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神同人作家と陸くんは嫉妬する
由宇の想い
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雨の音が聞こえ、いつの間に降り出したのだろうかと由宇は窓の外を見た。窓ガラスに打ちつける雨は激しくて眼下を行く車のテールランプが滲む。
入稿〆切まであと四日。このままだと初の『新刊落としました』報告をしなければならない。それは高西ユウとしてプライドが許さない、と思いながらも筆が進まない。その理由は由宇本人がよく分かっているのだ。
窓から離れ、パソコンを前にして何度目になるか分からないため息をつく。陸とのすれ違い。それが筆が進まない理由だ。創作活動が忙しい時以外で二人が三日以上連絡していないのは、付き合いだして初めてのことだった。
陸と恋人になる前、それまでの彼氏は由宇と同じく同人活動をしていた。次第に売れていく自分に相手は嫉妬して、気がついたら離れていた。高西ユウのせいで終わった恋に、同じ界隈の恋人はつくらないと決めていた。
だが、しばらくして【Jパーク】が開催されるたびにスペースに来てくれる陸に惹かれるようになっていた。会うのはほんの少しの時間、しかも半年に一度なのに、陸への想いが募っていく。彼に似合いそうなアクセサリーを衝動買いしたものの、なかなか渡せずにいた。それでも想いが抑えきれなくて、由宇は自身が陸の推し作家であることを利用して、その距離を縮めていったのだ。
思いの外、陸は積極的に由宇に好意を向けてきてくれた。由宇は素直に喜び、恋人となった時は嬉しくてたまらなかった。同じ界隈の恋人を作らないなどという誓いなどもう忘れていた。
陸の子供のような素直さ、弾ける笑顔。たまに見せる可愛らしい顔と、自分にしか見せない甘い顔。恋人となった陸を由宇は溺愛している。
しかし街の近くに陸が転居して頻繁に会えるようになった頃から、由宇は自分自身に嫉妬するという滑稽な悩みを持つようになっていた。
高西ユウに陶酔している陸は、本当に高西由宇が好きなのだろうかと。
由宇は自分が創作活動が忙しい時期に、陸が気を遣ってくれていることを知っていた。修羅場中に連絡できなくて寂しい思いをさせていることは、申し訳ないと由宇はいつも思っているし、その分創作活動が穏やかな時は陸をめいいっぱい可愛がっているつもりだ。
陸は連絡できない時に一度も『寂しい、会いたい』と言わなかった。高西ユウの大ファンの読者として、何よりも創作活動を優先して欲しいという気持ちからくるのだろう。だがそれが原因でジワジワと由宇の心の中で、不安な気持ちが湧くようになっていたのだ。
作家ではなく個人として好きだと陸が言ってくれたことは覚えている。それでも不安にかられるのは自分が高西ユウを利用してしまったからなのか。そして高西ユウのせいで終わった恋を思い出したからなのか。
寂しい気持ちを押し殺して、高西ユウの創作活動を優先させようとする陸。その優しい気持ちを踏み躙ってはいけないと由宇は自分の不安な気持ちを隠してきたのだ。
入稿〆切まであと四日。このままだと初の『新刊落としました』報告をしなければならない。それは高西ユウとしてプライドが許さない、と思いながらも筆が進まない。その理由は由宇本人がよく分かっているのだ。
窓から離れ、パソコンを前にして何度目になるか分からないため息をつく。陸とのすれ違い。それが筆が進まない理由だ。創作活動が忙しい時以外で二人が三日以上連絡していないのは、付き合いだして初めてのことだった。
陸と恋人になる前、それまでの彼氏は由宇と同じく同人活動をしていた。次第に売れていく自分に相手は嫉妬して、気がついたら離れていた。高西ユウのせいで終わった恋に、同じ界隈の恋人はつくらないと決めていた。
だが、しばらくして【Jパーク】が開催されるたびにスペースに来てくれる陸に惹かれるようになっていた。会うのはほんの少しの時間、しかも半年に一度なのに、陸への想いが募っていく。彼に似合いそうなアクセサリーを衝動買いしたものの、なかなか渡せずにいた。それでも想いが抑えきれなくて、由宇は自身が陸の推し作家であることを利用して、その距離を縮めていったのだ。
思いの外、陸は積極的に由宇に好意を向けてきてくれた。由宇は素直に喜び、恋人となった時は嬉しくてたまらなかった。同じ界隈の恋人を作らないなどという誓いなどもう忘れていた。
陸の子供のような素直さ、弾ける笑顔。たまに見せる可愛らしい顔と、自分にしか見せない甘い顔。恋人となった陸を由宇は溺愛している。
しかし街の近くに陸が転居して頻繁に会えるようになった頃から、由宇は自分自身に嫉妬するという滑稽な悩みを持つようになっていた。
高西ユウに陶酔している陸は、本当に高西由宇が好きなのだろうかと。
由宇は自分が創作活動が忙しい時期に、陸が気を遣ってくれていることを知っていた。修羅場中に連絡できなくて寂しい思いをさせていることは、申し訳ないと由宇はいつも思っているし、その分創作活動が穏やかな時は陸をめいいっぱい可愛がっているつもりだ。
陸は連絡できない時に一度も『寂しい、会いたい』と言わなかった。高西ユウの大ファンの読者として、何よりも創作活動を優先して欲しいという気持ちからくるのだろう。だがそれが原因でジワジワと由宇の心の中で、不安な気持ちが湧くようになっていたのだ。
作家ではなく個人として好きだと陸が言ってくれたことは覚えている。それでも不安にかられるのは自分が高西ユウを利用してしまったからなのか。そして高西ユウのせいで終わった恋を思い出したからなのか。
寂しい気持ちを押し殺して、高西ユウの創作活動を優先させようとする陸。その優しい気持ちを踏み躙ってはいけないと由宇は自分の不安な気持ちを隠してきたのだ。
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