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天使は甘いキスが好き
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「そうだね………え?」
恵は太一の背中を見詰めたまま凍り付く。
ーーー今、とんでもない事を聞いた様な?
…様なではない。しっかり聞いた。しっかりしゃべった。
「えーっ!?」
「恵、なんですかいきなり大声で! 近所迷惑でしょう!?」
「ご、ごめんなさいっ!」
二本のミルクの入った哺乳瓶を手に、何も知らぬ十和子は恵を叱った。恵は自室に駆け込むと、慌てて龍之介に電話をする。太一の言葉を龍之介に話す為だ。恵は慌てた。が。
【あぁ。告別式の日にね。お母さんが亡くなった時に、俺が君の傍を離れなかったから、お父さん薄々気付いたみたいだ。そうか、今度一緒に酒か。それも良いな】
恵は脱力して、ベッドに腰を下ろす。
「あのねぇ…龍之介さん。俺恥ずかしかったんだよ? 女の子って皆そういう時は、緊張するのかなぁ」
【恵は俺の恋人だから。緊張するかもね】
ーーー絶対面白がってるよ、この人。
【…クリスマス、泊まりで旅行に行こうか】
恵は鼓動を早めて、携帯電話を握り締める。
「旅行って、今頃じゃ、何処も宿泊は無理じゃないの?」
【それが驚く無かれ。別荘があるんだよ】
「す…すごーいっ! 何処?」
【那須高原】
恵はパッと頬を染めた。
「行った事ないや。行けるんだね? 俺達」
【あぁ。楽しみにしておいで。寝不足にならない程度に、愛し合おう】
「っ龍之介さん」
ジンと下半身が熱くなる。
【愛しているよ】
「うん。俺も愛してる」
「…けいにいちゃん」
「うわっ!!」
伊吹の声に恵は飛び上がった。恵の声に、電話の向こうで龍之介も驚く。
【どうした!?】
「い、いや。伊吹が…。龍之介さんちょっとごめんね? 伊吹、何? どうしたんだ?」
うろたえる恵に、伊吹は眼を擦りながら真っ赤な眼で見上げた。
「こわいゆめみたの、けいにいちゃんいっしょにねて」
勝手に恵のベッドに潜り込む。猫のぬいぐるみも一緒だ。
【俺が傍に居たら、伊吹君を追い出してる処だ】
恵はクスクスと笑う。小さな子供にヤキモチを妬くなんて、意外と可愛いと思う。カッコイイ龍之介しか知らない恵は、大切な人の事をまたひとつ知る事が出来た。
「伊吹に嫌われたら、後が大変だよ?」
【それもそうか。じゃ、おやすみ】
電話の向こうで、龍之介が笑う。
「おやすみなさい、龍之介さん」
恵は電話を切って、伊吹のぬいぐるみをベッドの下に置くと、恵は伊吹を抱き締めて眠った。
翌日、恵は学校へ行くと皆が恵を心配して、居ない間の面白い話をしてくれた。恵は笑いながら返事をし、授業が始まると真剣に取り組んだ。
「本当に迎えに行きやがったな、あのロリコン」
恵は平片に苦笑する。
「ロリコンは当たってるかも」
「なんだ開き直りかよ」
つまらんと、平片は拗ねる。
「恵、クリスマスだけど」
「…俺、その日龍之介さんと那須高原。でも、家に従兄弟の鈴が遊びに来るけど」
平片は嫌そうな顔をする。細川鈴。太一の兄、勝のひとり息子だ。平片のもう一人の幼馴染。ひとつ年上の高校生。平片が行く高校の先輩になる。中学時代、生徒会長を務めていた。かおるの葬儀に久しぶりに会ったが、一段と綺麗になっていたのだ。何故か平片は紅くなった。中学三年まで、平片の空手道場に通っていた。どうも平片は鈴が苦手なのだ。素直な恵は可愛いが、鈴は平片の前では女王様だ。
ーーー絶対俺鈴に嫌われてるよな。
「鈴、楽しみにしてるから、会いに行ってあげると助かるんだけど…」
「何で、助かるんだ?」
訊かれて、恵は押し黙る。実は、鈴は平片が好きなのだ。素直になれない鈴を、小さい時から見て来た恵は、鈴の本心を見抜いていた。
ーーー平片はなんで気付かないんだろう?
恵は自分を棚上げして、平片を見詰める。平片は頬を染めて眼を逸らした。
ーーーやっぱ恵が可愛いよな。そうかクリスマスか。
平方は龍之介を思い出して益々腹が立って来た。
恵は太一の背中を見詰めたまま凍り付く。
ーーー今、とんでもない事を聞いた様な?
…様なではない。しっかり聞いた。しっかりしゃべった。
「えーっ!?」
「恵、なんですかいきなり大声で! 近所迷惑でしょう!?」
「ご、ごめんなさいっ!」
二本のミルクの入った哺乳瓶を手に、何も知らぬ十和子は恵を叱った。恵は自室に駆け込むと、慌てて龍之介に電話をする。太一の言葉を龍之介に話す為だ。恵は慌てた。が。
【あぁ。告別式の日にね。お母さんが亡くなった時に、俺が君の傍を離れなかったから、お父さん薄々気付いたみたいだ。そうか、今度一緒に酒か。それも良いな】
恵は脱力して、ベッドに腰を下ろす。
「あのねぇ…龍之介さん。俺恥ずかしかったんだよ? 女の子って皆そういう時は、緊張するのかなぁ」
【恵は俺の恋人だから。緊張するかもね】
ーーー絶対面白がってるよ、この人。
【…クリスマス、泊まりで旅行に行こうか】
恵は鼓動を早めて、携帯電話を握り締める。
「旅行って、今頃じゃ、何処も宿泊は無理じゃないの?」
【それが驚く無かれ。別荘があるんだよ】
「す…すごーいっ! 何処?」
【那須高原】
恵はパッと頬を染めた。
「行った事ないや。行けるんだね? 俺達」
【あぁ。楽しみにしておいで。寝不足にならない程度に、愛し合おう】
「っ龍之介さん」
ジンと下半身が熱くなる。
【愛しているよ】
「うん。俺も愛してる」
「…けいにいちゃん」
「うわっ!!」
伊吹の声に恵は飛び上がった。恵の声に、電話の向こうで龍之介も驚く。
【どうした!?】
「い、いや。伊吹が…。龍之介さんちょっとごめんね? 伊吹、何? どうしたんだ?」
うろたえる恵に、伊吹は眼を擦りながら真っ赤な眼で見上げた。
「こわいゆめみたの、けいにいちゃんいっしょにねて」
勝手に恵のベッドに潜り込む。猫のぬいぐるみも一緒だ。
【俺が傍に居たら、伊吹君を追い出してる処だ】
恵はクスクスと笑う。小さな子供にヤキモチを妬くなんて、意外と可愛いと思う。カッコイイ龍之介しか知らない恵は、大切な人の事をまたひとつ知る事が出来た。
「伊吹に嫌われたら、後が大変だよ?」
【それもそうか。じゃ、おやすみ】
電話の向こうで、龍之介が笑う。
「おやすみなさい、龍之介さん」
恵は電話を切って、伊吹のぬいぐるみをベッドの下に置くと、恵は伊吹を抱き締めて眠った。
翌日、恵は学校へ行くと皆が恵を心配して、居ない間の面白い話をしてくれた。恵は笑いながら返事をし、授業が始まると真剣に取り組んだ。
「本当に迎えに行きやがったな、あのロリコン」
恵は平片に苦笑する。
「ロリコンは当たってるかも」
「なんだ開き直りかよ」
つまらんと、平片は拗ねる。
「恵、クリスマスだけど」
「…俺、その日龍之介さんと那須高原。でも、家に従兄弟の鈴が遊びに来るけど」
平片は嫌そうな顔をする。細川鈴。太一の兄、勝のひとり息子だ。平片のもう一人の幼馴染。ひとつ年上の高校生。平片が行く高校の先輩になる。中学時代、生徒会長を務めていた。かおるの葬儀に久しぶりに会ったが、一段と綺麗になっていたのだ。何故か平片は紅くなった。中学三年まで、平片の空手道場に通っていた。どうも平片は鈴が苦手なのだ。素直な恵は可愛いが、鈴は平片の前では女王様だ。
ーーー絶対俺鈴に嫌われてるよな。
「鈴、楽しみにしてるから、会いに行ってあげると助かるんだけど…」
「何で、助かるんだ?」
訊かれて、恵は押し黙る。実は、鈴は平片が好きなのだ。素直になれない鈴を、小さい時から見て来た恵は、鈴の本心を見抜いていた。
ーーー平片はなんで気付かないんだろう?
恵は自分を棚上げして、平片を見詰める。平片は頬を染めて眼を逸らした。
ーーーやっぱ恵が可愛いよな。そうかクリスマスか。
平方は龍之介を思い出して益々腹が立って来た。
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