混沌藍皿

柏木あきら

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7.それがいい

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 店に来た男を睨みながら、エミリオは鞘に手をかけると男は両手を上げた。どうやら剣を交わす気はないらしい。
「昨日は失礼なことをしてすまなかった」
 頭を下げ、昨日より静かなトーンの声でエミリオに向かい謝罪してきたので拍子抜けしてしまう。鞘から手を離し、頬をぽりぽりと掻いた。
「……いや、こっちも大人気なかったよ」
 それでも男は店内の商品には目もくれず、例のプレートを見つめている。本当はまだ諦めてないのだろう。
「すまないが、そのプレートを見せてくれないか」
 売り物ではないことは承知している、と付け足しながら男がそう言ってくるのでエミリオは渋々プレートを男に渡す。すると舐め回すようにプレートを見ながら裏返し何かを探していた。
 アンティークのプレートの裏には窯元のマークが掘られている。シェメシュのプレートにあるマークは蝶のモチーフが二つ絡まっているような図案だ。男はこの窯元のマークを探していたのか、長い時間じっとマークを見ていたが、やがてゆっくりとエミリオにそれを返した。
「ありがとう」
「あ、うん」
 昨日とうって変わって大人しい男の様子に拍子抜けするエミリオだが、気を取り直し男に話しかけた。

「そんなにこのプレートが良ければ、こちらのプレートはどうかな? 百二十年前の宮廷で使われていた一級品だぞ。藍色だし、このプレートより綺麗だろ」
「綺麗だが、私が欲しいのは君が持っているそのプレートなんだ。……また来る」
 男は他の商品には目もくれずにそう言うと店を後にした。呆気に取られたエミリオだったがそれから先、毎日その男は店に来てはプレートを見に来るようになったのだ。

 ある日、エミリオの店先には髪をツンツンに立てた少年のような男がいた。
「だからって俺が店番するってどうなんだよ」
 同じく国営マーケットに出店している古本屋【ムッシム】店主のトトは苦笑いしながらエミリオを見た。
 トトはエミリオが国営マーケットに参加する前から付き合いのある五歳年上の知り合いで、少年のように見えるが二十八歳の酒が大好きな青年なのだ。毎日同じプレートを見にくる奴がいるんだと聞いて興味津々のトトにエミリオは店番をしてくれないかと頼んだのだ。
「いやもう気味が悪いんだよ。俺あいつの顔見たら走って逃げたくなる」
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