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第二十七話 女の顔
27-4.「どうよ!!」
しおりを挟む「まあったく、久々に懐かしい名前を聞いたと思ったら。私を頼ってくるなんてかわいいじゃないの」
大学に通いながら美容の勉強もしているという岩下百合香は、自慢のメイクアップボックスを持ってロータスにやって来た。
「さてさてみどちゃん、どんなふうになりたい? あなたの顔ならなんだって思うがままよ」
「一生日陰で生きていきたい……」
違うだろ、と突っ込むのも憐れで船岡和美は美登利のことは見て見ぬふりをする。
「あのですね、ぱっと見正体がバレないくらいに派手に完膚なきまでに、お願い致します」
「思い切りやっていいってことね!」
「そりゃあもうデンジャラスに!」
ギラギラ瞳を輝かせて百合香は舌舐めずりする。
「じゃあもうウィッグもブロンドにしちゃったり!」
「いいですねえ」
どんどんエスカレートしていく二人の会話に今日子は眉根を寄せる。ぐったり伏せている美登利はもう口を挟む元気もないようだ。
そうしてハロウィン当日、衣装やかつらを揃えて百合香は再びやって来た。打ち合わせのときと違って真剣な表情でメイクを施していく。
眉毛は吊り上げ気味、シャドウはダークにしてアイラインを強調する。くちびるは厚く輪郭を取って本人のものよりぽってりさせる。
「つけ睫毛はいらないわね」
つぶやいて黒いマスカラを三度塗りした。
もう肌寒い季節だからケープの付いた衣装を選んでくれたものの胸元が露出する作りに今日子が顔をしかめる。
「谷間とくびれを見せつけないでどうするの!」
ものすごい形相で罵倒され、さすがの今日子も引き下がる。
背中に編み上げがあるビスチェ風なトップスに後ろが長く前が短いオーガンジーのスカート。差し色で縦にフリルが入っている。くびれや脚線美に自信がなければ着れないことは確かだ。これにヒールの高いT字ストラップのサンダルを合わせる。
仕上げに、ゆるい巻き毛のブロンドのウィッグと、スカートとお揃いのリボンがゴージャスに垂れ下がったとんがり帽子を被せる。
「どうよ!!」
会心の笑みを浮かべる百合香の後ろで、和美と今日子は顎が外れる思いだった。
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