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第十四話 永遠のくちづけ
14-3.好きだから
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「タクマさんが教えてくれた」
「タクマの奴っ」
「おれが心配だから教えてくれたんだと思う。おれが危なっかしいから」
「今までこんなことなかったのに」
激昂を静めて彼女は正人の顔をじっと見つめる。
「不思議だね」
冷たい指先が彼の頬をなぞる。
「何故だかあなたにはみんながこうやって肩入れするの。誰にも言わない話をしたり、助けてあげたり。とっても不思議……」
「先輩が言わないでよ」
同じように彼女の頬を撫でながら正人は笑う。くちびるを重ねて吸い合った。
全部覚えておきたいと思った。小さな頭の形も、瞼の動きも、目も鼻も口も耳も、白い首筋も。丸い肩も、細い腕も、胸もお腹も腰も足も、そのつま先まで。丹念になぞりながら記憶に刻む。
手のひらを合わせて指を絡ませながら、もう一度体を重ねた。悲しみも切なさも今は感じない。悦びだけが体に溢れてただ愛しかった。
「小さなときはね、あたりまえにお兄ちゃんと結婚するんだって思ってたの」
枕に半分顔を埋めるようにしてうつ伏せに寝そべって彼女は話した。
「結婚ていちばん好きな人とするんだよってお母さんが言ってたから。一番好きなのはお兄ちゃんだったの」
「うん」
「できるわけないのにね。それがわかったとき、言ってしまったの」
――それならまことちゃんとけっこんする!
「ヒドイ言い方だよね。すごく後悔した」
「好きだから?」
正人が言うのに少し驚いたふうにしながら彼女はこっくり頷いた。
「そう、好きだから。お兄ちゃんが好きだけど、誠のことも大好きだった。狡いよね、そんなの」
正人はただ首を振る。
彼女は体を仰向けにして両手を持ちあげた。
「結婚しようねって約束した」
左手の指に見えない指輪を嵌めるような仕草をする。
「私は嘘ばかりついて約束もたくさん破った。でもその約束だけは果たすんだって、いつも、いつも……」
狡いよね、とつぶやく彼女に正人はただ首を振る。
「青陵にあんなに思い入れがあったのも巽さんがつくった学校だから?」
「そうだよ」
――学校をつくるからね。みんなが自分のやりたいことができる学校を。楽しいよ、きっととても。
「私が西城に嫌気がさしてたらそう言って、それまでの我慢だよって。だから……」
彼の眼を見て苦く微笑む。
「自分勝手に思い上がって、みんなに迷惑かけてたよね。あなたにもいっぱい怒られた」
「タクマの奴っ」
「おれが心配だから教えてくれたんだと思う。おれが危なっかしいから」
「今までこんなことなかったのに」
激昂を静めて彼女は正人の顔をじっと見つめる。
「不思議だね」
冷たい指先が彼の頬をなぞる。
「何故だかあなたにはみんながこうやって肩入れするの。誰にも言わない話をしたり、助けてあげたり。とっても不思議……」
「先輩が言わないでよ」
同じように彼女の頬を撫でながら正人は笑う。くちびるを重ねて吸い合った。
全部覚えておきたいと思った。小さな頭の形も、瞼の動きも、目も鼻も口も耳も、白い首筋も。丸い肩も、細い腕も、胸もお腹も腰も足も、そのつま先まで。丹念になぞりながら記憶に刻む。
手のひらを合わせて指を絡ませながら、もう一度体を重ねた。悲しみも切なさも今は感じない。悦びだけが体に溢れてただ愛しかった。
「小さなときはね、あたりまえにお兄ちゃんと結婚するんだって思ってたの」
枕に半分顔を埋めるようにしてうつ伏せに寝そべって彼女は話した。
「結婚ていちばん好きな人とするんだよってお母さんが言ってたから。一番好きなのはお兄ちゃんだったの」
「うん」
「できるわけないのにね。それがわかったとき、言ってしまったの」
――それならまことちゃんとけっこんする!
「ヒドイ言い方だよね。すごく後悔した」
「好きだから?」
正人が言うのに少し驚いたふうにしながら彼女はこっくり頷いた。
「そう、好きだから。お兄ちゃんが好きだけど、誠のことも大好きだった。狡いよね、そんなの」
正人はただ首を振る。
彼女は体を仰向けにして両手を持ちあげた。
「結婚しようねって約束した」
左手の指に見えない指輪を嵌めるような仕草をする。
「私は嘘ばかりついて約束もたくさん破った。でもその約束だけは果たすんだって、いつも、いつも……」
狡いよね、とつぶやく彼女に正人はただ首を振る。
「青陵にあんなに思い入れがあったのも巽さんがつくった学校だから?」
「そうだよ」
――学校をつくるからね。みんなが自分のやりたいことができる学校を。楽しいよ、きっととても。
「私が西城に嫌気がさしてたらそう言って、それまでの我慢だよって。だから……」
彼の眼を見て苦く微笑む。
「自分勝手に思い上がって、みんなに迷惑かけてたよね。あなたにもいっぱい怒られた」
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