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第三十六話 清算

36-4.「ひでえ女」

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「わかっちゃうんだよね。オレ鼻が利くからさ」
「……」
「オレもサークルは引退だし、就活あるしね。普通に考えても潮時だよね。今までありがとね」
「良い人だね」
「惚れ直した?」
「ええ」
「ひでえ女」

 頬を引きつらせていた芦川だったが、すぐに真顔になって美登利に尋ねた。
「美登利ちゃんさ、貴島ゼミに入るつもりだったりする?」
「よくわかるね」
「そりゃあ」
 浮かない顏の彼に美登利は目線で促す。

「いや……。その先生、評判よくないだろ」
「やる気ないとか変人とかでしょ。だから人が少ないのだもの、私には好都合だよ」
「うん……」
「なにさ、らしくないね。言いたいことがあるなら早く言いなよ」
「いや……君なら問題ないか」
 歯切れの悪い言い方だったが面倒なので気にしないことにする。

「それじゃあ。どっかで見かけたら声かけてよ。無視しないでよ」
「それはそのときになってみないとわからない」
「ひっでえ」




「ちっきしょおおー!! また連休中にコンペ三回も入ってやがる」
 鉄友会の年間行事表を見ながら宮前仁が喚く。
「今年はサボるかな」
「お父さんに怒られない?」
「う……」
「宮前さんちの親父さんてそんなに怖いんすか」
 素朴に訊いてくる池崎正人に宮前はため息をつく。
「多分おまえんちの親父さんとどっこいなんじゃないかな」
「ははあ」
「タケノコ堀、俺は欠勤したことなかったのに。春休みに強行すりゃ良かったんだ」
「フライングして生えてなかったら馬鹿もいいとこだよね。雨の予報ならともかく」
「うう……」

 テーブル席の方では時間割表とにらめっこした和美がやっぱり唸っている。
「どうしよう。悩むよう」
「履修決めるまでがみんな一苦労っすね」
 苦笑いして正人は自分も履修要綱を取り出す。
「なるべく休みも多くしたいとこだけど」
「勉学第一だよ」
「わかってる」
 釘をさす美登利に正人は口を尖らす。

「なにはともあれ新学期ですね」
 新しく購入する教材本のタイトルにチェックを入れながら、今日子がまとめた。
 季節は廻り、五回目の日々が始まる。
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