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天使は甘いキスが好き
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「龍之介さん、皆見てる」
「え? あぁ、ごめん」
龍之介も気付いたのか恵の手を離す。離れて行く手の温もりが寂しくて、でも繋ぎたいとは云えなくて。恵は始めての戸惑いに困惑した。他の友人とじゃれてもこんな思いはした事が無い。これは、もしかしたら恋なのではないかと感じ、恵は頬を染めた。
映画はラブストーリーのファンタジー。龍神に攫われた皇女が、龍神を嫌うが毎日の様に花を贈られる姿に心を惹かれ、いつしか笑顔を見せる様になる。そこへ城から、皇女の兄王が救いに来て、龍神を斃してしまう。神を斃した罰として、死ぬ事を許されない罪に落とされた。
死ぬ事も出来ず、何百年も生きる事になった兄王は、孤独の中でもがき苦しむ。皇女の霊が天帝に罪の終わりを願うが、代わりに皇女が生まれ変わる事を許さないという、その条件で皇女は受け入れ、その純粋な優しさから天帝は、天使の姿に皇女を変えた。恵は映画が終わる頃、ホウッと溜息を吐いて、頬が濡れている事に気付いた。
「大丈夫?」
「は、はい。なんか泣いちゃって。男なのに変ですよね、映画で泣くなんて」
渡されたハンカチで、慌てて顔を覆う。
「この作品封切になったばかりだけど、結構人気あるんだよ」
「CMで宣伝してるの見たけど、こんなに良い作品久しぶりです」
照明が明るくなり、人々が館内から出て行く。
「この後食事行こうか。ちょっとしたレストランだけど、予約してるんだ」
恵は驚いて、龍之介を見上げた。
「あぁ、ごめん。時間大丈夫かな? 勝手に予約してしまったけど…」
龍之介は腕時計を見る。
既に十七時を回っていた。外は心成しか忙しない程に人が往来して、恵はこのまま帰りたくないと思った。
「大丈夫。家には電話入れるから」
「無理してない?」
恵は顔を横に振った。
「平気、電話するからちょっと待ってて」
恵は鞄から携帯を出すと、自宅のナンバーを呼び出した。
【はい、ほそかわです】
電話の向こうで、伊吹が答える。
「伊吹か?」
【けいにいちゃん! いまどこ? くるまのおとがする!】
伊吹が必死で背伸びをしながら、受話器を取った姿を想像する。恵はくすりと笑った。
「お祖母ちゃんは?」
【んとね、いまおふろ。ぼくさきにあがったの。けいにいちゃんいつかるの?】
「悪い、お祖母ちゃんに今夜は友達と食べて帰るって云っといて」
【え~っ! きょうのゆうごはん、けいにいちゃんのだいすきなゴウヤチャンプルなのに…】
「それは残念。明日の朝食べるから、お祖母ちゃんに俺の分残しておいてって云っておいてくれよ?」
電話の向こうで、伊吹は拗ねた様子だ。
【…わかった】
「帰りにお土産のケーキ、買って行くから」
【ほんとう!? ぼくイチゴのショートケーキと、ガトーショコラね?】
現金にも伊吹は大はしゃぎで騒ぐ。
「了解。じゃ、電話切るからな? 受話器ちゃんと置けよ?」
【うん! わかった。きをつけてかえってきてね?】
恵は解ったよと云うと、携帯を切る。
「愉しそうだったね? 声が元気で。弟さん?」
「うん。伊吹っていって、俺の自慢の弟」
龍之介は微笑んで、眼を細める。
「きっと恵君みたいに可愛いんだろうな」
「可愛いは余計。ま、伊吹は可愛いけど」
龍之介は笑いながら、行こうと誘う。恵は頬が熱くなるのを感じながら、夜空を見上げた。雨が降りそうだ。遠くで落雷が鳴っていた。
連れて来られたレストランは、韓国料理で、龍之介のお勧めをチョイスして、恵は始めて食べた海鮮チヂミを美味しいと喜んだ。
トッポキ、韓国風サラダ、ダットリタンなる物を食べる。
「どう? 美味しかった?」
「うん、凄く。あの、映画代とか食事代とか奢ってくれてありがとうございます」
「気にしなくて良いよ。家まで送るから」
恵は普段なら、女じゃないと断る処だが、もっと一緒に居たかったので、素直に頷いた。店から出ると小雨が振り出した。
「駅まで走れる?」
「平気」
龍之介がまた、恵の手を掴んで駆け出す。手から伝わる温もりが嬉しくて、恵は益々心臓が高鳴った。
「わ、わっ!?」
「え? あぁ、ごめん」
龍之介も気付いたのか恵の手を離す。離れて行く手の温もりが寂しくて、でも繋ぎたいとは云えなくて。恵は始めての戸惑いに困惑した。他の友人とじゃれてもこんな思いはした事が無い。これは、もしかしたら恋なのではないかと感じ、恵は頬を染めた。
映画はラブストーリーのファンタジー。龍神に攫われた皇女が、龍神を嫌うが毎日の様に花を贈られる姿に心を惹かれ、いつしか笑顔を見せる様になる。そこへ城から、皇女の兄王が救いに来て、龍神を斃してしまう。神を斃した罰として、死ぬ事を許されない罪に落とされた。
死ぬ事も出来ず、何百年も生きる事になった兄王は、孤独の中でもがき苦しむ。皇女の霊が天帝に罪の終わりを願うが、代わりに皇女が生まれ変わる事を許さないという、その条件で皇女は受け入れ、その純粋な優しさから天帝は、天使の姿に皇女を変えた。恵は映画が終わる頃、ホウッと溜息を吐いて、頬が濡れている事に気付いた。
「大丈夫?」
「は、はい。なんか泣いちゃって。男なのに変ですよね、映画で泣くなんて」
渡されたハンカチで、慌てて顔を覆う。
「この作品封切になったばかりだけど、結構人気あるんだよ」
「CMで宣伝してるの見たけど、こんなに良い作品久しぶりです」
照明が明るくなり、人々が館内から出て行く。
「この後食事行こうか。ちょっとしたレストランだけど、予約してるんだ」
恵は驚いて、龍之介を見上げた。
「あぁ、ごめん。時間大丈夫かな? 勝手に予約してしまったけど…」
龍之介は腕時計を見る。
既に十七時を回っていた。外は心成しか忙しない程に人が往来して、恵はこのまま帰りたくないと思った。
「大丈夫。家には電話入れるから」
「無理してない?」
恵は顔を横に振った。
「平気、電話するからちょっと待ってて」
恵は鞄から携帯を出すと、自宅のナンバーを呼び出した。
【はい、ほそかわです】
電話の向こうで、伊吹が答える。
「伊吹か?」
【けいにいちゃん! いまどこ? くるまのおとがする!】
伊吹が必死で背伸びをしながら、受話器を取った姿を想像する。恵はくすりと笑った。
「お祖母ちゃんは?」
【んとね、いまおふろ。ぼくさきにあがったの。けいにいちゃんいつかるの?】
「悪い、お祖母ちゃんに今夜は友達と食べて帰るって云っといて」
【え~っ! きょうのゆうごはん、けいにいちゃんのだいすきなゴウヤチャンプルなのに…】
「それは残念。明日の朝食べるから、お祖母ちゃんに俺の分残しておいてって云っておいてくれよ?」
電話の向こうで、伊吹は拗ねた様子だ。
【…わかった】
「帰りにお土産のケーキ、買って行くから」
【ほんとう!? ぼくイチゴのショートケーキと、ガトーショコラね?】
現金にも伊吹は大はしゃぎで騒ぐ。
「了解。じゃ、電話切るからな? 受話器ちゃんと置けよ?」
【うん! わかった。きをつけてかえってきてね?】
恵は解ったよと云うと、携帯を切る。
「愉しそうだったね? 声が元気で。弟さん?」
「うん。伊吹っていって、俺の自慢の弟」
龍之介は微笑んで、眼を細める。
「きっと恵君みたいに可愛いんだろうな」
「可愛いは余計。ま、伊吹は可愛いけど」
龍之介は笑いながら、行こうと誘う。恵は頬が熱くなるのを感じながら、夜空を見上げた。雨が降りそうだ。遠くで落雷が鳴っていた。
連れて来られたレストランは、韓国料理で、龍之介のお勧めをチョイスして、恵は始めて食べた海鮮チヂミを美味しいと喜んだ。
トッポキ、韓国風サラダ、ダットリタンなる物を食べる。
「どう? 美味しかった?」
「うん、凄く。あの、映画代とか食事代とか奢ってくれてありがとうございます」
「気にしなくて良いよ。家まで送るから」
恵は普段なら、女じゃないと断る処だが、もっと一緒に居たかったので、素直に頷いた。店から出ると小雨が振り出した。
「駅まで走れる?」
「平気」
龍之介がまた、恵の手を掴んで駆け出す。手から伝わる温もりが嬉しくて、恵は益々心臓が高鳴った。
「わ、わっ!?」
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