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四、植物たちの中で
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最近体が重いと俊が感じるようになって数日後。
不眠や頭痛など色々な不調が現れ始めて俊は頭を抱えた。あの体調不良がやってきたのだ。
以前拓也に抱かれたのは確か、岡のカウンセリングを受ける前だ。
こんなに間を開けたのは初めてかもしれない。掃除をしながら頭を抱えていた俊に、拓也が話しかけてきた。
「具合悪いの?」
「うん、少し……でも大丈夫」
拓也は勘が鋭い。もしかしたらコマンド不足の体調不良ということに気づいているかもしれない。
気がついていたら、きっと『する?』と聞いてくるだろう。
でも、と俊は頭を振る。明日は岡のカウンセリングだ。頑張れば大丈夫だと言い聞かせた。
拓也に抱かれるのが、嫌なのではない。抱かれた後に岡の顔を見るのが嫌だと俊はため息をついた。
しかし、カウンセリング中に体調がよくないことは岡にすぐ気づかれた。
いつもの雑談も途切れ途切れで、話が続かないのだ。俊は体の火照りも感じ始めていた。
岡は手を伸ばし俊の額にあてる。体温が高いことを感じてふぅ、とため息をついた。
「やっぱり体調よくないんでしょう? 少し横になって休んだら今日は終わりにしよう」
そう言われて反論しようとしたが、結局寝室まで案内されてベッドに横になる。
柔らかいシーツは使用感はあるものの柔軟剤の優しい香りと、岡の香り。
それを感じた時、俊は自分の体の中心にあらぬ熱が溜まっていくことに気づいた。
(……っ、なんで)
触れなくてもその膨張が分かる。
人の、岡のベッドの中で勃ってしまうなんて、情けないというか恥ずかしいというか。
頬がどんどん熱くなっていく。いまこの部屋に岡がいなくてよかった、と俊はため息をついた。とりあえず収まるまで待つしかない。ここで抜くわけにはいかないのだから。
それから何分くらい寝てしまったのか。
ふいに何かの香りが鼻腔をくすぐり、俊は目をゆっくり開ける。
するとサイドテーブルにマグカップが置いてあって、そこから美味しそうなスープの香りがしていることに気づき、体を半分起こして覗くと、コンソメスープが入っている。
「あ、起きた?」
ドアが開いて岡が入ってきて、ベッドに腰掛ける。
手には同じマグカップを持っている。
「よかったら暖かいスープ飲んでみて」
「もしかして手作り?」
「ふふ。こう見えて料理好きなんだ」
へぇ、と言いながら早速マグカップを手にしてスープをすすると、少し塩味が抑えてあって、優しい味わい。暖かい液体が体をほんわかと温めていく。
「美味しい」
「よかった」
岡も自分のマグをかたむけてスープを飲む。
ゆっくりとした時間が過ぎていく。2人ともスープを飲み終え、マグカップをサイドテーブルに置く。
俊が大きな背伸びをすると、岡が話しかけてきた。
「安田くん。ちょっと答えにくいかもしれないけど、少しだけ教えてくれるかな?」
「はい?」
「君にはパートナーはいま、いないんだよね?」
そう聞かれて俊は一気に緊張する。パートナー、それはDomのことをさすのだろう。
何故そんなことを聞くのだろうかと思いながらも弱々しい声で俊は答える。
「ええ、いません。佳紀がパートナーに当てはまるか分かりませんが、それ以降は」
「じゃあ、コマンドを受けるようなことは?」
「あ、あの……」
「ごめん。言いにくいよね。ただ君の体調不良は sub独特のものじゃないかと思ってるんだ。コマンド不足によるもの。でも君が佳紀の元を離れたのは随分前だ。だからつい」
俊はごくりと息を呑んだ。
『一夜限りの遊び相手にを見つけてコマンドを受けている』と嘘を言うべきなのか、正直に拓也にお願いしていると言うべきなのか。
(この人は……軽蔑しないだろうか)
俊は拳を握る。そして少し間を置いて答えた。
「拓也さんが、俺の具合を見て相手をしてくれてました。彼はDomなので。俺を心配してくれて、しんどくなったのを見計らって」
それを聞いたあと、岡は俊の頭を撫でると優しく微笑んだ。
岡は少し神妙な面持ちだったがそのうち申し訳そうに呟いた。
「言いにくいこと、聞いてごめんね」
どうやら軽蔑されなかったということに、俊はホッとして頭を撫でていた岡の手を無意識に掴み、伸ばして頬擦りする。
(暖かい)
体の中からほんわりと滲み出る幸福感。
何故こんなに落ち着くのだろう、と俊は目を閉じてしばらくその余韻に浸っていたが、はっと気づく。
不眠や頭痛など色々な不調が現れ始めて俊は頭を抱えた。あの体調不良がやってきたのだ。
以前拓也に抱かれたのは確か、岡のカウンセリングを受ける前だ。
こんなに間を開けたのは初めてかもしれない。掃除をしながら頭を抱えていた俊に、拓也が話しかけてきた。
「具合悪いの?」
「うん、少し……でも大丈夫」
拓也は勘が鋭い。もしかしたらコマンド不足の体調不良ということに気づいているかもしれない。
気がついていたら、きっと『する?』と聞いてくるだろう。
でも、と俊は頭を振る。明日は岡のカウンセリングだ。頑張れば大丈夫だと言い聞かせた。
拓也に抱かれるのが、嫌なのではない。抱かれた後に岡の顔を見るのが嫌だと俊はため息をついた。
しかし、カウンセリング中に体調がよくないことは岡にすぐ気づかれた。
いつもの雑談も途切れ途切れで、話が続かないのだ。俊は体の火照りも感じ始めていた。
岡は手を伸ばし俊の額にあてる。体温が高いことを感じてふぅ、とため息をついた。
「やっぱり体調よくないんでしょう? 少し横になって休んだら今日は終わりにしよう」
そう言われて反論しようとしたが、結局寝室まで案内されてベッドに横になる。
柔らかいシーツは使用感はあるものの柔軟剤の優しい香りと、岡の香り。
それを感じた時、俊は自分の体の中心にあらぬ熱が溜まっていくことに気づいた。
(……っ、なんで)
触れなくてもその膨張が分かる。
人の、岡のベッドの中で勃ってしまうなんて、情けないというか恥ずかしいというか。
頬がどんどん熱くなっていく。いまこの部屋に岡がいなくてよかった、と俊はため息をついた。とりあえず収まるまで待つしかない。ここで抜くわけにはいかないのだから。
それから何分くらい寝てしまったのか。
ふいに何かの香りが鼻腔をくすぐり、俊は目をゆっくり開ける。
するとサイドテーブルにマグカップが置いてあって、そこから美味しそうなスープの香りがしていることに気づき、体を半分起こして覗くと、コンソメスープが入っている。
「あ、起きた?」
ドアが開いて岡が入ってきて、ベッドに腰掛ける。
手には同じマグカップを持っている。
「よかったら暖かいスープ飲んでみて」
「もしかして手作り?」
「ふふ。こう見えて料理好きなんだ」
へぇ、と言いながら早速マグカップを手にしてスープをすすると、少し塩味が抑えてあって、優しい味わい。暖かい液体が体をほんわかと温めていく。
「美味しい」
「よかった」
岡も自分のマグをかたむけてスープを飲む。
ゆっくりとした時間が過ぎていく。2人ともスープを飲み終え、マグカップをサイドテーブルに置く。
俊が大きな背伸びをすると、岡が話しかけてきた。
「安田くん。ちょっと答えにくいかもしれないけど、少しだけ教えてくれるかな?」
「はい?」
「君にはパートナーはいま、いないんだよね?」
そう聞かれて俊は一気に緊張する。パートナー、それはDomのことをさすのだろう。
何故そんなことを聞くのだろうかと思いながらも弱々しい声で俊は答える。
「ええ、いません。佳紀がパートナーに当てはまるか分かりませんが、それ以降は」
「じゃあ、コマンドを受けるようなことは?」
「あ、あの……」
「ごめん。言いにくいよね。ただ君の体調不良は sub独特のものじゃないかと思ってるんだ。コマンド不足によるもの。でも君が佳紀の元を離れたのは随分前だ。だからつい」
俊はごくりと息を呑んだ。
『一夜限りの遊び相手にを見つけてコマンドを受けている』と嘘を言うべきなのか、正直に拓也にお願いしていると言うべきなのか。
(この人は……軽蔑しないだろうか)
俊は拳を握る。そして少し間を置いて答えた。
「拓也さんが、俺の具合を見て相手をしてくれてました。彼はDomなので。俺を心配してくれて、しんどくなったのを見計らって」
それを聞いたあと、岡は俊の頭を撫でると優しく微笑んだ。
岡は少し神妙な面持ちだったがそのうち申し訳そうに呟いた。
「言いにくいこと、聞いてごめんね」
どうやら軽蔑されなかったということに、俊はホッとして頭を撫でていた岡の手を無意識に掴み、伸ばして頬擦りする。
(暖かい)
体の中からほんわりと滲み出る幸福感。
何故こんなに落ち着くのだろう、と俊は目を閉じてしばらくその余韻に浸っていたが、はっと気づく。
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