バタフライトラップ

柏木あきら

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番外編

3.

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そして最近。佳紀は体調を崩し自室から出なくなることもしばしばとなった。
理由はDomのプレイ不足からくるものだ。subがコマンドを受けないと体調が悪くなるのと同様に、プレイをしないとDomも崩してしまう。
subを派遣する店に軒並み断られてしまい、新しい店を探すがそれも限界だ。
真白いインテリアに囲まれた色のない自分の部屋だけが佳紀の世界。そこでただ生きていた。

佳紀が溺愛するほどに加虐してしまう癖があるのは幼少期から。お気に入りのぬいぐるみは可愛がりすぎて、いつもぼろぼろになっていた。
高校の時の彼氏は佳紀の異常さに付き合いきれないと転校してしまうし、大学の時の彼はプレイ中に首を絞めてしまい、ことなきを得たものの殺しかけてしまったことも。
愛しいものに対して必要以上に加虐してしまう性癖に気づきながら暮らしていた頃に、俊と出会った。
懐いてきた俊が可愛くてどうしようもなかった。自分のものにしたい、そればかりで気持ちが先走り俊の気持ちなど考えなかった。今思えばなんと愚かだったことか。
カラーの意味すら教えずに、それを彼の首に装着し、所有権を可視化して自己満足に陥っていた。そんな一方的で自己中心な愛情なんて破綻するに違いなかった。

ふと壁にかけている蝶の標本が目に入る。
真っ白な部屋の中にあるただ一つの鮮やかな色。黒と緑が混じった玉虫色の羽をもち、後翅(後方にある一対の翅)に目玉のような金紋がある。オオゴンテングアゲハと呼ばれるこの蝶は世界八大貴重チョウ類の一つだ。
学生の頃、佳紀がこの蝶の画像を見ていた時たまたま見かけた岡は一目で気に入り、それから仲良くなった。
佳紀の蝶に関する知識にひどく憧れ、一緒に標本を集めた。彼は同じDomだったので惹かれることはなかったが、親友として過ごした日々が懐かしい。
しかしそれも全て、手放したのだ。
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