17 / 41
五、褐色の来訪者
17
しおりを挟む
俊がサムットと再会したのは、それから一週間後の雨の日だ。
マンションのエントランスに到着し、傘を折りたたんでいると、背後から肩を叩かれ、振り向くとそこにサムットがいた。
「あ……この前の」
岡はまた不在なのだろうか。どうしようと考えているとサムットから声をかけてきた。
「今日はあなたに用事ある」
「え、俺に?」
俊が口を開くと、サムットは顔をじっと見つめながらこう言った。
「センセイに近づかないでほしい。ここにいないで」
「は?」
サムットの瞳はじっと俊を見据える。その瞳には確かに敵対心を感じた。
「センセイは、渡さない」
それを聞いて俊は思わず息を呑む。先生とは岡のことだろうか。
「あの」
俊が口を開いた途端、サムットのポケットから着信を告げるメロディが聞こえた。
サムットはチッと舌打ちする。
「忠告、したからね」
そういうと、スマホを取り出して通話しながら俊の前から立ち去っていく。
じわりと嫌な汗を感じて俊は眉を顰めた。明らかにサムットは俊を攻撃してきた。
何もしていないはずなのに。
エントランスに立ち尽くしていると、女性がすれ違ったあとに振り向き、話しかけてきた。
「あの……大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」
声を掛けられて、はっと俊は我に帰った。
女性はこのマンションの住人だろうか、心配そうな顔をしながら俊を見ていた。
「大丈夫です。すみません邪魔してましたね」
「いえいえ、お気をつけて」
お互い会釈を交わし、俊は岡の部屋へと向かった。
そしてその夜。
「安田くん? どうしたの」
ベッドのなかで俊は岡の腕にしがみついていた。
いつもはこんなに甘えてくることはないので、岡は戸惑う。
「何でもないです」
もしかしたら、と俊の中でモヤモヤする気持ちが広がっていた。
(彼がもしカウンセリングの患者で、俺と同じように優しくされていたら。
そして好意を持っていたとしたら。だから彼は『近づくな』と言ったんじゃないだろうか)
ギュッと腕に力を入れてさらにしがみつく俊に、岡はため息をついた。
以前、俊は岡になぜカウンセリングを始めたのか聞いたことがあった。
『友達が悩んでいたことがあってね。私にとって彼はとても大切な友人だったから、少しでも力になりたいと思ったんだ』
『それなら、専門の人を紹介した方が早いのに』
『彼は多忙だったから通う暇がなくて。なら私が資格取ってやるからって思って……今考えると単純なんだけど』
『ううん。岡さんはやっぱり優しいんだよ』
そうだ、誰に対しても優しい。
だからサムットの言葉一つでこんなに不安なんだ、と俊は胸を痛める。
「come」
抱きついたまま、岡はそうコマンドを投げる。
俊が顔を上げるとキスをしてきた。俊の不安をかき消すような濃厚なキス。
「ん……っ」
貪るように岡の舌を追いかける。するりと手が伸びて俊の突起を指で突く。
「どうして欲しいの?」
口を離しそう聞いてきた岡に俊は答えた。
「もっと……コマンドを下さい」
うっとりと熱を帯びた瞳に岡は自分の唇をなめた。
「Present」
どこを、とは言わない。でも俊には分かっていた。
のろのろと体を岡から少し離して正面に向き合う形でベッドに座ると両脚を大きく広げる。
半分勃っている自分自身と、さっき使って柔らかくなっている孔を曝け出した。
そしてその孔を自身の指で広げてみせる。すでにそこは岡を迎えたくてひくついていた。
「もう一度、お願いします」
「ん。おねだり上手だね、いいこ」
岡は硬くなったそれをこすりつけ、ググっと中に押し込む。
俊の口から甘い吐息が漏れ始めていく。
「あ……っ、あっああ……!」
不安な気持ちを払拭したくて、俊は自分から岡を求める。
それに答えて岡はいつもより深く強く挿入を繰り返した。
「きもち……い……、んんっ」
飛び散る汗と滲む涙。
(どうか俺だけでいてくれますように)
「ん……も、限界……っ」
耳のそばで岡がそういうと俊はその背中に爪を立てる。
頂点に登りつめるための激しい腰つきに俊はさらに大きく甘い声を出していた。
「きて……っ あああっ、イッちゃう……!」
岡が一瞬切なそうな顔をして、俊の中にそれを出した瞬間、俊は朦朧とした頭で無意識に言葉を発した。
「どこにも行かないで、お願い」
「安田くん?」
「……好きです」
そう言うと、俊はふっと意識がなくなった。
マンションのエントランスに到着し、傘を折りたたんでいると、背後から肩を叩かれ、振り向くとそこにサムットがいた。
「あ……この前の」
岡はまた不在なのだろうか。どうしようと考えているとサムットから声をかけてきた。
「今日はあなたに用事ある」
「え、俺に?」
俊が口を開くと、サムットは顔をじっと見つめながらこう言った。
「センセイに近づかないでほしい。ここにいないで」
「は?」
サムットの瞳はじっと俊を見据える。その瞳には確かに敵対心を感じた。
「センセイは、渡さない」
それを聞いて俊は思わず息を呑む。先生とは岡のことだろうか。
「あの」
俊が口を開いた途端、サムットのポケットから着信を告げるメロディが聞こえた。
サムットはチッと舌打ちする。
「忠告、したからね」
そういうと、スマホを取り出して通話しながら俊の前から立ち去っていく。
じわりと嫌な汗を感じて俊は眉を顰めた。明らかにサムットは俊を攻撃してきた。
何もしていないはずなのに。
エントランスに立ち尽くしていると、女性がすれ違ったあとに振り向き、話しかけてきた。
「あの……大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」
声を掛けられて、はっと俊は我に帰った。
女性はこのマンションの住人だろうか、心配そうな顔をしながら俊を見ていた。
「大丈夫です。すみません邪魔してましたね」
「いえいえ、お気をつけて」
お互い会釈を交わし、俊は岡の部屋へと向かった。
そしてその夜。
「安田くん? どうしたの」
ベッドのなかで俊は岡の腕にしがみついていた。
いつもはこんなに甘えてくることはないので、岡は戸惑う。
「何でもないです」
もしかしたら、と俊の中でモヤモヤする気持ちが広がっていた。
(彼がもしカウンセリングの患者で、俺と同じように優しくされていたら。
そして好意を持っていたとしたら。だから彼は『近づくな』と言ったんじゃないだろうか)
ギュッと腕に力を入れてさらにしがみつく俊に、岡はため息をついた。
以前、俊は岡になぜカウンセリングを始めたのか聞いたことがあった。
『友達が悩んでいたことがあってね。私にとって彼はとても大切な友人だったから、少しでも力になりたいと思ったんだ』
『それなら、専門の人を紹介した方が早いのに』
『彼は多忙だったから通う暇がなくて。なら私が資格取ってやるからって思って……今考えると単純なんだけど』
『ううん。岡さんはやっぱり優しいんだよ』
そうだ、誰に対しても優しい。
だからサムットの言葉一つでこんなに不安なんだ、と俊は胸を痛める。
「come」
抱きついたまま、岡はそうコマンドを投げる。
俊が顔を上げるとキスをしてきた。俊の不安をかき消すような濃厚なキス。
「ん……っ」
貪るように岡の舌を追いかける。するりと手が伸びて俊の突起を指で突く。
「どうして欲しいの?」
口を離しそう聞いてきた岡に俊は答えた。
「もっと……コマンドを下さい」
うっとりと熱を帯びた瞳に岡は自分の唇をなめた。
「Present」
どこを、とは言わない。でも俊には分かっていた。
のろのろと体を岡から少し離して正面に向き合う形でベッドに座ると両脚を大きく広げる。
半分勃っている自分自身と、さっき使って柔らかくなっている孔を曝け出した。
そしてその孔を自身の指で広げてみせる。すでにそこは岡を迎えたくてひくついていた。
「もう一度、お願いします」
「ん。おねだり上手だね、いいこ」
岡は硬くなったそれをこすりつけ、ググっと中に押し込む。
俊の口から甘い吐息が漏れ始めていく。
「あ……っ、あっああ……!」
不安な気持ちを払拭したくて、俊は自分から岡を求める。
それに答えて岡はいつもより深く強く挿入を繰り返した。
「きもち……い……、んんっ」
飛び散る汗と滲む涙。
(どうか俺だけでいてくれますように)
「ん……も、限界……っ」
耳のそばで岡がそういうと俊はその背中に爪を立てる。
頂点に登りつめるための激しい腰つきに俊はさらに大きく甘い声を出していた。
「きて……っ あああっ、イッちゃう……!」
岡が一瞬切なそうな顔をして、俊の中にそれを出した瞬間、俊は朦朧とした頭で無意識に言葉を発した。
「どこにも行かないで、お願い」
「安田くん?」
「……好きです」
そう言うと、俊はふっと意識がなくなった。
31
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる