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第二章 因縁
21.探索
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(亜衣ちゃんの地元だったの?)
さやかは驚いた顔をして、それから笑ってくれるだろう。
(知らなかった。でもすごい偶然ね)
偶然。それならばここに写っている少年は昌宏ではなく、他の子どもたちに見覚えがないのも亜衣が薄情なだけなのだ。
次々と浮かんでくる多くの疑問を一切無視して、亜衣は無理やりにそう考えた。
「おはよう。やけに早いじゃない」
美乃里と、数人のクラスメートたちが教室に入ってきた。鞄を自分の席に置いてさっそく文化祭の準備作業を始める。
「隣に行ってやろう。あっちのが道具揃ってるから」
「うん」
写真をポケットに入れて亜衣は立ち上がった。さやかを待つには彼女のクラスにいる方がいい。
由利子も来ていて美乃里と打ち合わせを始めた。亜衣は金や銀の折り紙を星型に切り始めた。教室に誰かが入ってくるたびに息を詰めて顔を上げる。さやかはなかなか来ない。
早くさやかに会いたかった。どちらでもいい。それが真実でなくてもいい。さやかから答えが欲しかった。もしかしたら彼女の顔を見ただけで安心できてしまうかもしれない。自分は単純だから。
そんな亜衣の思いを他所に、予鈴のチャイムが鳴っても、さやかは学校に来なかったのである。
早々に食事をすませ、司と智と踊子の三人は探索に出た。今日も快晴だったが朝から風が強い。
「寒いわね」
踊子はちょっと首を竦めた。さすがに今日は着飾らずにカジュアルな服装をしている。
市街地では人の気が邪魔になる。中心地から離れる必要があった。駅前のバスターミナルまで行くと、踊子は「南へ行ってみる」と港に向かうバスに乗った。
残された二人でそれぞれの方向へ向かうバスを待っていると智が声を潜めて話しかけた。
「ねえ、司。皆の手前、昨夜はああ言いましたが、わたしはあなたの身も心配なんですよ」
智は思慮深げな瞳で司を見た。
「スサノヲはあれの所有者であるあなたに激しい敵愾心を持っているはずです」
「俺はあれの主なわけじゃない」
「そうでしょうとも。しかし彼はそうは思わない。あなたに危害を加えるかもしれない」
「復讐か」
智はちょっと目を瞠ってから頷いた。
「そうともいえるかもしれません」
その言い回しに司は小さく笑った。バスがやってきた。司が歩き出す。
「何かあったら呼んでくれ」
「ええ。あなたもお気をつけて」
さやかは驚いた顔をして、それから笑ってくれるだろう。
(知らなかった。でもすごい偶然ね)
偶然。それならばここに写っている少年は昌宏ではなく、他の子どもたちに見覚えがないのも亜衣が薄情なだけなのだ。
次々と浮かんでくる多くの疑問を一切無視して、亜衣は無理やりにそう考えた。
「おはよう。やけに早いじゃない」
美乃里と、数人のクラスメートたちが教室に入ってきた。鞄を自分の席に置いてさっそく文化祭の準備作業を始める。
「隣に行ってやろう。あっちのが道具揃ってるから」
「うん」
写真をポケットに入れて亜衣は立ち上がった。さやかを待つには彼女のクラスにいる方がいい。
由利子も来ていて美乃里と打ち合わせを始めた。亜衣は金や銀の折り紙を星型に切り始めた。教室に誰かが入ってくるたびに息を詰めて顔を上げる。さやかはなかなか来ない。
早くさやかに会いたかった。どちらでもいい。それが真実でなくてもいい。さやかから答えが欲しかった。もしかしたら彼女の顔を見ただけで安心できてしまうかもしれない。自分は単純だから。
そんな亜衣の思いを他所に、予鈴のチャイムが鳴っても、さやかは学校に来なかったのである。
早々に食事をすませ、司と智と踊子の三人は探索に出た。今日も快晴だったが朝から風が強い。
「寒いわね」
踊子はちょっと首を竦めた。さすがに今日は着飾らずにカジュアルな服装をしている。
市街地では人の気が邪魔になる。中心地から離れる必要があった。駅前のバスターミナルまで行くと、踊子は「南へ行ってみる」と港に向かうバスに乗った。
残された二人でそれぞれの方向へ向かうバスを待っていると智が声を潜めて話しかけた。
「ねえ、司。皆の手前、昨夜はああ言いましたが、わたしはあなたの身も心配なんですよ」
智は思慮深げな瞳で司を見た。
「スサノヲはあれの所有者であるあなたに激しい敵愾心を持っているはずです」
「俺はあれの主なわけじゃない」
「そうでしょうとも。しかし彼はそうは思わない。あなたに危害を加えるかもしれない」
「復讐か」
智はちょっと目を瞠ってから頷いた。
「そうともいえるかもしれません」
その言い回しに司は小さく笑った。バスがやってきた。司が歩き出す。
「何かあったら呼んでくれ」
「ええ。あなたもお気をつけて」
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