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第十五話 浮気と毒
15-1.捜さないでください
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今回ばかりはやりすぎだ。そう思える事件が起きてから数日後。
今日こそは引きずってでも誠のところに謝りに行かせる。その覚悟でロータスに入った宮前仁は、当の中川美登利の姿がないことに首を傾げて志岐琢磨に尋ねた。
「来てないっすか?」
琢磨は煙草をくわえて無言のまま顎でくいっとカウンターを示す。宮前がいつも座る定位置にメモが置いてあった。
『キャップ借りていきます。私のことは捜さないでください』
「……なんじゃ、こりゃ。どういう意味っすか」
やっぱり無言で琢磨は肩をすくめる。
とりあえず携帯を取り出して美登利の番号へかけてみる。一向に電話に出ない。
「……なんのつもりだ」
滅茶苦茶なのはいつものことだが、こんなふうに心配させるようなことは彼女はしないはずだ。
「おいおい」
不安になって坂野今日子や船岡和美にも連絡を取ってみたが、誰も特には何も聞いていない。思い切って中川家に行ってみた。
「美登利さんなら錦小路のお嬢様に会いに行くって」
「京都っすか」
「ええ。また一週間くらい旅行してくるって。仁くん聞いてないの? 誠くんが一緒なのよね」
幸絵が尋ねてくるのをなんとかごまかした。さっそく綾小路高次の携帯にかけてみる。
『いや、俺は聞いてないが』
「マジか」
『大体紗綾だったらここにいるぞ。本人に訊いてみるか』
「いや、いい。お嬢さんに余計な心配かけないほうがいいだろう」
『そうだな』
「あいつが来たらすぐに教えてくれ」
『承知した』
あとひとつ、連絡をとるべきところがあったが宮前は気が進まなかった。電話越しにでも恐ろしい。だが意を決して電話をかけた。
『知るわけないだろ』
思った通り不機嫌丸出しの声で一ノ瀬誠は吐き捨てた。
『心配するだけ馬鹿を見るぞ。言ってる間にどうせけろっと現れる』
「そうかもしれんが」
『もう俺は知らない。勝手にしろ』
一方的に通話が切られる。
「おいおい」
いくらご立腹とはいえ、そりゃないだろうに。
立場的に誠の味方のつもりではいるが、宮前も微妙な気持ちではあった。
今日こそは引きずってでも誠のところに謝りに行かせる。その覚悟でロータスに入った宮前仁は、当の中川美登利の姿がないことに首を傾げて志岐琢磨に尋ねた。
「来てないっすか?」
琢磨は煙草をくわえて無言のまま顎でくいっとカウンターを示す。宮前がいつも座る定位置にメモが置いてあった。
『キャップ借りていきます。私のことは捜さないでください』
「……なんじゃ、こりゃ。どういう意味っすか」
やっぱり無言で琢磨は肩をすくめる。
とりあえず携帯を取り出して美登利の番号へかけてみる。一向に電話に出ない。
「……なんのつもりだ」
滅茶苦茶なのはいつものことだが、こんなふうに心配させるようなことは彼女はしないはずだ。
「おいおい」
不安になって坂野今日子や船岡和美にも連絡を取ってみたが、誰も特には何も聞いていない。思い切って中川家に行ってみた。
「美登利さんなら錦小路のお嬢様に会いに行くって」
「京都っすか」
「ええ。また一週間くらい旅行してくるって。仁くん聞いてないの? 誠くんが一緒なのよね」
幸絵が尋ねてくるのをなんとかごまかした。さっそく綾小路高次の携帯にかけてみる。
『いや、俺は聞いてないが』
「マジか」
『大体紗綾だったらここにいるぞ。本人に訊いてみるか』
「いや、いい。お嬢さんに余計な心配かけないほうがいいだろう」
『そうだな』
「あいつが来たらすぐに教えてくれ」
『承知した』
あとひとつ、連絡をとるべきところがあったが宮前は気が進まなかった。電話越しにでも恐ろしい。だが意を決して電話をかけた。
『知るわけないだろ』
思った通り不機嫌丸出しの声で一ノ瀬誠は吐き捨てた。
『心配するだけ馬鹿を見るぞ。言ってる間にどうせけろっと現れる』
「そうかもしれんが」
『もう俺は知らない。勝手にしろ』
一方的に通話が切られる。
「おいおい」
いくらご立腹とはいえ、そりゃないだろうに。
立場的に誠の味方のつもりではいるが、宮前も微妙な気持ちではあった。
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