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第二十一話 風雲
21-3.ヒドクない?
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特に張り上げた声でもなかったが、芦川は再び動きを止める。
「ケンカしたらキツくお仕置きされるんでしょ。元セレクトの芦川さん」
腰に手を当て仁王立ちした美登利の後ろにはセレクトのリーダー金指がいた。だよね? と確認を取る美登利に金指はこくこく頷く。
「はねっかえり集団のセレクトの中でも悪さがすぎて追い出されて? ばかりか今でも上部組織の監督役にお世話になってるそうだね。どんだけ悪たれなのさ」
「どういうこと? なんでそいつが一緒にいるの?」
ちらっと金指を振り返って美登利はにやりと笑う。
「ちょっと縁があってね。こいつもこってりお仕置きされたんだよ。ねえ、金指クン?」
金指は舌打ちを堪えて苦い顔をする。
「芦川さん、そいつは元櫻花総長の宮前っすよ」
「櫻花連合……志岐琢磨か」
芦川の顔も苦くなる。
「こいつら志岐の秘蔵っ子なんだ。手出しはやめたほうがいい」
だらんと構えを解いて芦川は宮前と今日子、そして美登利を順々に見回した。
「どうりで、ただもんじゃないと思ったわけだ」
ふうっと息を吐き出した後には、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「なんかヒドクない? オレはただ美登利ちゃんの顔が見たかっただけなのに、志岐琢磨まで引っ張り出して脅しかけるなんてさ」
美登利は無言でつかつかと芦川に歩み寄った。文字通り向う脛を蹴り飛ばす。
「ちょっ……」
堪らず崩れた芦川の胸倉を掴み、もう片方の手で無造作に帽子を取る。
あ、と声をあげそうになって今日子は口を押える。芦川は惚けた顔をして美登利を見上げている。
「これで満足?」
「……」
「二度とまとわりついてこないで。私は目立たずすごしたいの。あなたははっきり言って目障りなんだよ。これだけしてもわからないなら今度こそ直接痛い目にあってもらう。脅しじゃないよ、私はやると言ったらやる。……いいね?」
投げ捨てるように手を離して美登利は帽子を被り直した。
「行こう」
「はい」
今日子はこくりと頷き、宮前は無言のまま後に続く。
取り残された芦川は床に座ったまま目と口を開いたままだ。
「ケンカしたらキツくお仕置きされるんでしょ。元セレクトの芦川さん」
腰に手を当て仁王立ちした美登利の後ろにはセレクトのリーダー金指がいた。だよね? と確認を取る美登利に金指はこくこく頷く。
「はねっかえり集団のセレクトの中でも悪さがすぎて追い出されて? ばかりか今でも上部組織の監督役にお世話になってるそうだね。どんだけ悪たれなのさ」
「どういうこと? なんでそいつが一緒にいるの?」
ちらっと金指を振り返って美登利はにやりと笑う。
「ちょっと縁があってね。こいつもこってりお仕置きされたんだよ。ねえ、金指クン?」
金指は舌打ちを堪えて苦い顔をする。
「芦川さん、そいつは元櫻花総長の宮前っすよ」
「櫻花連合……志岐琢磨か」
芦川の顔も苦くなる。
「こいつら志岐の秘蔵っ子なんだ。手出しはやめたほうがいい」
だらんと構えを解いて芦川は宮前と今日子、そして美登利を順々に見回した。
「どうりで、ただもんじゃないと思ったわけだ」
ふうっと息を吐き出した後には、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「なんかヒドクない? オレはただ美登利ちゃんの顔が見たかっただけなのに、志岐琢磨まで引っ張り出して脅しかけるなんてさ」
美登利は無言でつかつかと芦川に歩み寄った。文字通り向う脛を蹴り飛ばす。
「ちょっ……」
堪らず崩れた芦川の胸倉を掴み、もう片方の手で無造作に帽子を取る。
あ、と声をあげそうになって今日子は口を押える。芦川は惚けた顔をして美登利を見上げている。
「これで満足?」
「……」
「二度とまとわりついてこないで。私は目立たずすごしたいの。あなたははっきり言って目障りなんだよ。これだけしてもわからないなら今度こそ直接痛い目にあってもらう。脅しじゃないよ、私はやると言ったらやる。……いいね?」
投げ捨てるように手を離して美登利は帽子を被り直した。
「行こう」
「はい」
今日子はこくりと頷き、宮前は無言のまま後に続く。
取り残された芦川は床に座ったまま目と口を開いたままだ。
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