合った。
「そういうお前はあんのかよ?」
「俺? 一応大学は出ろって親から云われるからな~、もう腐れ縁って事で同じ大学にしようぜ? あ、俺でも受かる所な? もう今回の出しちまったら次の調査票に、お前と同じ所書くから宜しく」
「お前な…」
「ま、大学なんて適当に書けば良いんだよ」
ーーーそうもいかないんだよな、こっちは。
下手に書くと、養夫婦に何を言われるか知れたものでは無い。そうなると志望大学は決められてくる。T大と書くと教室を後にした。
竹塚は律の持ってきた進路希望書を見詰めて、傍らに立つ律を見上げた。竹塚は椅子を律に向けて思案する。数学準備室は今二人だけだ。律とすれ違いで、三年担当の教師が出て行ったのだ。律は居心地の悪さにソワソワとしていた。
「律、本当に此処で良いのか?」
「え?」
親が医者なら、当然医大に進むと思うだろうに、この男の意外そうな言葉に律はムッとした。要するに律の家庭事情を考えて、本心はどうなんだと云いたいんだろう。
ーーーだって仕方ないじゃないか。
「お前の事情は解る。だが、他に遣りたいことがあるんじゃないのか?」
「…じゃあ、それ書いたらなれるのかよ?」
「何?」
「本当は医者なんかになりたくない、血だって見たらゾッとするのに、でもあいつそんなの慣れだって云うし、ババアは跡なんて継がせないって云うし、どうしろって云うんだよ?」
「律泣くな」
「泣いてなっ…!?」
不意に竹塚が椅子から立ち上がり、律を抱き締めた。竹塚が律の目元を指で拭うと、指に濡れた涙の粒が律の視界に入る。律は竹塚を見上げた。
身体がドクンと熱くなる。
ーーーなんで…。
「俺が悪かった、泣かせるつもりはなかったんだが」
「~~~っ」
律は真っ赤になって暴れた。その刹那、暴れた拍子に卓上にあった書類が足許に散らばる。
腕が当たったらしい。
「わ、ごめっ」
慌ててしゃがむと手にした紙に見覚えがあることに気付いた。おかげで涙が引っ込んだ。
「……これ、先週集めたテスト用紙?」
「あぁ、時間がなくてまだ採点してない」
「「……」」
「今すげえサラッと云ったな? こっちは夏前だぞ? なんで? 滝本先生も答案用紙溜めてたって事?」
「まぁ、そうなるな」
歯切れの悪い返事に律はムッとした。
「時間がなかったって? 僕と会ってた日は? 時間あったと思うけど?」
「うっ」と唸ってあさっての方向へ向く。
背後から平川が紙を覗き込んできた。
「お前んとこ医者決定だって? 他に遣りたいこと無いのか?」
律の前の席の椅子を引くと、腰を下ろして向かい合った。
「そういうお前はあんのかよ?」
「俺? 一応大学は出ろって親から云われるからな~、もう腐れ縁って事で同じ大学にしようぜ? あ、俺でも受かる所な? もう今回の出しちまったら次の調査票に、お前と同じ所書くから宜しく」
「お前な…」
「ま、大学なんて適当に書けば良いんだよ」
ーーーそうもいかないんだよな、こっちは。
下手に書くと、養夫婦に何を言われるか知れたものでは無い。そうなると志望大学は決められてくる。T大と書くと教室を後にした。
竹塚は律の持ってきた進路希望書を見詰めて、傍らに立つ律を見上げた。竹塚は椅子を律に向けて思案する。数学準備室は今二人だけだ。律とすれ違いで、三年担当の教師が出て行ったのだ。律は居心地の悪さにソワソワとしていた。
「律、本当に此処で良いのか?」
「え?」
親が医者なら、当然医大に進むと思うだろうに、この男の意外そうな言葉に律はムッとした。要するに律の家庭事情を考えて、本心はどうなんだと云いたいんだろう。
ーーーだって仕方ないじゃないか。
「お前の事情は解る。だが、他に遣りたいことがあるんじゃないのか?」
「…じゃあ、それ書いたらなれるのかよ?」
「何?」
「本当は医者なんかになりたくない、血だって見たらゾッとするのに、でもあいつそんなの慣れだって云うし、ババアは跡なんて継がせないって云うし、どうしろって云うんだよ?」
「律泣くな」
「泣いてなっ…!?」
不意に竹塚が椅子から立ち上がり、律を抱き締めた。竹塚が律の目元を指で拭うと、指に濡れた涙の粒が律の視界に入る。律は竹塚を見上げた。
身体がドクンと熱くなる。
ーーーなんで…。
「俺が悪かった、泣かせるつもりはなかったんだが」
「~~~っ」
律は真っ赤になって暴れた。その刹那、暴れた拍子に卓上にあった書類が足許に散らばる。
腕が当たったらしい。
「わ、ごめっ」
慌ててしゃがむと手にした紙に見覚えがあることに気付いた。おかげで涙が引っ込んだ。
「……これ、先週集めたテスト用紙?」
「あぁ、時間がなくてまだ採点してない」
「「……」」
「今すげえサラッと云ったな? こっちは夏前だぞ? なんで? 滝本先生も答案用紙溜めてたって事?」
「まぁ、そうなるな」
歯切れの悪い返事に律はムッとした。
「時間がなかったって? 僕と会ってた日は? 時間あったと思うけど?」
「うっ」と唸ってあさっての方向へ向く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる