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番外編
9.
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その日は一日中、雨が降り続けていたが夜半になりようやく止んだ。
一時帰国した佳紀はその店に向かっていた。ベトナムでクリニックを開業した佳紀はたまにこうやって日本へ帰国し雑務を行う。
元々白かった肌はすっかり小麦色になり、端正な顔には顎髭が生えていた。すっかり風貌が変わった佳紀が業務を終え、向かっているのはあの【ロジウラ】だ。
岡が以前、報告してきた時にこの店に俊がいると言うことを知り、一度訪れたことがあったのだ。その夜は俊に会うことは出来ず、ママと思われる男性と話を少しだけして帰った。それから半年後。再来したのは、ほんの気まぐれだ。赤い扉をゆっくり開くと、煙草の香りが鼻をついた。
奥に進み、カウンター席に座るとすぐにおしぼりが差し出されるとカウンター内にいた男性に声をかけられた。
「あら、もう雨止んだのね」
以前来た時に話した男性だった。佳紀は自分に話しかけられていることに気づき、答える。
「来る途中にやんだよ。明日はいい天気になるみたいだ」
飲み物をオーダーし、カウンターを眺める。俊の姿はない。それもそのはずで、彼が定休日であることは報告書で知っていた。
「新しいバーテンダーさん、仕事には慣れた?」
そう呟くと、男性はゆっくり頷く。
「ええ。今日は休みなんだけど……そう言えばあなた以前も気にかけてくれたわね。あの日もあの子ったら休みだったし……もしかして知り合い?」
半年も前に、しかも風貌も変わっているはずの自分を覚えていたことに佳紀は驚き、思わず言葉を失ったがやがて笑顔になった。
「古い知り合いさ」
するとちょうどオーダーしていたエバグリーンを受け取りそれを口にする。グリーンのカクテルは爽やかな飲み口で、体の中が浄化されていくかのようだ。
一時帰国した佳紀はその店に向かっていた。ベトナムでクリニックを開業した佳紀はたまにこうやって日本へ帰国し雑務を行う。
元々白かった肌はすっかり小麦色になり、端正な顔には顎髭が生えていた。すっかり風貌が変わった佳紀が業務を終え、向かっているのはあの【ロジウラ】だ。
岡が以前、報告してきた時にこの店に俊がいると言うことを知り、一度訪れたことがあったのだ。その夜は俊に会うことは出来ず、ママと思われる男性と話を少しだけして帰った。それから半年後。再来したのは、ほんの気まぐれだ。赤い扉をゆっくり開くと、煙草の香りが鼻をついた。
奥に進み、カウンター席に座るとすぐにおしぼりが差し出されるとカウンター内にいた男性に声をかけられた。
「あら、もう雨止んだのね」
以前来た時に話した男性だった。佳紀は自分に話しかけられていることに気づき、答える。
「来る途中にやんだよ。明日はいい天気になるみたいだ」
飲み物をオーダーし、カウンターを眺める。俊の姿はない。それもそのはずで、彼が定休日であることは報告書で知っていた。
「新しいバーテンダーさん、仕事には慣れた?」
そう呟くと、男性はゆっくり頷く。
「ええ。今日は休みなんだけど……そう言えばあなた以前も気にかけてくれたわね。あの日もあの子ったら休みだったし……もしかして知り合い?」
半年も前に、しかも風貌も変わっているはずの自分を覚えていたことに佳紀は驚き、思わず言葉を失ったがやがて笑顔になった。
「古い知り合いさ」
するとちょうどオーダーしていたエバグリーンを受け取りそれを口にする。グリーンのカクテルは爽やかな飲み口で、体の中が浄化されていくかのようだ。
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