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第十一話 魔物な夜

11-3.行進

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「先輩……なんすか、それ」
「見ての通り引率の魔女っ子先生だよ」
 邪魔するな、と正人の首根っこを押さえながら和美が言う。
「ちょっ、へんな男に引っかからないでよ、先輩!」
「池崎くんは予備校があるでしょう。早く行ったらどうですか」
「後でまた来るから! どっか行っちゃわないでよ」

 はいはい、と意気揚々と行進を開始する。
 やや寂れたアーケード商店街を抜けて大通りに出る。かわいらしく仮装した子どもたちは注目を浴びてはしゃいでいる。
 他にも派手な仮装をして歩いている若者のグループがちらほらいて美登利はほっとした。

 進行表にそって順調に店々を回っていく。用意した袋がいっぱいになってきて子どもたちは嬉しそう。
「お家に着くまで大事に持つんだよ」
 最後の目的地の駅前のケーキ店で焼き菓子が詰まったバスケットを貰って、美登利もご満悦だ。
「よかったね、おねえさん」

 人や車が多い大通りを抜けて、歩行者天国の商店街へと戻った。真ん中にはあの巨大カボチャ。
「大きいねえ」
「給食のカボチャポタージュが何人分つくれるかな?」
 子どもたちの会話を微笑ましく聞きながら美登利は少年に尋ねる。
「学校に戻るんだよね」
「うん、すぐそこだもの。もうここで大丈夫だよ」
「そう?」
「おねえさん、ありがとうございました」
 ぺこりと子どもたちにお礼を言われて悪い気はしない。

「このお洋服は洗っておくから、今度お店に取りに来てくれる?」
「わかったよ。今日はありがとう、おねえさん」
 少年に手を振り、子どもたちが信号を渡っていくのを見届ける。横道に入れば真正面が小学校だから大丈夫だろう。

 自分も早く戻って着替えがしたい。くるりと方向転換した瞬間、向こうから歩いてくる村上達彦が見えた。
 絶対にこの姿を見られたくない。やむなく美登利は巨大カボチャの方に戻った。
 するとそちらではビデオカメラを中心に何かの撮影が始まっていた。

 行き場に困ってやむなく書店のビルに飛び込む。文芸書が並ぶ棚の間をすり抜けて別の出口の方にまわる。
 人目を避けて裏道に飛び出したはいいが、今度は小暮綾香と須藤恵が歩いて来るのが見えた。
 綾香にだってこんな姿は見られたくない。美登利はとっさにビルとビルの隙間の室外機の向こうに飛び込んだ。バスケットを抱えて室外機の陰で丸くなる。
 どうにかやりすごすことができた。
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