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天使は甘いキスが好き
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【あら、裕太君どうしたの? 雪酷いわねえ。帰り気を付けてね?】
「……解りました」
平片が電話を切る。
「やべぇっ! 誰だよ恵連れてった奴っ!」
今度は鈴の携帯に鳴らした。
【はい? 裕太どうしたの? 今生徒会の会議の準備で】
「んな事してる場合じゃないよっ恵が、誰かに連れてかれたんだっ!」
【…なんだって?】
電話の向こうで椅子が倒れる音がする。
「俺、恵の父さんの携帯番号解らないんだ。十和子さんに訊けないし」
【解った。僕から伯父さんに電話する。迎えに行ったかも知れないし】
「で、でも、恵の荷持つ俺が預かってるし。保健室のベッドの上に恵の上着が置きっ放しなんだよっ可笑しくないか!? 恵には俺が迎えに行くって話してんだぞ? 第一、あのおじさんが黙って恵を連れて行くと思うか!? それに保健室の先生が『お兄さん』が迎えに来たからって云ってんだぞ!」
【……『お兄さん』? それは可笑しいな。とにかく裕太は恵の荷持つを持って、一度裕太の家に帰ってくれ。また十和子さんに連絡して、今夜は恵と泊まりで勉強会とでも云え。解ったな?】
「解った、で? 何処で落ち合う?」
【それは後から連絡する。まずは伯父さんに連絡だ】
「まさか…竜之介って奴じゃないだろうな?」
鈴はきつい眼でテーブルを睨む。
「どうした? 会議の準備が」
鈴は携帯を耳に当てながら、三年生の松井に顔を向ける。
「先輩、今日はすみません。病気の従兄弟が大変らしくて、僕これから行ってやりたいんですが」
「家庭事情なら仕方無い。気を付けてお帰りよ?」
「はい、有難う御座います」
鈴は頭を下げ、荷物を手に生徒会室を出て行く。鈴は携帯電話で平方へ折り返しコールする。
「裕太、これから伯父さんに連絡するから、改札口で待ってて」
【解った】
鈴は直ぐに携帯電話を切り、太一の携帯電話を鳴らす。
【どうした珍しいな鈴】
「暢気に構えてられませんよ? 今何処に居ますか」
訊かれて太一は西新井に来ていると答えた。
「其処なら近いですね…仕事は?」
【今日はマンション建設の打ち合わせで、さっき現場監督と別れて来た。この後社に戻るが】
「伯父さん、冷静になって聞いて下さい。今さっき裕太から連絡が来て、恵の『兄』だと名乗る男が、保健室で休んでいた恵を迎えに来て、連れて行ったそうです。保険医が云うには、恵は眠っていたらしいそうです」
【な…んだって?】
太一の背筋にヒヤリと嫌な汗が流れる。ズキリと米髪が痛んだ。
「これはまさしく誘拐です。裕太にはお祖母ちゃんに電話で、裕太の家で泊まりの勉強会だと伝えるように云ってあります。伯父さん、心当たりはありますか」
【南川さんには連絡してみるか】
「…迎えに来たのは彼ではないと思います」
電話の向こうで太一は苛立っている。 太一は、クリスマスの日に病院に居た、頬に湿布を貼った男を思い出したのだ。
「まさか」
【伯父さん?】
「南川さんに電話してみよう。念の為に携番を訊いている」
【解りました、ではこの間の喫茶店で落ち合いましょう!】
鈴の携帯電話が切れる。
「あの男か!?」
太一は怒りで顔が紅くなる。会社には急用で直帰に切り替えると連絡を入れた。
雪が降る。
恵の頭上に静かに。
『お母さん、雪が溶けちゃう!』
まだ小さな恵が、縁側で優しく見守るかおるを振り返る。 隣りで平方もお揃いの長靴を履いて、白い空を見上げた。
『そうね。これでは雪は積もらないわ』
『カマクラ造りたかったのに』
「……解りました」
平片が電話を切る。
「やべぇっ! 誰だよ恵連れてった奴っ!」
今度は鈴の携帯に鳴らした。
【はい? 裕太どうしたの? 今生徒会の会議の準備で】
「んな事してる場合じゃないよっ恵が、誰かに連れてかれたんだっ!」
【…なんだって?】
電話の向こうで椅子が倒れる音がする。
「俺、恵の父さんの携帯番号解らないんだ。十和子さんに訊けないし」
【解った。僕から伯父さんに電話する。迎えに行ったかも知れないし】
「で、でも、恵の荷持つ俺が預かってるし。保健室のベッドの上に恵の上着が置きっ放しなんだよっ可笑しくないか!? 恵には俺が迎えに行くって話してんだぞ? 第一、あのおじさんが黙って恵を連れて行くと思うか!? それに保健室の先生が『お兄さん』が迎えに来たからって云ってんだぞ!」
【……『お兄さん』? それは可笑しいな。とにかく裕太は恵の荷持つを持って、一度裕太の家に帰ってくれ。また十和子さんに連絡して、今夜は恵と泊まりで勉強会とでも云え。解ったな?】
「解った、で? 何処で落ち合う?」
【それは後から連絡する。まずは伯父さんに連絡だ】
「まさか…竜之介って奴じゃないだろうな?」
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「はい、有難う御座います」
鈴は頭を下げ、荷物を手に生徒会室を出て行く。鈴は携帯電話で平方へ折り返しコールする。
「裕太、これから伯父さんに連絡するから、改札口で待ってて」
【解った】
鈴は直ぐに携帯電話を切り、太一の携帯電話を鳴らす。
【どうした珍しいな鈴】
「暢気に構えてられませんよ? 今何処に居ますか」
訊かれて太一は西新井に来ていると答えた。
「其処なら近いですね…仕事は?」
【今日はマンション建設の打ち合わせで、さっき現場監督と別れて来た。この後社に戻るが】
「伯父さん、冷静になって聞いて下さい。今さっき裕太から連絡が来て、恵の『兄』だと名乗る男が、保健室で休んでいた恵を迎えに来て、連れて行ったそうです。保険医が云うには、恵は眠っていたらしいそうです」
【な…んだって?】
太一の背筋にヒヤリと嫌な汗が流れる。ズキリと米髪が痛んだ。
「これはまさしく誘拐です。裕太にはお祖母ちゃんに電話で、裕太の家で泊まりの勉強会だと伝えるように云ってあります。伯父さん、心当たりはありますか」
【南川さんには連絡してみるか】
「…迎えに来たのは彼ではないと思います」
電話の向こうで太一は苛立っている。 太一は、クリスマスの日に病院に居た、頬に湿布を貼った男を思い出したのだ。
「まさか」
【伯父さん?】
「南川さんに電話してみよう。念の為に携番を訊いている」
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『そうね。これでは雪は積もらないわ』
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