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天使は甘いキスが好き
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「まだ下書きだけどね」
鈴はデッサン用の鉛筆を手に、キャンパスに向かって絵に集中した。
「じゃあお疲れ様。また来週ね」
生徒達が帰宅の声を掛けて行く。部長の朝倉も帰り支度をしている。
「細川鍵掛けるから」
云われてもうそんな時間なのだと気付いた鈴は、了解とキャンパスに布を掛ける。二人は鞄を手に部室を出ると、朝倉は鍵を返しに職員室へ向かい、鈴は下駄箱へ向かった。
鈴は喉の調子がおかしいと手で擦る。朝から冷たい風が吹いていたから、気管支を冷やしたのかも知れない。喘息は暫らく落ち着いていたから、油断していた。鈴は階段を降りた所でしゃがみ、鞄の中を探る。
「え? あれ?」
吸入器が無い事に気付いて立ち上がる。毎朝確認をしてから家を出るから、確かに鞄に入れていた筈だ。
「何処かで落とした?」
生徒会室の机に在るかも知れない。教室を出る時も確認したし、美術部では鞄を開いてないから、生徒会室しか思い当たらない。鈴は急いで踵を返した。
「…なんで?」
鈴は机の中と床の周辺を見渡した。何処にも無い。諦めてこれから病院へ新しい物を出して貰うしかないだろう。腕時計は既に十八時を半分も過ぎた。外は既に暗い。
「病院閉まってるか」
落ち着いて帰って、何かに興奮しなければ発作は出ないだろう。鈴は溜息を吐いて立ち上がった。
「鈴」
びくりとして鈴はドアへ振り返る。上村が居た。
「びっくりした、なんだ君も忘れ物? カラオケに行かなかったのか?」
「鈴のだろうと思ってこれ」
差し出されたのは吸入器だった。鈴は驚いて受け取ると、ホッとして上村を見た。
「ありがとう、何処かに落としたみたいで、探してたんだけど。拾ってくれたんだな、助かったよ」
「それ、無いと困るだろう?」
「あぁ」
「この後用事あるか?」
上村は鈴の肩に手を置く。鈴は違和感に首を傾げた。
「無い…けど」
「良かった。あのさ、俺お前の事ずっと」
「鈴!」
二人はビクッとしてドアへ振り返った。平片が息を切らせながら入って来る。廊下を走って来た様だ。
「祐太?」
「迎えに来た。上村先輩、さようなら」
平片は鈴の手を握ると、早足になって生徒会室を出て行った。上村は奥歯を噛み締め、平片を睨んでいた。
「祐太?」
階段を降りた所で平片が溜息を吐く。
「昇降口で待っても出て来なくて、美術部の朝倉さんに会ったから訊いたけど、お前全然出て来ないから、発作でも起こしたのかと焦ったぞ」
「あ、うんごめん。吸入器を落としたみたいで探してた。でも上村が拾ってくれてたらしくて…祐太?」
平片は眉間に皺を寄せて、階段を見上げた。
「鈴、あいつには気を付けろよ?」
「え」
キョトンとした鈴を平片は胸に抱き寄せる。
「極力あいつと二人きりになるなよな」
鈴は平片を見上げた。
「んっ」
唇を塞がれ、平片の舌が鈴の小さな舌を絡める。鈴は鞄を足許に落とし、平片の首に腕を回した。顔の角度を変えながら互いの舌や口腔内の頬の裏側を愛撫し合う。名残惜しげに唇が離れると、鈴はホウッと甘い吐息を零して平片の胸に顔を押し付けた。
「家行っていいか?」
「うん」
照れ臭そうに鈴は返事をした。父母はイギリスへ仕事で自宅を留守にしている。家政婦は夕食を作って、温めるだけにして帰宅しているだろう。
鈴は熱くなった身体に気付かないようにして、平片と学校を後にした。
鈴はベッドの中で、熱い息を吐いた。平片が鈴の脚の付け根を甘噛みして舐めたのだ。
「すげぇとろとろ」
屹ち上がった陰茎からは透明な蜜が零れて、触って欲しいと震えている。鈴のいつも白い肌が今はピンク色になり、乳首が濡れて光っている。平片が舐めて可愛がったからだ。
鈴はデッサン用の鉛筆を手に、キャンパスに向かって絵に集中した。
「じゃあお疲れ様。また来週ね」
生徒達が帰宅の声を掛けて行く。部長の朝倉も帰り支度をしている。
「細川鍵掛けるから」
云われてもうそんな時間なのだと気付いた鈴は、了解とキャンパスに布を掛ける。二人は鞄を手に部室を出ると、朝倉は鍵を返しに職員室へ向かい、鈴は下駄箱へ向かった。
鈴は喉の調子がおかしいと手で擦る。朝から冷たい風が吹いていたから、気管支を冷やしたのかも知れない。喘息は暫らく落ち着いていたから、油断していた。鈴は階段を降りた所でしゃがみ、鞄の中を探る。
「え? あれ?」
吸入器が無い事に気付いて立ち上がる。毎朝確認をしてから家を出るから、確かに鞄に入れていた筈だ。
「何処かで落とした?」
生徒会室の机に在るかも知れない。教室を出る時も確認したし、美術部では鞄を開いてないから、生徒会室しか思い当たらない。鈴は急いで踵を返した。
「…なんで?」
鈴は机の中と床の周辺を見渡した。何処にも無い。諦めてこれから病院へ新しい物を出して貰うしかないだろう。腕時計は既に十八時を半分も過ぎた。外は既に暗い。
「病院閉まってるか」
落ち着いて帰って、何かに興奮しなければ発作は出ないだろう。鈴は溜息を吐いて立ち上がった。
「鈴」
びくりとして鈴はドアへ振り返る。上村が居た。
「びっくりした、なんだ君も忘れ物? カラオケに行かなかったのか?」
「鈴のだろうと思ってこれ」
差し出されたのは吸入器だった。鈴は驚いて受け取ると、ホッとして上村を見た。
「ありがとう、何処かに落としたみたいで、探してたんだけど。拾ってくれたんだな、助かったよ」
「それ、無いと困るだろう?」
「あぁ」
「この後用事あるか?」
上村は鈴の肩に手を置く。鈴は違和感に首を傾げた。
「無い…けど」
「良かった。あのさ、俺お前の事ずっと」
「鈴!」
二人はビクッとしてドアへ振り返った。平片が息を切らせながら入って来る。廊下を走って来た様だ。
「祐太?」
「迎えに来た。上村先輩、さようなら」
平片は鈴の手を握ると、早足になって生徒会室を出て行った。上村は奥歯を噛み締め、平片を睨んでいた。
「祐太?」
階段を降りた所で平片が溜息を吐く。
「昇降口で待っても出て来なくて、美術部の朝倉さんに会ったから訊いたけど、お前全然出て来ないから、発作でも起こしたのかと焦ったぞ」
「あ、うんごめん。吸入器を落としたみたいで探してた。でも上村が拾ってくれてたらしくて…祐太?」
平片は眉間に皺を寄せて、階段を見上げた。
「鈴、あいつには気を付けろよ?」
「え」
キョトンとした鈴を平片は胸に抱き寄せる。
「極力あいつと二人きりになるなよな」
鈴は平片を見上げた。
「んっ」
唇を塞がれ、平片の舌が鈴の小さな舌を絡める。鈴は鞄を足許に落とし、平片の首に腕を回した。顔の角度を変えながら互いの舌や口腔内の頬の裏側を愛撫し合う。名残惜しげに唇が離れると、鈴はホウッと甘い吐息を零して平片の胸に顔を押し付けた。
「家行っていいか?」
「うん」
照れ臭そうに鈴は返事をした。父母はイギリスへ仕事で自宅を留守にしている。家政婦は夕食を作って、温めるだけにして帰宅しているだろう。
鈴は熱くなった身体に気付かないようにして、平片と学校を後にした。
鈴はベッドの中で、熱い息を吐いた。平片が鈴の脚の付け根を甘噛みして舐めたのだ。
「すげぇとろとろ」
屹ち上がった陰茎からは透明な蜜が零れて、触って欲しいと震えている。鈴のいつも白い肌が今はピンク色になり、乳首が濡れて光っている。平片が舐めて可愛がったからだ。
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