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第四十七話 忠告と後悔
47-1.好みではない
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その日、榊亜紀子は合同展示会の打ち合わせに出席するため朝早くに自宅を出た。クルマで新幹線の駅まで行き、後の移動は車両に任せる。上りの車中、亜紀子は憂鬱しか感じない。
都会は嫌いだ。見るに堪えない人間が多すぎる。モノが自在に手に入るという利点を差し引いても。
田舎暮らしを始めて更にその傾向は顕著になった。ずっとあの場所に引きこもっていたい。できれば女神様も一緒に。
亜紀子は残念な気持ちでひじ掛けにもたれながらため息をつく。
どうすれば彼女は素直に収まってくれるのだろう。彼女のために用意した新しい箱庭に。
物思いにふけっていたらあっという間に終着駅に着いていた。
わざわざ足を運んできた割には実りのない内容だった。亜紀子はランチの誘いを断り早々に最寄り駅に移動する。出品しているギャラリーにも挨拶に行く予定でいたが早く都内を出たかった。
電車で少し移動して帰路の途中にある港街に降り立つ。この辺りまで来れば息苦しさは楽になる。観光客が多いこの商店街にあるギャラリーにも絵を預けてある。
まずは食事をしに行きつけの洋食店へ行こう。そこで突然、声をかけられた。
「榊さんだよね?」
亜紀子の婚約者の友人、村上達彦だ。
「偶然ですね」
いかにも外回り中のサラリーマンといった体裁。人好きのする笑顔で自分でもそう説明した。昼食をとりたいがこの辺は詳しくないから店を教えてもらえるか、とも。
女神様の近くにいる男性のひとり。とにかく彼には気をつけるべきだと巽から言われている。
最大限に警戒して亜紀子は彼の表情を窺う。巧みな話術で人を操る抜け目のない人物。それが巽から伝聞した彼に対する亜紀子の印象だ。
それとは別に亜紀子の直感が告げている。この男は見るからに歪んでいる。巽ら兄妹とはまったく違う。自ら進んで染まったふうな悪辣さを感じる。亜紀子の好みではない。だけど。
「私も食事に行くところです。ご一緒しませんか?」
「是非」
彼から濃厚に感じる女神の気配。巽の忠告を忘れたわけではないけれど、亜紀子はそれに抗えなかった。
都会は嫌いだ。見るに堪えない人間が多すぎる。モノが自在に手に入るという利点を差し引いても。
田舎暮らしを始めて更にその傾向は顕著になった。ずっとあの場所に引きこもっていたい。できれば女神様も一緒に。
亜紀子は残念な気持ちでひじ掛けにもたれながらため息をつく。
どうすれば彼女は素直に収まってくれるのだろう。彼女のために用意した新しい箱庭に。
物思いにふけっていたらあっという間に終着駅に着いていた。
わざわざ足を運んできた割には実りのない内容だった。亜紀子はランチの誘いを断り早々に最寄り駅に移動する。出品しているギャラリーにも挨拶に行く予定でいたが早く都内を出たかった。
電車で少し移動して帰路の途中にある港街に降り立つ。この辺りまで来れば息苦しさは楽になる。観光客が多いこの商店街にあるギャラリーにも絵を預けてある。
まずは食事をしに行きつけの洋食店へ行こう。そこで突然、声をかけられた。
「榊さんだよね?」
亜紀子の婚約者の友人、村上達彦だ。
「偶然ですね」
いかにも外回り中のサラリーマンといった体裁。人好きのする笑顔で自分でもそう説明した。昼食をとりたいがこの辺は詳しくないから店を教えてもらえるか、とも。
女神様の近くにいる男性のひとり。とにかく彼には気をつけるべきだと巽から言われている。
最大限に警戒して亜紀子は彼の表情を窺う。巧みな話術で人を操る抜け目のない人物。それが巽から伝聞した彼に対する亜紀子の印象だ。
それとは別に亜紀子の直感が告げている。この男は見るからに歪んでいる。巽ら兄妹とはまったく違う。自ら進んで染まったふうな悪辣さを感じる。亜紀子の好みではない。だけど。
「私も食事に行くところです。ご一緒しませんか?」
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彼から濃厚に感じる女神の気配。巽の忠告を忘れたわけではないけれど、亜紀子はそれに抗えなかった。
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