7 / 54
闇に咲く華
しおりを挟む
「どうしたんだ? こんな所で?」
人懐こい平川は、律に駆け寄りふと、香った香水に眉を上げた。
「なんだデートだったのか?」
肘で律を突く。律は眉間に皺を寄せながらクンっと、右腕を上げて匂いを嗅いだ。甘ったるい匂いは里沙を思い出す。早く洗い流したい。
「…デートじゃない」
「え?」
「デートじゃないってば」
ムッとした律が歩き出し、平川は背後に居た塾生達に「またな」と手を振って、律の後を追う。
「なあ? どうしたんだよ? あ、なんかさあ、腹空かね? ファミレス行かないか?」
その時、律の腹がく~っと鳴った。平川が笑う。律は真っ赤になって平川を睨んだ。
「ご注文は以上で宜しいですか?」
ウエイトレスが、注文を受けて離れていくと、平川はおかわり自由のドリンクを取りに行く。律はスマホの画面を眺めて電源を切った。
「お前あんな所で何やってたんだ?」
「…ラブホ行ってた」
「………マジ? カラオケ抜け出して? 入って三十分位だったし」
身を乗り出した平川が、双眸を見開いて律を凝視する。
「まさか同じクラスの…」
「バカ違う」
平川が律の否定にホッとする。
「OL二人にナンパされてそのまま」
「おまっ、えぇぇぇぇっ!!!」
「うるさい」
ラストオーダーを受ける客達が振り返る。
「お待たせ致しました、シーフードサラダと取り分け様の小皿です」
ウエイトレスはにっこりと微笑して、カウベルの鳴った入口へ行く。
「可愛い顔してスゲエな」
「可愛いって云うな」
「…なんだよお前ら」
ウエイトレスに案内されて、空いている席に着こうとし竹塚は二人に気付いた。
「あ、先生! 俺塾帰り~」
「なら早く帰れ」
竹塚はちらりと律を見る。
「え~、俺達育ち盛り食い盛り~」
「お前はまだ成長する気か? 平川」
律は向かい側に座る竹塚を一別する。
「先生こそどうしたんだ?」
平川がずびずびとコーラを飲む。律は注文したリゾットが届いたので、スプーンで食べ始めた。平川は律の隣に座った。
「あ? 俺は歓迎会の帰り。で、り…堀井はどうした。家族が心配するんじゃないのか」
律は口に運びかけたリゾットを皿に戻す。
「『先生』には関係ない」
「…えっと…」
睨み合う律と竹塚を前に、平川は顔をひきつらせる。
「ま。俺には『関係』無い事だったな」
竹塚の言葉に、ズキンと律の胸が痛む。その痛みが何処から来るのか、律は解らなかった。それから一時間程で、三人はファミレスを出た。ムアッとした夜気に不快を感じながら、律は左へ歩く。
人懐こい平川は、律に駆け寄りふと、香った香水に眉を上げた。
「なんだデートだったのか?」
肘で律を突く。律は眉間に皺を寄せながらクンっと、右腕を上げて匂いを嗅いだ。甘ったるい匂いは里沙を思い出す。早く洗い流したい。
「…デートじゃない」
「え?」
「デートじゃないってば」
ムッとした律が歩き出し、平川は背後に居た塾生達に「またな」と手を振って、律の後を追う。
「なあ? どうしたんだよ? あ、なんかさあ、腹空かね? ファミレス行かないか?」
その時、律の腹がく~っと鳴った。平川が笑う。律は真っ赤になって平川を睨んだ。
「ご注文は以上で宜しいですか?」
ウエイトレスが、注文を受けて離れていくと、平川はおかわり自由のドリンクを取りに行く。律はスマホの画面を眺めて電源を切った。
「お前あんな所で何やってたんだ?」
「…ラブホ行ってた」
「………マジ? カラオケ抜け出して? 入って三十分位だったし」
身を乗り出した平川が、双眸を見開いて律を凝視する。
「まさか同じクラスの…」
「バカ違う」
平川が律の否定にホッとする。
「OL二人にナンパされてそのまま」
「おまっ、えぇぇぇぇっ!!!」
「うるさい」
ラストオーダーを受ける客達が振り返る。
「お待たせ致しました、シーフードサラダと取り分け様の小皿です」
ウエイトレスはにっこりと微笑して、カウベルの鳴った入口へ行く。
「可愛い顔してスゲエな」
「可愛いって云うな」
「…なんだよお前ら」
ウエイトレスに案内されて、空いている席に着こうとし竹塚は二人に気付いた。
「あ、先生! 俺塾帰り~」
「なら早く帰れ」
竹塚はちらりと律を見る。
「え~、俺達育ち盛り食い盛り~」
「お前はまだ成長する気か? 平川」
律は向かい側に座る竹塚を一別する。
「先生こそどうしたんだ?」
平川がずびずびとコーラを飲む。律は注文したリゾットが届いたので、スプーンで食べ始めた。平川は律の隣に座った。
「あ? 俺は歓迎会の帰り。で、り…堀井はどうした。家族が心配するんじゃないのか」
律は口に運びかけたリゾットを皿に戻す。
「『先生』には関係ない」
「…えっと…」
睨み合う律と竹塚を前に、平川は顔をひきつらせる。
「ま。俺には『関係』無い事だったな」
竹塚の言葉に、ズキンと律の胸が痛む。その痛みが何処から来るのか、律は解らなかった。それから一時間程で、三人はファミレスを出た。ムアッとした夜気に不快を感じながら、律は左へ歩く。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

愛憎の檻・義父の受難
でみず
BL
深夜1時過ぎ、静寂を破るように玄関の扉が開き、濡れそぼった姿の少年・瀬那が帰宅する。彼は義父である理仁に冷たく敵意を向け、反発を露わにする。新たな家族に馴染めない孤独や母の再婚への複雑な思いをぶつける瀬那に、理仁は静かに接しながらも強い意志で彼を抱きしめ、冷え切った心と体を温めようとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる