15 / 54
闇に咲く華
しおりを挟む
竹塚が律を肩に担ぎ上げたのだ。清水はポカンと見詰める。
「え…うわっ!?」
清水と隣のベッドに居た細木が驚愕した。律はいつもとは違う、高い視線の位置に慄いた。
昼食の時間まで不貞腐れていた律は、いつまでもニヤついている、平川の脚を机の下で蹴った。
「いつまで笑ってんだよ?」
「いや~。あの新任教師、律を担いで教室に現れた時は、女子達のあの黄色い悲鳴凄かったな~」
その後女子達が律に謝ったので、怒りは取り敢えず収まったのだが。
「…面白くない」
律は購買で買った焼きそばパンを齧る。
「そういえばさ、あの後細木の奴教室に戻らなかったな」
保健室で寝ていた筈の細木は、清水に帰ると云って、帰ってしまったらしい。竹塚は竹塚で、女性陣の熱い視線にこれまた何処吹く風と、全く気に止めずに教壇に立っていた。
「…いつからだ?」
律の問いに平川が首を傾げる。が、直ぐに細川の事だと気付いた。
「う~ん。細川ってさ。小さい時からモデルやってるらしくてさ。僻みじゃねえかな?」
「そんなくだらねえ事で? 女って解らねぇ」
「俺は男で良かった。こえぇな」
二人は溜め息を零したのだった。
律は浩一の病室に入ると、背後から堀井和也が律を呼んだ。
「看護師から、お前が来ていると聞いてな」
「……別に。暇だし」
律の手には花を活ける為の、花瓶が抱えられている。和也は目を細める。
「綺麗な花だな」
「…そう?」
律は花を活けた花瓶をサイドテーブルに置くと、和也は眼を細めて口を開いた。
「最近は家ではどうだ? 今直子は妊娠中だから、色々と気を使うだろうが、何かあっても悪気があって、お前に八つ当たりしてるんじゃない。その時は解ってやってくれないか」
ーーー八つ当たりなんて、生易しい物じゃない。
『浩一さんがあんな事になるなんて、お前は疫病神よ!』
『あの女の子供にお母さんなんて呼ばれたくないわ』
『こんな問題も解けないなんて、家庭教師の先生に云われて、私がどんなに恥ずかしかったかっ』
『ごめんなさい、ごめんなさいっ僕いっぱいお勉強するから』
嫌わないで。
どうしてみんな僕が嫌いなの?
僕が何をしたの?
『浩一さんが後継になるのよ、あなたじゃないわ!』
この男は、妻の云い放つ言葉がどれだけ律の心を殺すかなど、考えもしないだろう。愚かで哀れな父親だ。
「…もう帰ります」
「あぁ。そうだな。律、大学は私の出身校に進みなさい。そろそろ進路相談があるだろう? 直子に頼んでおくから」
「え…うわっ!?」
清水と隣のベッドに居た細木が驚愕した。律はいつもとは違う、高い視線の位置に慄いた。
昼食の時間まで不貞腐れていた律は、いつまでもニヤついている、平川の脚を机の下で蹴った。
「いつまで笑ってんだよ?」
「いや~。あの新任教師、律を担いで教室に現れた時は、女子達のあの黄色い悲鳴凄かったな~」
その後女子達が律に謝ったので、怒りは取り敢えず収まったのだが。
「…面白くない」
律は購買で買った焼きそばパンを齧る。
「そういえばさ、あの後細木の奴教室に戻らなかったな」
保健室で寝ていた筈の細木は、清水に帰ると云って、帰ってしまったらしい。竹塚は竹塚で、女性陣の熱い視線にこれまた何処吹く風と、全く気に止めずに教壇に立っていた。
「…いつからだ?」
律の問いに平川が首を傾げる。が、直ぐに細川の事だと気付いた。
「う~ん。細川ってさ。小さい時からモデルやってるらしくてさ。僻みじゃねえかな?」
「そんなくだらねえ事で? 女って解らねぇ」
「俺は男で良かった。こえぇな」
二人は溜め息を零したのだった。
律は浩一の病室に入ると、背後から堀井和也が律を呼んだ。
「看護師から、お前が来ていると聞いてな」
「……別に。暇だし」
律の手には花を活ける為の、花瓶が抱えられている。和也は目を細める。
「綺麗な花だな」
「…そう?」
律は花を活けた花瓶をサイドテーブルに置くと、和也は眼を細めて口を開いた。
「最近は家ではどうだ? 今直子は妊娠中だから、色々と気を使うだろうが、何かあっても悪気があって、お前に八つ当たりしてるんじゃない。その時は解ってやってくれないか」
ーーー八つ当たりなんて、生易しい物じゃない。
『浩一さんがあんな事になるなんて、お前は疫病神よ!』
『あの女の子供にお母さんなんて呼ばれたくないわ』
『こんな問題も解けないなんて、家庭教師の先生に云われて、私がどんなに恥ずかしかったかっ』
『ごめんなさい、ごめんなさいっ僕いっぱいお勉強するから』
嫌わないで。
どうしてみんな僕が嫌いなの?
僕が何をしたの?
『浩一さんが後継になるのよ、あなたじゃないわ!』
この男は、妻の云い放つ言葉がどれだけ律の心を殺すかなど、考えもしないだろう。愚かで哀れな父親だ。
「…もう帰ります」
「あぁ。そうだな。律、大学は私の出身校に進みなさい。そろそろ進路相談があるだろう? 直子に頼んでおくから」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
電車の男
月世
BL
──毎朝、同じ電車に乗るその人を、眺めるのが好きだった。
童貞高校生×イケメン社会人のほのぼの物語。
事件は起きません。ただの日常です。
主人公二人の視点で交代しながら描いていきます。
家族や会社の人間など、脇役がわさわさしています。中には腐女子も登場しますので、苦手な方は回避願います。
また、本編→番外編→同棲編→同棲編番外と続いていきますが、あとのほうでリバ色が強くなります。リバに抵抗のある方は読まないことをオススメします。
※この作品は他投稿サイトで公開済みです
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
迷宮
百瀬圭井子
BL
近未来の日本。28歳の会社員・関は5年ぶりに高3の葎と再会する。最初の出会いは8年前。関への恋心を募らせる、子ども時代の葎の前から突如姿を消した彼にはどうしても明かせない秘密があり…。年下男の子の犯罪スレスレ&暴走気味の恋と年上男性の謎めいた心情を描いた中短編。「近未来」の名を借りたある意味かなりファンタジー。直接描写はありません。好き嫌いがあると思われますので、タグをご確認くださいませ。
平成時代の同人誌を大幅リメイク。「エブリスタ」「ムーンライトノベルズ」掲載作品。
世話焼きDomはSubを溺愛する
ルア
BL
世話を焼くの好きでDomらしくないといわれる結城はある日大学の廊下で倒れそうになっている男性を見つける。彼は三澄と言い、彼を助けるためにいきなりコマンドを出すことになった。結城はプレイ中の三澄を見て今までに抱いたことのない感情を抱く。プレイの相性がよくパートナーになった二人は徐々に距離を縮めていく。結城は三澄の世話をするごとに楽しくなり謎の感情も膨らんでいき…。最終的に結城が三澄のことを溺愛するようになります。基本的に攻め目線で進みます※Dom/Subユニバースに対して独自解釈を含みます。ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる