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第十九話 春に眠る
19-4.気にしすぎ
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「おすすめプランとやらを見せられたけど気に入らない。かと言って花のことなんかわからないし。協力してくれる?」
「園芸に詳しい友だちに相談してみます」
了解をもらって写真を撮りながら訊いてみる。
「どんなイメージが良いかだけでもありません? 森林の中とかお花畑な感じとか。可愛らしくがいいとか、癒される感じがいいとか」
「抽象的でいいの?」
「もちろん」
「苦労が多かったと思うから、とにかく静かに眠ってほしい。そうだな、春に包まれる感じで……」
微笑む達彦を物珍しく思って美登利は見つめる。泣き笑いのようにも見えて、無神経かとも思ったが目を逸らさなかった。
「伝わるかな」
にこりと笑って美登利は頷く。
「おかあ様、喜ぶでしょうね」
四季折々の花々が咲き乱れる墓地を想像してみて、なんだか無性に羨ましくなった。そんな場所で眠るのは、どんな心地がするだろう。
「お墓参りのお手伝いをしたとき思ったんだよね。お嫁にいったら知らない人ばかりのお墓に入らなきゃならないでしょう。ちょっと嫌だなって」
「それならここに俺と入る?」
美登利はカメラを構えた格好のまま達彦を振り返る。
「……それって、いろいろ、途中経過を飛ばしてない?」
「だな。忘れてくれ」
本当に珍しい。この人でも雰囲気に流されることがあるのだと驚く。そうでなくとも最近の彼は角が取れすぎなきらいがあって逆に警戒してしまう。
写真を一通り撮り終わり、携帯をしまいながら思っていたらやっぱり斬り込まれた。
「巽は何を考えてる?」
突然尋ねられて美登利は苦笑する。
「いきなりなに?」
「あいつの考えが読めるのは君だけだろ。最近の奴はおかしすぎて俺にはもうお手上げだ。わかってることがあるなら教えてくれ」
「そりゃあ、私もおかしいけれど、だからってお兄ちゃんのこと全部わかってるわけじゃない」
「やめてくれ」
「どうしてそんなに気にするの? 私たちがおかしなところで迷惑かけるわけじゃなし、あなたはお兄ちゃんを気にしすぎ」
「やめてくれ!」
低く吐き捨てて余裕のない目になる彼を美登利は泰然と見据える。
「裁いてるつもりならそれでもいい。だけど俺は不安なんだ。君がいなくなるのだけは耐えられない」
この人は何をどこまでわかっているのかと思った。かつてあれほど自分を傷つけ追い詰めた鋭利さをかなぐり捨てて、何が知りたいというのだろう。それともこれも計算なのだろうか、より優位に立つための伏線なのか。
「園芸に詳しい友だちに相談してみます」
了解をもらって写真を撮りながら訊いてみる。
「どんなイメージが良いかだけでもありません? 森林の中とかお花畑な感じとか。可愛らしくがいいとか、癒される感じがいいとか」
「抽象的でいいの?」
「もちろん」
「苦労が多かったと思うから、とにかく静かに眠ってほしい。そうだな、春に包まれる感じで……」
微笑む達彦を物珍しく思って美登利は見つめる。泣き笑いのようにも見えて、無神経かとも思ったが目を逸らさなかった。
「伝わるかな」
にこりと笑って美登利は頷く。
「おかあ様、喜ぶでしょうね」
四季折々の花々が咲き乱れる墓地を想像してみて、なんだか無性に羨ましくなった。そんな場所で眠るのは、どんな心地がするだろう。
「お墓参りのお手伝いをしたとき思ったんだよね。お嫁にいったら知らない人ばかりのお墓に入らなきゃならないでしょう。ちょっと嫌だなって」
「それならここに俺と入る?」
美登利はカメラを構えた格好のまま達彦を振り返る。
「……それって、いろいろ、途中経過を飛ばしてない?」
「だな。忘れてくれ」
本当に珍しい。この人でも雰囲気に流されることがあるのだと驚く。そうでなくとも最近の彼は角が取れすぎなきらいがあって逆に警戒してしまう。
写真を一通り撮り終わり、携帯をしまいながら思っていたらやっぱり斬り込まれた。
「巽は何を考えてる?」
突然尋ねられて美登利は苦笑する。
「いきなりなに?」
「あいつの考えが読めるのは君だけだろ。最近の奴はおかしすぎて俺にはもうお手上げだ。わかってることがあるなら教えてくれ」
「そりゃあ、私もおかしいけれど、だからってお兄ちゃんのこと全部わかってるわけじゃない」
「やめてくれ」
「どうしてそんなに気にするの? 私たちがおかしなところで迷惑かけるわけじゃなし、あなたはお兄ちゃんを気にしすぎ」
「やめてくれ!」
低く吐き捨てて余裕のない目になる彼を美登利は泰然と見据える。
「裁いてるつもりならそれでもいい。だけど俺は不安なんだ。君がいなくなるのだけは耐えられない」
この人は何をどこまでわかっているのかと思った。かつてあれほど自分を傷つけ追い詰めた鋭利さをかなぐり捨てて、何が知りたいというのだろう。それともこれも計算なのだろうか、より優位に立つための伏線なのか。
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