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第十一話 少年の戦い
3.「始まったか」
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昌宏は歯を食いしばってその目を睨み返した。
「なんだよ。大人のくせに何もわかってないじゃないか!」
こぶしを握って昌宏は叫んだ。
「人身御供なんてなあ、それは亜衣や姉ちゃんや義兄さんや、おれら家族に対する侮辱だろっ」
「何が侮辱だ。村のためになってくれとお願いしてるんじゃないか」
「亜衣が年ごろになったとき、本人に向かって言えるのかよ!」
「いい加減にしないかっ」
昌宏の頬に平手が飛んだ。口の中に血の味が広がった。情けないことにあまりの悔しさに涙が滲んでくる。
「閉じ込めておけ。これ以上邪魔をされてはかなわん」
昌宏は両脇から腕を掴まれ連れていかれた。
「始めよう」
長老の一言で亜衣を抱いて脇の木立に隠れていた者が出てきた。すると小道の反対側で物音がした。その場にいた全員が振り返る。
「ははははははは。あははははは……」
体をくの字に曲げて腹を抱え、錯乱した笑い声をあげながら出てきたのは、見慣れない顏の男だった。
「なんだ、この男は」
「記者の高遠とかいう奴です」
「はははは。聞いたぜ、あんたたち。俺の予想は当たってた。この村はおかしいって。悪魔の支配する村。夜な夜な赤ん坊を生贄に捧げる村人たちってな!」
そこで何を思ったのか高遠は祠の前へと駆け寄った。
「おいおい、神さんよお。いけないぜ、こんな小さな子どもを食べでもするのか? ええ? どんな神さんだよ」
高遠の手が、祠の扉にかかった。
扉がこじ開けられる。そこから、凄まじい《気》が吹き出した。
統吾は御供の膳を持って本殿へと入った。神前に御供を捧げ鈴を振って祝詞を唱える。その最中、首筋に鈍痛を感じると同時に目の前が真っ暗になった。統吾は意識を失っていた。
「すみません。統吾さん」
司は小声で謝って彼の体を御供部屋へ運んだ。同じように眠らせた当屋の杉山少年と禰宜のふたりも運び込み慎重に戸を閉ざした。
目を上げたとき、中空に轟音と共に稲妻が走った。
「始まったか」
司は祠への階段を駆け上がった。到着したとき、その場は想像以上にひどい有様だった。亜衣を抱いたさやかが振り返る。
「みんな気でやられちゃった」
倒れ伏した人々の中に高遠を見つけて司は眉をひそめる。
「なんだよ。大人のくせに何もわかってないじゃないか!」
こぶしを握って昌宏は叫んだ。
「人身御供なんてなあ、それは亜衣や姉ちゃんや義兄さんや、おれら家族に対する侮辱だろっ」
「何が侮辱だ。村のためになってくれとお願いしてるんじゃないか」
「亜衣が年ごろになったとき、本人に向かって言えるのかよ!」
「いい加減にしないかっ」
昌宏の頬に平手が飛んだ。口の中に血の味が広がった。情けないことにあまりの悔しさに涙が滲んでくる。
「閉じ込めておけ。これ以上邪魔をされてはかなわん」
昌宏は両脇から腕を掴まれ連れていかれた。
「始めよう」
長老の一言で亜衣を抱いて脇の木立に隠れていた者が出てきた。すると小道の反対側で物音がした。その場にいた全員が振り返る。
「ははははははは。あははははは……」
体をくの字に曲げて腹を抱え、錯乱した笑い声をあげながら出てきたのは、見慣れない顏の男だった。
「なんだ、この男は」
「記者の高遠とかいう奴です」
「はははは。聞いたぜ、あんたたち。俺の予想は当たってた。この村はおかしいって。悪魔の支配する村。夜な夜な赤ん坊を生贄に捧げる村人たちってな!」
そこで何を思ったのか高遠は祠の前へと駆け寄った。
「おいおい、神さんよお。いけないぜ、こんな小さな子どもを食べでもするのか? ええ? どんな神さんだよ」
高遠の手が、祠の扉にかかった。
扉がこじ開けられる。そこから、凄まじい《気》が吹き出した。
統吾は御供の膳を持って本殿へと入った。神前に御供を捧げ鈴を振って祝詞を唱える。その最中、首筋に鈍痛を感じると同時に目の前が真っ暗になった。統吾は意識を失っていた。
「すみません。統吾さん」
司は小声で謝って彼の体を御供部屋へ運んだ。同じように眠らせた当屋の杉山少年と禰宜のふたりも運び込み慎重に戸を閉ざした。
目を上げたとき、中空に轟音と共に稲妻が走った。
「始まったか」
司は祠への階段を駆け上がった。到着したとき、その場は想像以上にひどい有様だった。亜衣を抱いたさやかが振り返る。
「みんな気でやられちゃった」
倒れ伏した人々の中に高遠を見つけて司は眉をひそめる。
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