天使は甘いキスが好き

吉良龍美

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天使は甘いキスが好き

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「お酒って美味しいの?」
「まあね。少しだけ呑んでみるかい?」
 俊彦の言葉に、龍之介が遮る。
「細川家の大事な恵を預かってるんだ。余計な事をするな」
「その割りに未成年に手ぇ出してんじゃん」
 恵は頬を染めて、俊彦を睨む。
「…龍之介さんの悪口云う人俺嫌いっ」
 恵はプンとそっぽを向く。
「嫌われたな。ざまあ見ろ」
 龍之介は口角を上げてワインを口にする。
「あれま。まぁいいや。お前美加の時も同じ反応だったしな」
 恵の肩がピクンと震えた。
「俊彦」
「あれえ? まだ話してなかったんだ? 恵君俺こいつの元彼女の浮気相手だった男」
「俊彦っ!」
 龍之介はテーブルの上に置かれた、恵の手を握り締めた。
「恵、大丈夫だから。俺は恵の『恋人』だから」
「龍之介さん」
 恵はホッとして頷く。俊彦は面白くないのか、ワインを飲み干し継ぎ足した。

 俊彦は持ち込んだギターを、暖炉の前で弾いている。恵は龍之介と食器を洗い、片付けていた。
「俺、龍之介さんには悪いけど、あの人苦手」
「あいつと二人きりにならなければ、大丈夫だろう」
「? やっぱり危ない人なの?」
「まあね。普段は良い奴なんだが」
「ふうん。俺、龍之介さんの親戚の人に嫌われたくないから、我慢する。苦手だけど…」
 龍之介は俊彦の眼を盗んで、恵の唇にキスをした。恵は真っ赤になって、チラと俊彦を見れば背中を向けている。恵も龍之介にキスを返した。

 恵は窓の外を眺めて、雪の多さに驚く。恵はリビングの窓辺に置かれた、椅子に座っている。
「都会じゃ今はこんなに振らないから、驚いただろう?」
 恵の隣に在るもうひとつの椅子に腰を下ろし、龍之介が云う。暖炉の中の薪がパキンと音を立てて弾けた。
「明日雪が止んだら、雪ダルマ作る」
「風邪をひかない様にね?」
 龍之介が微笑むので、恵は頬を染めた。
「別に好きでやるんだからね? 玄関先から車が出易い様にしてあげるんだから」
「それはありがたい。さすが俺の恋人は優しいな」
 いまいちすっきりしない恵に龍之介が微笑み、膝へおいでと促す。
「あ、の…」
 俊彦は今入浴中だ。
「大丈夫。おいで」 
恵はモジモジしながら、椅子から立ち上がると龍之介の膝に、チョコンと腰を横向きに下ろす。これでハグが出来る。が、まるで親の膝に乗る子供の様だ。「恵」
「…何?」
「恵からキスして」
「っキス?」
 恵は頷く龍之介の顔を間近で見詰める。恵は内心、俊彦が来ませんようにと祈りながら、龍之介の唇にチュッと触れた。恵の震える頬を龍之介が両手で持ち上げ、深い口付けを交わす。恵の手が、龍之介の首に回り抱き寄せる。最初の頃、キスの仕方が解らずに、息を止めていたら、龍之介からキスの仕方を教わった。軽いキスから大人のキス。
「お熱い処申し訳ないが、客の俺が居るんだけどね?」
「っ!」
 俊彦はタオルで頭を拭き、二人をからかいながらキッチンに入り、冷蔵庫の中から飲料水を取り出す。恵は真っ赤になって、龍之介の胸にすっぽりと収まった。
 ーーーみ、見られたっ裸の次にキス!?
「……俊彦。好い加減にしないと此処から追い出すぞ」
「龍之介は薄情だな~雪の中凍死したらどうすんだよ? 崎山家の跡継ぎが居なくなる」
「知るか。明日には帰れよ?」
「もう少し良いじゃんか。ねぇ恵君?」
 恵は困って龍之介を見詰める。正直俊彦には帰って欲しいが、龍之介の親戚だ。正直出て行ってなんて云えない。
「恵に変な事をしないと約束するなら、な」
「おやおや過保護だね」
 俊彦は荷物を手に、二階へ上がった。
「客室使うから。ごゆっくりどうぞ?」
 恵は俊彦の顔を見れずに、龍之介の背に両手を回してしがみ付いた。
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