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第二十九話 花と落涙

29-5.「隠れていろいろやってるんだよ」

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 美登利はつまらなそうに瞳を眇めて体を離す。
「同情してるのはあなたの方じゃないの」
「慰め合おうよ」
「気持ち悪い」
「知ってるけどね。でも今は本当に一人でいたくないんだ」

 ほんの少し弱い本音を晒してみせれば、彼女は気遣うように瞳を揺らす。優しい子。だから自分みたいな人間に付け込まれる。




 シャワーの後の濡れた髪をそのままにしているのを見て、ドライヤーを持ってきて乾かしてやった。
「案外上手」
「バイトしたことあるしね」
「ほんとに?」
「隠れていろいろやってるんだよ」
「そうでしょうね」
 虫けらを見るような眼でちらりと振り返る。堪らない。

「髪の毛伸ばすの?」
「うん。かんざしが使いたくなった」
「案外乙女だね」
 ドライヤーを止めて手で梳いて軽く整える。後ろから見る白い首筋から鎖骨へのラインが艶めかしい。
 思っていたら彼女がまた振り返る。
「いちいち視線が気持ち悪い」
「ひどいな。ここまで来て」

 言ってやるとあきらめたように体のバスタオルを外す。あまりに潔い動作にびっくりする。
「ねえ、情緒は?」
「情緒でパンツが脱げるかバカヤローって先輩が言ってたよ」
 そうかそうか、萎えさせる作戦だな。そう理解して達彦はのそっと動く。そっちがそうならこっちもそれに合わせるのみだ。

 ベッドの上にぺたんと座っている彼女の足首を掴んで引っ張った。うまく受け身を取るだろうからそれはもう思いきり潔く。
 ぼてっと一度上半身を投げ出して彼女はすぐに跳ね起きようとする。それを足を開かせることで制して彼は身を屈める。柔らかいところを両手で開いて舌を這わせる。
「ちょっと……」
 突然のことに非難の声をあげた彼女だったがすぐに黙る。分が悪いことを悟ったのだろう。

 最初は固く閉まっていたそこも二度三度と舐めまわすと緩んできた。そんな反応とは反対に彼女はぴくりとも体を動かさない。いいけどね。

 入り口を指で撫でながらピンポイントの場所を舌先で攻めるとさすがに足が動いた。中まで指を滑り込ませ裏側からも刺激しながら舌で転がす。息をあげて足先を緊張させながらも彼女は声を漏らさない。意地っ張りめ。

 腰が浮くのを堪えていても足が震えている。もうイキそうなのが丸わかりでカワイイ。余計なフェイントをかけて気を散らすのも可哀想だから同じ刺激で攻めてあげる。
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