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秘書は蜜愛に濡れる
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バレンタインを前日に控えた日曜日、高平奈緒は実家の台所で、チョコレートを湯煎に掛けていた。
片手には料理本。
「奈緒さん、お砂糖は此方に置いておきますからね?」
長年家政婦として勤めてくれるトキが、ダイニングテーブルに砂糖の入った瓶を置いた。
「有り難うトキさん」
「毎年チョコレートを手作りなさるんですから、偉いですわよ。私は店で買って来てしまいますのに」
トキが感心しながら、奈緒の手元を眺める。
「おや? 今年も手作りかい?」
父、高平龍之介が欠伸をしながら台所へやって来る。
華奢な身体に優雅な仕草。小説家の彼は漸く仕事が一段落したのか、顔は疲労感を匂わせたが美丈夫と評される、紳士然とした姿は読者だけでなく近所でも人気が有る。
「父と会長の分は其方に在りますよ」
見れば、小さなラッピングされた箱が二つ。
「有り難う奈緒。毎年楽しみにしているんだよ。今年は私も何かやるかな? 聡がびっくりするようなサプライズとか」
聡とは、奈緒の恋人、細川大樹の父親で細川製薬会社会長だ。
何を隠そう、龍之介と聡は幼なじみで現在進行形の恋人同士だ。
「では今のそれは?」
奈緒の手元を見ながら、興味津々とばかりに訊く。そこへトキがクスクスと笑った。
「大樹さんのに決まってますでしょうにね~?」
奈緒が目許を染めて、片手に持った本をテーブルに置く。
「大樹はもうだいぶ前からチョコレートケーキなんです。女子社員達が毎年固形物のチョコレートをくれますからね。私にチョコレートケーキをせがむので」
云って奈緒は真っ赤になった。
「トキさんは洗濯物を取り入れないと、天気予報で夕立があると云ってました」
「ま、大変だわ」
トキが慌てて庭へ行く。
「それと」
凄まれて龍之介がビクッと震えた。
「編集部の方と仕事の打ち合わせで、出掛けるんじゃなかったんじゃ?」
直後、龍之介の真っ青になった。
「うわ~トキさん! 僕のワイシャツ、ネクタイ! クリーニングどうしたっけ!?」
慌てて庭に声を掛け、自室へ駆け込んで行く。奈緒は溜め息を零して、オーブンを温める為に動いた。
「高平さんはい」
廊下で奈緒は女子社員数名に取り囲まれ、有名デパートのロゴ入りチョコレートを手渡された。
「有り難う御座います」
微笑すると女子社員達がぽ~っと惚ける。
「……奈緒、ちょっと」
社長室から不機嫌そうに大樹が手招く。
「今行きます。皆さん、始業間近ですよ? 職場に戻りましょうね?」
にっこり微笑の奈緒に、女子社員数名達が、まるで幼稚園児よろしく『は~い』と返事をする。
「奈緒!」
大樹が呼ぶ。
妬きもちをやく大樹に胸をムズムズさせて、奈緒は社長室へ入って行った。
浴室からシャワーの音が聞こえる。奈緒はガウンを着た姿で、テーブルにチョコレートケーキをセッティングする。
脱衣所の開閉が聞こえ、頃合いを見て冷やして置いたシャンパンを用意した。
「今年のチョコレートケーキも美味そうだ」
玄関脇には、二人が貰ったチョコレートの戦利品が、山と置かれて在る。二人は並んでソファーに腰掛けると、唇を重ねて見詰め合う。
「ご馳走になろうか」
「大樹…」
目許を染めてソファーに寝そべる奈緒のガウンを開くと、白い肌に二つの小さな乳首が二つ現れた。大樹はチョコレートのクリームを人差し指で掬い、乳首のひとつに塗り付ける。
「あ、ん」
奈緒が吐息を零すと、大樹を奈緒を見詰めたまま、身を屈めた。
「ぁっ」
胸を迫り上げる姿はもっととせがむ。ソファーの背に方脚を載せ、もう方脚はラグの上を滑る。その間に大樹が座るので、あられもない姿はまるで妖艶なる女神だ。
「美味いな。奈緒は料理上手だ」
云いながら、また新たにチョコレートのクリームを指に掬い取り、震える下肢に塗り付ける。
奈緒は荒い息を吐き出して、脚許に居る大樹を見た。
「此処も美味そうだ」
刹那、奈緒は甘い声を上げて泣き、大樹の少し固めの髪を掻き抱く。
「だい…きっ」
愛しさが胸に広がり、奈緒は己の乾く唇を舐めた。
「…ふ……」
涙に霞む視界に、大樹の視線を捉えてキスを促した。紅い舌をチロリと見せれば、低く唸る大樹が背を伸ばす。大樹のキスは熱い。大樹の胸も手も熱い。
吐息すら愛しくて、奈緒は泣いた。
「も…う」
訴えれば、大樹は奈緒の方脚を己の肩に載せる。
「ひっ…」
熱い。
最奥に迫る全てが奈緒を追い上げる。
ソファーが大きく軋みを上げて、恋人達は今宵も愛を語り合う。
大樹の米髪から落ちる汗を胸に受け止めて、奈緒は甘くせつない愛を味わったのだった。
片手には料理本。
「奈緒さん、お砂糖は此方に置いておきますからね?」
長年家政婦として勤めてくれるトキが、ダイニングテーブルに砂糖の入った瓶を置いた。
「有り難うトキさん」
「毎年チョコレートを手作りなさるんですから、偉いですわよ。私は店で買って来てしまいますのに」
トキが感心しながら、奈緒の手元を眺める。
「おや? 今年も手作りかい?」
父、高平龍之介が欠伸をしながら台所へやって来る。
華奢な身体に優雅な仕草。小説家の彼は漸く仕事が一段落したのか、顔は疲労感を匂わせたが美丈夫と評される、紳士然とした姿は読者だけでなく近所でも人気が有る。
「父と会長の分は其方に在りますよ」
見れば、小さなラッピングされた箱が二つ。
「有り難う奈緒。毎年楽しみにしているんだよ。今年は私も何かやるかな? 聡がびっくりするようなサプライズとか」
聡とは、奈緒の恋人、細川大樹の父親で細川製薬会社会長だ。
何を隠そう、龍之介と聡は幼なじみで現在進行形の恋人同士だ。
「では今のそれは?」
奈緒の手元を見ながら、興味津々とばかりに訊く。そこへトキがクスクスと笑った。
「大樹さんのに決まってますでしょうにね~?」
奈緒が目許を染めて、片手に持った本をテーブルに置く。
「大樹はもうだいぶ前からチョコレートケーキなんです。女子社員達が毎年固形物のチョコレートをくれますからね。私にチョコレートケーキをせがむので」
云って奈緒は真っ赤になった。
「トキさんは洗濯物を取り入れないと、天気予報で夕立があると云ってました」
「ま、大変だわ」
トキが慌てて庭へ行く。
「それと」
凄まれて龍之介がビクッと震えた。
「編集部の方と仕事の打ち合わせで、出掛けるんじゃなかったんじゃ?」
直後、龍之介の真っ青になった。
「うわ~トキさん! 僕のワイシャツ、ネクタイ! クリーニングどうしたっけ!?」
慌てて庭に声を掛け、自室へ駆け込んで行く。奈緒は溜め息を零して、オーブンを温める為に動いた。
「高平さんはい」
廊下で奈緒は女子社員数名に取り囲まれ、有名デパートのロゴ入りチョコレートを手渡された。
「有り難う御座います」
微笑すると女子社員達がぽ~っと惚ける。
「……奈緒、ちょっと」
社長室から不機嫌そうに大樹が手招く。
「今行きます。皆さん、始業間近ですよ? 職場に戻りましょうね?」
にっこり微笑の奈緒に、女子社員数名達が、まるで幼稚園児よろしく『は~い』と返事をする。
「奈緒!」
大樹が呼ぶ。
妬きもちをやく大樹に胸をムズムズさせて、奈緒は社長室へ入って行った。
浴室からシャワーの音が聞こえる。奈緒はガウンを着た姿で、テーブルにチョコレートケーキをセッティングする。
脱衣所の開閉が聞こえ、頃合いを見て冷やして置いたシャンパンを用意した。
「今年のチョコレートケーキも美味そうだ」
玄関脇には、二人が貰ったチョコレートの戦利品が、山と置かれて在る。二人は並んでソファーに腰掛けると、唇を重ねて見詰め合う。
「ご馳走になろうか」
「大樹…」
目許を染めてソファーに寝そべる奈緒のガウンを開くと、白い肌に二つの小さな乳首が二つ現れた。大樹はチョコレートのクリームを人差し指で掬い、乳首のひとつに塗り付ける。
「あ、ん」
奈緒が吐息を零すと、大樹を奈緒を見詰めたまま、身を屈めた。
「ぁっ」
胸を迫り上げる姿はもっととせがむ。ソファーの背に方脚を載せ、もう方脚はラグの上を滑る。その間に大樹が座るので、あられもない姿はまるで妖艶なる女神だ。
「美味いな。奈緒は料理上手だ」
云いながら、また新たにチョコレートのクリームを指に掬い取り、震える下肢に塗り付ける。
奈緒は荒い息を吐き出して、脚許に居る大樹を見た。
「此処も美味そうだ」
刹那、奈緒は甘い声を上げて泣き、大樹の少し固めの髪を掻き抱く。
「だい…きっ」
愛しさが胸に広がり、奈緒は己の乾く唇を舐めた。
「…ふ……」
涙に霞む視界に、大樹の視線を捉えてキスを促した。紅い舌をチロリと見せれば、低く唸る大樹が背を伸ばす。大樹のキスは熱い。大樹の胸も手も熱い。
吐息すら愛しくて、奈緒は泣いた。
「も…う」
訴えれば、大樹は奈緒の方脚を己の肩に載せる。
「ひっ…」
熱い。
最奥に迫る全てが奈緒を追い上げる。
ソファーが大きく軋みを上げて、恋人達は今宵も愛を語り合う。
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