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第八話 本音と喧嘩
3.お姉さん想いな子
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「朝早くから大変だね」
昌宏は無言のまま高遠を睨みつけた。
「やだなあ、そんな怖い顔して。気になるに決まってるよね」
「……」
「中谷氏の行方だよ」
「関係ないって言っただろっ」
そのとき、絶えず薄っぺらな笑いを浮かべていた高遠の面から、すうっと笑みが消えた。
「意地を張らない方がいいと思うぜ? おれは中谷氏を探すのに協力してやろうって言ってるんだ。取材させてくれればね」
昌宏は頬を強張らせて高遠を見た。
「簡単なことだよ。君は質問に答えてくれるだけでいいんだ。中谷氏のことや、この村の祭礼について」
「……」
「君はお姉さん想いな子だってね。お姉さんのために何かしたいと思うだろう?」
昌宏の瞳が揺れた。高遠は見逃さない。
「立ち話もなんだから場所変えようか」
「だめっ」
昌宏の肩に回そうとした高遠の腕を叩き落として、さやかが間に割って入った。驚く昌宏に彼女は厳しい目を向け言った。
「ダメだよ。こんな奴の言うこと聞いたら」
「おいおい、お嬢ちゃん。そりゃ失礼だろう」
さやかはきついまなざしで高遠を睨みつけ昌宏の手を取った。
「行こう」
身をひるがえしたその肩を、高遠の手が掴んだ。
「お嬢ちゃん、大人の邪魔をするものじゃあないよ。俺はその子に大事な用があるんだ」
「手をどけなさい、無礼者!」
高遠は驚いてとっさに手を引っ込めた。
「行こ」
間の抜けた表情で呆然としている高遠を置いて、さやかは昌宏の腕を引っ張って歩きだした。
やはり彼女の迫力に唖然となっていた昌宏はしばらくの間なすがままになっていたが、やがてはっと我に返ってさやかの手を振り払った。
「なんだよ、おまえ。関係ないのに余計なことするな」
「あの男はまともな輩じゃない。関わらない方がいいよ」
「おれがどうしようと勝手だろう。おまえに関係ない」
「ええ、そう。関係ないよ。でもあんたみたいな世間知らず危なっかしくて黙って見てられない」
昌宏はカッと頬を染めて怒鳴った。
「義兄さんを捜したいって思って何が悪いんだよ。おれにできることがあるなら……」
「よく言うよ、このシスコン」
「な……っ」
昌宏は無言のまま高遠を睨みつけた。
「やだなあ、そんな怖い顔して。気になるに決まってるよね」
「……」
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「関係ないって言っただろっ」
そのとき、絶えず薄っぺらな笑いを浮かべていた高遠の面から、すうっと笑みが消えた。
「意地を張らない方がいいと思うぜ? おれは中谷氏を探すのに協力してやろうって言ってるんだ。取材させてくれればね」
昌宏は頬を強張らせて高遠を見た。
「簡単なことだよ。君は質問に答えてくれるだけでいいんだ。中谷氏のことや、この村の祭礼について」
「……」
「君はお姉さん想いな子だってね。お姉さんのために何かしたいと思うだろう?」
昌宏の瞳が揺れた。高遠は見逃さない。
「立ち話もなんだから場所変えようか」
「だめっ」
昌宏の肩に回そうとした高遠の腕を叩き落として、さやかが間に割って入った。驚く昌宏に彼女は厳しい目を向け言った。
「ダメだよ。こんな奴の言うこと聞いたら」
「おいおい、お嬢ちゃん。そりゃ失礼だろう」
さやかはきついまなざしで高遠を睨みつけ昌宏の手を取った。
「行こう」
身をひるがえしたその肩を、高遠の手が掴んだ。
「お嬢ちゃん、大人の邪魔をするものじゃあないよ。俺はその子に大事な用があるんだ」
「手をどけなさい、無礼者!」
高遠は驚いてとっさに手を引っ込めた。
「行こ」
間の抜けた表情で呆然としている高遠を置いて、さやかは昌宏の腕を引っ張って歩きだした。
やはり彼女の迫力に唖然となっていた昌宏はしばらくの間なすがままになっていたが、やがてはっと我に返ってさやかの手を振り払った。
「なんだよ、おまえ。関係ないのに余計なことするな」
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「おれがどうしようと勝手だろう。おまえに関係ない」
「ええ、そう。関係ないよ。でもあんたみたいな世間知らず危なっかしくて黙って見てられない」
昌宏はカッと頬を染めて怒鳴った。
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「よく言うよ、このシスコン」
「な……っ」
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