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天使は甘いキスが好き
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脆く壊れそうな恵の心を癒すオアシス。恵は目尻に涙を浮かべて、龍之介の口腔を貪った。
「伊吹君、お迎えだよ」
伊吹が英治と積み木遊びをしている所に、十和子が保育園へ迎えに来た。
「いつもすみません。遅くなって」
十和子は白い息を吐きながら、沼田に頭を下げる。
「えいじくんのところはおそいね」
伊吹が自分の出した分だけの積み木を片付ける。
「それより、あしたおれのいえにくるだろう?」
パソコンを触らせてくれるという約束で伊吹は頷いたが、恵に近付くなと念を押されている。が、恵は平片の家に明日は泊まりで家に居ない。
これでおあいこだと、伊吹は勝手に英治の家に遊びに行くと約束をしてしまった。
「おれのいえまでのちずなくすなよ?」
「うん。あしたおばあちゃんにつれていってもらうね? おひるまえにはいくから」
英治は沼田と十和子が廊下の外で話しているのを確認し、伊吹の頬にキスをした。
「またあしたな」
「…っ!」
頬を真っ赤に染めて、伊吹はギュウッと双眸を閉じる。英治はこの保育園に来てからというもの、こうして周りの眼を盗んでは、伊吹にキスをする。伊吹はその度に、ドキドキして胸がほっこりと温かくなるのだ。
「伊吹?」
「は、はい」
十和子に呼ばれて、伊吹は自分の荷物をロッカーから出して、英治を振り返る。
「またね」
伊吹は紅くなりながら、手を振る。
「お待たせ伊吹。今園長先生にご挨拶して来るから待っていてね? そしたらお母さんのお見舞い行こうね?」
「うん」
今日もまた、恵はお迎えに来てくれなかった。十和子は職員室へ向かった。
「ぬまたせんせいまたね」
赤ちゃんクラスから出て来た沼田に気付いて、伊吹は声を掛ける。
「はい伊吹君またね」
「あれ? 伊吹君?」
伊吹は声のする方へ顔を向けると、英治の父親が迎えに来ていた。
「えいじくんのぱぱ!」
「玉木さ……ん」
沼田が頬を染めて、お辞儀をする。
「…沼田先生、いつも有り難う御座います」
伊吹は大人二人を交互に見比べて、何をお互い照れているのかと、首を傾げた。
「まあ、玉木先生ですか? 伊吹からお話しは伺っております。伊吹がお世話になりまして」
職員室から出て来た十和子が玉木に気付き、お辞儀をすると玉木は胸の前で手を横に振った。
「こちらこそ。英治が毎日伊吹君の話をして、愉しく通わせて貰ってますよ。あぁ、そうだ。伊吹君、英治が明日愉しみにしてるからね? 家政婦さんがケーキを焼いてくれるらしいよ?」
「ほんとう?」
伊吹は大きな瞳をキラキラさせて、玉木を見上げた。
「あら、約束したの?」
「あ……」
十和子が訊く。伊吹はまだ十和子に話していなかった。
「おばあちゃんいいでしょう? ぼくもうやくそくしたの」
十和子の言葉に、伊吹は泣きそうになる。
「私は明日お店があるわよ? 連れては行けないわ」
「じゃ、おとうさんにたのむもん」
「お父さんもお仕事です」
「え~?」
伊吹は嫌々と顔と身体を横に振る。滅多にない光景に、十和子は絆されそうになる。
「私が迎えに行きましょうか?」
玉木が申し出たので、伊吹は涙で濡れた瞳を向ける。
「でも、病院の方は…」
「明日は土曜日で午後から休診で休みですから。英治も愉しみにしてますので」
英治が自分の荷物を手に、廊下に出る。
「いぶきのおばあちゃん、いいでしょう? おれたのしみにしてるから」
「そう…先生も英治君もそう云ってくれるなら」
「わ~い。おばちゃんだいすきっ」
伊吹が十和子に抱き付く。
「それじゃ、伊吹君のご自宅訊いても良いでしょうか?」
二人が話し込んでいる間、沼田はしゃがんで伊吹と英治に、こっそり云う。
「子供って素直で良いな~」
「?」
「伊吹君、お迎えだよ」
伊吹が英治と積み木遊びをしている所に、十和子が保育園へ迎えに来た。
「いつもすみません。遅くなって」
十和子は白い息を吐きながら、沼田に頭を下げる。
「えいじくんのところはおそいね」
伊吹が自分の出した分だけの積み木を片付ける。
「それより、あしたおれのいえにくるだろう?」
パソコンを触らせてくれるという約束で伊吹は頷いたが、恵に近付くなと念を押されている。が、恵は平片の家に明日は泊まりで家に居ない。
これでおあいこだと、伊吹は勝手に英治の家に遊びに行くと約束をしてしまった。
「おれのいえまでのちずなくすなよ?」
「うん。あしたおばあちゃんにつれていってもらうね? おひるまえにはいくから」
英治は沼田と十和子が廊下の外で話しているのを確認し、伊吹の頬にキスをした。
「またあしたな」
「…っ!」
頬を真っ赤に染めて、伊吹はギュウッと双眸を閉じる。英治はこの保育園に来てからというもの、こうして周りの眼を盗んでは、伊吹にキスをする。伊吹はその度に、ドキドキして胸がほっこりと温かくなるのだ。
「伊吹?」
「は、はい」
十和子に呼ばれて、伊吹は自分の荷物をロッカーから出して、英治を振り返る。
「またね」
伊吹は紅くなりながら、手を振る。
「お待たせ伊吹。今園長先生にご挨拶して来るから待っていてね? そしたらお母さんのお見舞い行こうね?」
「うん」
今日もまた、恵はお迎えに来てくれなかった。十和子は職員室へ向かった。
「ぬまたせんせいまたね」
赤ちゃんクラスから出て来た沼田に気付いて、伊吹は声を掛ける。
「はい伊吹君またね」
「あれ? 伊吹君?」
伊吹は声のする方へ顔を向けると、英治の父親が迎えに来ていた。
「えいじくんのぱぱ!」
「玉木さ……ん」
沼田が頬を染めて、お辞儀をする。
「…沼田先生、いつも有り難う御座います」
伊吹は大人二人を交互に見比べて、何をお互い照れているのかと、首を傾げた。
「まあ、玉木先生ですか? 伊吹からお話しは伺っております。伊吹がお世話になりまして」
職員室から出て来た十和子が玉木に気付き、お辞儀をすると玉木は胸の前で手を横に振った。
「こちらこそ。英治が毎日伊吹君の話をして、愉しく通わせて貰ってますよ。あぁ、そうだ。伊吹君、英治が明日愉しみにしてるからね? 家政婦さんがケーキを焼いてくれるらしいよ?」
「ほんとう?」
伊吹は大きな瞳をキラキラさせて、玉木を見上げた。
「あら、約束したの?」
「あ……」
十和子が訊く。伊吹はまだ十和子に話していなかった。
「おばあちゃんいいでしょう? ぼくもうやくそくしたの」
十和子の言葉に、伊吹は泣きそうになる。
「私は明日お店があるわよ? 連れては行けないわ」
「じゃ、おとうさんにたのむもん」
「お父さんもお仕事です」
「え~?」
伊吹は嫌々と顔と身体を横に振る。滅多にない光景に、十和子は絆されそうになる。
「私が迎えに行きましょうか?」
玉木が申し出たので、伊吹は涙で濡れた瞳を向ける。
「でも、病院の方は…」
「明日は土曜日で午後から休診で休みですから。英治も愉しみにしてますので」
英治が自分の荷物を手に、廊下に出る。
「いぶきのおばあちゃん、いいでしょう? おれたのしみにしてるから」
「そう…先生も英治君もそう云ってくれるなら」
「わ~い。おばちゃんだいすきっ」
伊吹が十和子に抱き付く。
「それじゃ、伊吹君のご自宅訊いても良いでしょうか?」
二人が話し込んでいる間、沼田はしゃがんで伊吹と英治に、こっそり云う。
「子供って素直で良いな~」
「?」
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