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天使は甘いキスが好き
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恵は龍之介に見える筈も無いのに、顔を横に振る。
「観る! 映画、学校終わったら俺からメールするから」
電話の向こうで、龍之介がホッとするのが雰囲気で解った。
【良かった。じゃ明日。おやすみ、恵君】
「おやすみなさい」
通話が切れて、恵はベッドに仰向けになる。まるでデートみたいだ。と、恵はひとり紅くなった。
「そうだ鞄に私服入れとこう。制服のままじゃ、浮くだろうから…」
恵はガバッと起き上がって、クローゼットの扉を開く。
「何着て行こう。龍之介さんにつり合うような服が良いよな?」
恵はドキドキしながら、明日の夕刻が待ち切れなく思った。
「恵」
教室に入ると真っ先に平片が恵の腕を掴んで、教室を出ると階段下の薄暗い場所に引っ張って行かれた。
「何だよ? 話なら」
漸く腕を放した平片が、恵を睨む様に見詰める。
「何怒ってんだよ? 俺何かしたか?」
「したんじゃない。無いけど…。また例の先輩とかって奴に会うのかよ」
恵はそんな事かと、肩を竦める。
「会うよ? 今日映画観に行く約束したし」
「なんで!?」
「なんでって? 俺の問題じゃんか。平片どうしたんだよ?」
「お前、無謀過ぎ」
恵はカチンと来た。
「無謀ってなんだよ? 俺そんなに女みてぇ? 俺これでもちゃんと男だし」
云いながらふと、恵は昨日のナンパ男を思い出したのだ。ナンパされたのは初めてではない。だけど恵にもプライドはある。
「…悪い。変な事云った。でも心配なんだよ。しん……親友として」
平片は背を向けてしまう。
「…ありがとうな。でも昨日話した先輩、凄く良い人だから。今度紹介するよ」
恵は云うと、予鈴に遅れない様に踵を返す。
「ホームルーム遅れるぞ? 俺、先行くから」
「…あぁ」
恵の後姿を見送りながら、平片は傍に在ったダンボール箱を蹴飛ばした。
「人の気も知らないで、あいつ」
窓の外は曇り空。降水確率は低いが、きっと夜までには降るだろう。平片は重い足取りで、教室へ戻って行った。
「恵は?」
放課後、平片は恵の姿も鞄も無い事に気付いて、傍に居たクラスメイトに訊いた。
「あ? 細川なら終わったと同時に、鞄持って帰ったけど?」
素早い身のこなしに平片は唖然とする。掃除当番だったので、ゴミを捨てに行っている間に帰ったのだろう。というより、急いでいたのは例の南川龍之介に会いにだ。平片は溜息を吐いて椅子に座り込んだ。
「どした?」
「ほっといてくれ…」
クラスメイトは肩を竦めて、部活の為部室へ向かう。平片は窓の空を見上げて、ひとり黄昏ていた。
恵は駅の改札口で待っていると、龍之介が手を振って駆けて来た。
「待たせたかな?」
「いえ。俺もさっき来たばかりだし」
龍之介はラフな格好で来たので、自分とそう変わらなかった事のにホッとする。
「今日学校は?」
訊かれて恵は持っていた鞄を軽く持ち上げる。
「トイレで着替えた」
「…そうきたか。俺も良くやったな着替え持参で通学」
「え? 俺初めてだよ?」
龍之介は驚いて肩を竦める。
「じゃ、初体験だね」
恵は頬を染めてあらぬ事を考えてしまい、額をコツンと軽く龍之介に叩かれた。
「すけべ」
「べ、べつにっ! もうっ行くよ? 置いてくからね!?」
恵はドキドキしながら、改札口を早歩きで抜けて行った。
「何処の映画館?」
恵は振り返って訊くと、龍之介は微笑んで恵の手を握り誘導する。
「下り線で西新井に行こう。映画館在るんだ」
ーーーそれは解った。解ったが、この手は? 嬉しいけどどうしよう…。
「観る! 映画、学校終わったら俺からメールするから」
電話の向こうで、龍之介がホッとするのが雰囲気で解った。
【良かった。じゃ明日。おやすみ、恵君】
「おやすみなさい」
通話が切れて、恵はベッドに仰向けになる。まるでデートみたいだ。と、恵はひとり紅くなった。
「そうだ鞄に私服入れとこう。制服のままじゃ、浮くだろうから…」
恵はガバッと起き上がって、クローゼットの扉を開く。
「何着て行こう。龍之介さんにつり合うような服が良いよな?」
恵はドキドキしながら、明日の夕刻が待ち切れなく思った。
「恵」
教室に入ると真っ先に平片が恵の腕を掴んで、教室を出ると階段下の薄暗い場所に引っ張って行かれた。
「何だよ? 話なら」
漸く腕を放した平片が、恵を睨む様に見詰める。
「何怒ってんだよ? 俺何かしたか?」
「したんじゃない。無いけど…。また例の先輩とかって奴に会うのかよ」
恵はそんな事かと、肩を竦める。
「会うよ? 今日映画観に行く約束したし」
「なんで!?」
「なんでって? 俺の問題じゃんか。平片どうしたんだよ?」
「お前、無謀過ぎ」
恵はカチンと来た。
「無謀ってなんだよ? 俺そんなに女みてぇ? 俺これでもちゃんと男だし」
云いながらふと、恵は昨日のナンパ男を思い出したのだ。ナンパされたのは初めてではない。だけど恵にもプライドはある。
「…悪い。変な事云った。でも心配なんだよ。しん……親友として」
平片は背を向けてしまう。
「…ありがとうな。でも昨日話した先輩、凄く良い人だから。今度紹介するよ」
恵は云うと、予鈴に遅れない様に踵を返す。
「ホームルーム遅れるぞ? 俺、先行くから」
「…あぁ」
恵の後姿を見送りながら、平片は傍に在ったダンボール箱を蹴飛ばした。
「人の気も知らないで、あいつ」
窓の外は曇り空。降水確率は低いが、きっと夜までには降るだろう。平片は重い足取りで、教室へ戻って行った。
「恵は?」
放課後、平片は恵の姿も鞄も無い事に気付いて、傍に居たクラスメイトに訊いた。
「あ? 細川なら終わったと同時に、鞄持って帰ったけど?」
素早い身のこなしに平片は唖然とする。掃除当番だったので、ゴミを捨てに行っている間に帰ったのだろう。というより、急いでいたのは例の南川龍之介に会いにだ。平片は溜息を吐いて椅子に座り込んだ。
「どした?」
「ほっといてくれ…」
クラスメイトは肩を竦めて、部活の為部室へ向かう。平片は窓の空を見上げて、ひとり黄昏ていた。
恵は駅の改札口で待っていると、龍之介が手を振って駆けて来た。
「待たせたかな?」
「いえ。俺もさっき来たばかりだし」
龍之介はラフな格好で来たので、自分とそう変わらなかった事のにホッとする。
「今日学校は?」
訊かれて恵は持っていた鞄を軽く持ち上げる。
「トイレで着替えた」
「…そうきたか。俺も良くやったな着替え持参で通学」
「え? 俺初めてだよ?」
龍之介は驚いて肩を竦める。
「じゃ、初体験だね」
恵は頬を染めてあらぬ事を考えてしまい、額をコツンと軽く龍之介に叩かれた。
「すけべ」
「べ、べつにっ! もうっ行くよ? 置いてくからね!?」
恵はドキドキしながら、改札口を早歩きで抜けて行った。
「何処の映画館?」
恵は振り返って訊くと、龍之介は微笑んで恵の手を握り誘導する。
「下り線で西新井に行こう。映画館在るんだ」
ーーーそれは解った。解ったが、この手は? 嬉しいけどどうしよう…。
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