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第四話 クサナギノツルギ
20.あがき
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「司……」
さやかをかばうように立ちふさがった司は、音を立てるほど強くスサノヲの腕を捩じり上げた。
「っとに、しぶといな。いい加減面倒になってきたぜ」
叫びざまスサノヲは全身から力を放出させた。衝撃波が繰り出される。
「司!」
わき腹を深々と貫かれ司が倒れた。それをかばおうとしたさやかは体中を引き裂かれながら後方に吹き飛ばされた。
「さやかさん!」
度重なるショックでようやく硬直状態から脱した亜衣は、岩場にうずくまったさやかのそばに駆け寄った。
「さやかさん、さやかさん」
何度呼んでもさやかは目を覚まさない。
びくっと身をすくませて亜衣は顔を上げた。すぐ傍らにスサノヲが立っていた。
「どけ」
「何をするの」
「言っただろう。そいつを殺せば剣に戻るはずなんだ」
「こ、殺すって」
亜衣は震えながらさやかの体に取りすがった。
「ひどいよ。そんなの! どうして」
「何がひどいものか。だいたい、そいつは始めからヒトではないものなんだぞ」
目蓋を閉じたままのさやかの白い顔を、亜衣はじっと見つめた。
――わたしは、人ではないから。
「そんなこと、ない」
「あ?」
「人じゃないなんて、そんなことない! さやかさんはちゃんと人間だよ。だって、だって」
感極まって泣き出した亜衣を呆れたように見下ろしてスサノヲはやれやれとその場にしゃがみこんだ。
「あのな、何をそんなに入れ込んでるのかは知らないが、おとなしく退いた方が身のためだぜ? あんたに何ができるって言うんだ」
「……」
「おまえにできることがひとつだけある」
さやかにしがみついたまま答えない亜衣に向かって、スサノヲは不意にやさし気な口調になって言った。
「……?」
「おまえにならムラクモを元の姿に戻すことができるはずだ」
「わたしに?」
「そうだ。おまえの呼びかけがあれば、そうすればこれ以上むごい真似をせずとも事は足りる」
「どうしてわたしに」
「それは……」
「駄目だ! そいつの言うことに耳を貸すんじゃないっ」
目を見開いて亜衣はスサノヲの肩越しに視線を投げた。傷の痛みに顔をゆがめながら司がこちらに向かって叫んでいた。
「どんな理由があろうとも、誰が望もうとも、本人の意思でなければ強要してはならないんだ。あいつ自身が望まない限り……」
「うるせえよ」
スサノヲは振り返りもせずに指を鳴らした。司の両肩に新たな傷口が走る。
「やめてッ」
亜衣は目を閉じてさやかの体に顔を伏せた。
さやかをかばうように立ちふさがった司は、音を立てるほど強くスサノヲの腕を捩じり上げた。
「っとに、しぶといな。いい加減面倒になってきたぜ」
叫びざまスサノヲは全身から力を放出させた。衝撃波が繰り出される。
「司!」
わき腹を深々と貫かれ司が倒れた。それをかばおうとしたさやかは体中を引き裂かれながら後方に吹き飛ばされた。
「さやかさん!」
度重なるショックでようやく硬直状態から脱した亜衣は、岩場にうずくまったさやかのそばに駆け寄った。
「さやかさん、さやかさん」
何度呼んでもさやかは目を覚まさない。
びくっと身をすくませて亜衣は顔を上げた。すぐ傍らにスサノヲが立っていた。
「どけ」
「何をするの」
「言っただろう。そいつを殺せば剣に戻るはずなんだ」
「こ、殺すって」
亜衣は震えながらさやかの体に取りすがった。
「ひどいよ。そんなの! どうして」
「何がひどいものか。だいたい、そいつは始めからヒトではないものなんだぞ」
目蓋を閉じたままのさやかの白い顔を、亜衣はじっと見つめた。
――わたしは、人ではないから。
「そんなこと、ない」
「あ?」
「人じゃないなんて、そんなことない! さやかさんはちゃんと人間だよ。だって、だって」
感極まって泣き出した亜衣を呆れたように見下ろしてスサノヲはやれやれとその場にしゃがみこんだ。
「あのな、何をそんなに入れ込んでるのかは知らないが、おとなしく退いた方が身のためだぜ? あんたに何ができるって言うんだ」
「……」
「おまえにできることがひとつだけある」
さやかにしがみついたまま答えない亜衣に向かって、スサノヲは不意にやさし気な口調になって言った。
「……?」
「おまえにならムラクモを元の姿に戻すことができるはずだ」
「わたしに?」
「そうだ。おまえの呼びかけがあれば、そうすればこれ以上むごい真似をせずとも事は足りる」
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「どんな理由があろうとも、誰が望もうとも、本人の意思でなければ強要してはならないんだ。あいつ自身が望まない限り……」
「うるせえよ」
スサノヲは振り返りもせずに指を鳴らした。司の両肩に新たな傷口が走る。
「やめてッ」
亜衣は目を閉じてさやかの体に顔を伏せた。
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