天使は甘いキスが好き

吉良龍美

文字の大きさ
上 下
22 / 98

天使は甘いキスが好き

しおりを挟む
 ベッドに横になると、携帯を胸に微笑んだ。

「絶対何か遭ったな、あれは」
 翌日クラスメイト達は、恵と平片の異変に気付く。
「恵はフェロモン大放出だ」
 クラスメイト達が一斉に頷く。まるで恵の周りに花が咲いたようにほんわかだ。
「細川、明日平片の家だよな?」
 お泊り組みの仲間二人が声を掛けてくる。平片の耳がピクリと動いた。聞き耳を立てている。
「え? うん。行くよ? 十八時だっけ?」
「そう、十八時だ」
 クラスメイトの言葉に、左斜めの前席に座る平片が振り返って恵を見る。
「……来るよな?」
 恵はムッとする。
「行くってばっ」
 目許を紅くして云う。
「……なんだよその反応…お前まさか…昨日何かあったのか?」
 平片が唸る。恵はポッと頬を染めて窓の外へ視線を逸らした。その反応に平片がガタリと立ち上がった。クラス中が驚いて平片を見た。
「恵、まさかマジで昨日何か遭ったのか!?」
「なんだよ! 昨日からっ俺が誰と会ってキスしようがっ…あ…」
 恵は両手で口を覆った。
「キ!? 恵、例の先輩とキスたのか!?」
「か、関係無いだろう!?」
 恵は羞恥で真っ赤だが、平方は違う意味で真っ赤だ。
「何っ! 恵君、恋人出来たの!? キスって誰とよ!?」
 女子生徒達が悲鳴を上げる。恵は両手で口を押さえていたが、如何せん。手遅れだ。正直者の恵は押し黙り、平片は平片であんぐりと口を開け、ウルウルと眼を潤ませて、拳を振るわせた。
「恵の大馬鹿やろうう!!!」
 平片は大絶叫を上げ、教室を飛び出す。
「ば、馬鹿って何なんだよ??」
 恵は真っ赤になってむくれた。
「あれは完璧に平片がふられたわ」
「ショック~私達のアイドルが…」
 女子達は好き勝手を云い出す。恵の周りに女子達が集まった。
「恵君、相手は誰!?」
「だ、誰って…えっとぉ年上」
 まさか教師を目指す、大学生だとは云えない。馬鹿正直に『年上』とだけばらした。
「恵君、年上が好みだったの!?」
「でもなんとなく解るわ。恵君守ってあげたい男の子なんだもん」
 ーーー…俺って、そう思われてたのかよ。
 ある意味ショックだ。
「その年上女許せないっ恵君のファーストキス奪うなんてっ」
「そうよっ何処の女よっ」
「あのう…」
 なぜファーストキスだとばれたのか? それよりも…。
 ーーー相手、完璧女だと思っている。
 当たり前だが黙っておく方が良いだろう。この場合。なんとか女子軍団から抜け出した恵を待っていたのは、今度は男子軍団だった。
「細川、キスって本当に遣っちゃったのか? その先は?」
 恵はカチンと来て、堪忍袋の緒が切れた。
「未成年者にその先遣ったら、犯罪だろうがっ!!」
 チェリーのままかと、皆がホッとする。が、
「えぇぇぇぇっ!? 相手は大人か!?」
 恵はあわわと慌て、クラス中が大騒ぎ。恵は硬直状態。その内、チャイムと共に担任が遣って来た。皆がブスくれる。
「ほーら、何遣ってる!? 早く席着け。なんだ? 細川、そこで固まってんな。早く席に着け」
 恵は違う意味でブスくれた。


 恵はメールを打ちながら、ゾクリと身体を震わせた。今居るのは、立ち入り禁止の外階段。吐く息は白い。
「さすがに此処は寒いや」
「べくしっ」
 恵はギョッとして、階下を除く。
「平片!? お前そんな所に居たのか」
 平片は鼻をズズッと吸うと、目許を紅くして恵を見上げる。恵は平片の傍まで降りて行くと、階段の平片の隣に座った。
「泣いてたのか?」
「違うっ眼にゴミが入ったんだ!」
 恵はチャイムの音に顔を上げる。
「授業始まるぞ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

【BL】はるおみ先輩はトコトン押しに弱い!

三崎こはく
BL
 サラリーマンの赤根春臣(あかね はるおみ)は、決断力がなく人生流されがち。仕事はへっぽこ、飲み会では酔い潰れてばかり、 果ては29歳の誕生日に彼女にフラれてしまうというダメっぷり。  ある飲み会の夜。酔っ払った春臣はイケメンの後輩・白浜律希(しらはま りつき)と身体の関係を持ってしまう。  大変なことをしてしまったと焦る春臣。  しかしその夜以降、律希はやたらグイグイ来るように――?  イケメンワンコ後輩×押しに弱いダメリーマン★☆軽快オフィスラブ♪ ※別サイトにも投稿しています

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...