59 / 324
第十一話 魔物な夜
11-3.行進
しおりを挟む
「先輩……なんすか、それ」
「見ての通り引率の魔女っ子先生だよ」
邪魔するな、と正人の首根っこを押さえながら和美が言う。
「ちょっ、へんな男に引っかからないでよ、先輩!」
「池崎くんは予備校があるでしょう。早く行ったらどうですか」
「後でまた来るから! どっか行っちゃわないでよ」
はいはい、と意気揚々と行進を開始する。
やや寂れたアーケード商店街を抜けて大通りに出る。かわいらしく仮装した子どもたちは注目を浴びてはしゃいでいる。
他にも派手な仮装をして歩いている若者のグループがちらほらいて美登利はほっとした。
進行表にそって順調に店々を回っていく。用意した袋がいっぱいになってきて子どもたちは嬉しそう。
「お家に着くまで大事に持つんだよ」
最後の目的地の駅前のケーキ店で焼き菓子が詰まったバスケットを貰って、美登利もご満悦だ。
「よかったね、おねえさん」
人や車が多い大通りを抜けて、歩行者天国の商店街へと戻った。真ん中にはあの巨大カボチャ。
「大きいねえ」
「給食のカボチャポタージュが何人分つくれるかな?」
子どもたちの会話を微笑ましく聞きながら美登利は少年に尋ねる。
「学校に戻るんだよね」
「うん、すぐそこだもの。もうここで大丈夫だよ」
「そう?」
「おねえさん、ありがとうございました」
ぺこりと子どもたちにお礼を言われて悪い気はしない。
「このお洋服は洗っておくから、今度お店に取りに来てくれる?」
「わかったよ。今日はありがとう、おねえさん」
少年に手を振り、子どもたちが信号を渡っていくのを見届ける。横道に入れば真正面が小学校だから大丈夫だろう。
自分も早く戻って着替えがしたい。くるりと方向転換した瞬間、向こうから歩いてくる村上達彦が見えた。
絶対にこの姿を見られたくない。やむなく美登利は巨大カボチャの方に戻った。
するとそちらではビデオカメラを中心に何かの撮影が始まっていた。
行き場に困ってやむなく書店のビルに飛び込む。文芸書が並ぶ棚の間をすり抜けて別の出口の方にまわる。
人目を避けて裏道に飛び出したはいいが、今度は小暮綾香と須藤恵が歩いて来るのが見えた。
綾香にだってこんな姿は見られたくない。美登利はとっさにビルとビルの隙間の室外機の向こうに飛び込んだ。バスケットを抱えて室外機の陰で丸くなる。
どうにかやりすごすことができた。
「見ての通り引率の魔女っ子先生だよ」
邪魔するな、と正人の首根っこを押さえながら和美が言う。
「ちょっ、へんな男に引っかからないでよ、先輩!」
「池崎くんは予備校があるでしょう。早く行ったらどうですか」
「後でまた来るから! どっか行っちゃわないでよ」
はいはい、と意気揚々と行進を開始する。
やや寂れたアーケード商店街を抜けて大通りに出る。かわいらしく仮装した子どもたちは注目を浴びてはしゃいでいる。
他にも派手な仮装をして歩いている若者のグループがちらほらいて美登利はほっとした。
進行表にそって順調に店々を回っていく。用意した袋がいっぱいになってきて子どもたちは嬉しそう。
「お家に着くまで大事に持つんだよ」
最後の目的地の駅前のケーキ店で焼き菓子が詰まったバスケットを貰って、美登利もご満悦だ。
「よかったね、おねえさん」
人や車が多い大通りを抜けて、歩行者天国の商店街へと戻った。真ん中にはあの巨大カボチャ。
「大きいねえ」
「給食のカボチャポタージュが何人分つくれるかな?」
子どもたちの会話を微笑ましく聞きながら美登利は少年に尋ねる。
「学校に戻るんだよね」
「うん、すぐそこだもの。もうここで大丈夫だよ」
「そう?」
「おねえさん、ありがとうございました」
ぺこりと子どもたちにお礼を言われて悪い気はしない。
「このお洋服は洗っておくから、今度お店に取りに来てくれる?」
「わかったよ。今日はありがとう、おねえさん」
少年に手を振り、子どもたちが信号を渡っていくのを見届ける。横道に入れば真正面が小学校だから大丈夫だろう。
自分も早く戻って着替えがしたい。くるりと方向転換した瞬間、向こうから歩いてくる村上達彦が見えた。
絶対にこの姿を見られたくない。やむなく美登利は巨大カボチャの方に戻った。
するとそちらではビデオカメラを中心に何かの撮影が始まっていた。
行き場に困ってやむなく書店のビルに飛び込む。文芸書が並ぶ棚の間をすり抜けて別の出口の方にまわる。
人目を避けて裏道に飛び出したはいいが、今度は小暮綾香と須藤恵が歩いて来るのが見えた。
綾香にだってこんな姿は見られたくない。美登利はとっさにビルとビルの隙間の室外機の向こうに飛び込んだ。バスケットを抱えて室外機の陰で丸くなる。
どうにかやりすごすことができた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ミックスド★バス~湯けむりマッサージは至福のとき
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
温子の疲れを癒そうと、水川が温泉旅行を提案。温泉地での水川からのマッサージに、温子は身も心も蕩けて……❤︎
ミックスド★バスの第4弾です。
【R18】どうか、私を愛してください。
かのん
恋愛
「もうやめて。許してッ…」「俺に言うんじゃなくて兄さんに言ったら?もう弟とヤリたくないって…」
ずっと好きだった人と結婚した。
結婚して5年幸せな毎日だったのに――
子供だけができなかった。
「今日から弟とこの部屋で寝てくれ。」
大好きな人に言われて
子供のため、跡取りのため、そう思って抱かれていたはずなのに――
心は主人が好き、でもカラダは誰を求めてしまっているの…?
【完結*R-18】あいたいひと。
瑛瑠
恋愛
あのひとの声がすると、ドキドキして、
あのひとの足音、わかるようになって
あのひとが来ると、嬉しかった。
すごく好きだった。
でも。なにもできなかった。
あの頃、好きで好きでたまらなかった、ひと。
突然届いた招待状。
10年ぶりの再会。
握りしめたぐしゃぐしゃのレシート。
青いネクタイ。
もう、あの時のような後悔はしたくない。
また会いたい。
それを望むことを許してもらえなくても。
ーーーーー
R-18に ※マークつけてますのでご注意ください。
婚約破棄を突きつけに行ったら犬猿の仲の婚約者が私でオナニーしてた
Adria
恋愛
最近喧嘩ばかりな婚約者が、高級ホテルの入り口で見知らぬ女性と楽しそうに話して中に入っていった。それを見た私は彼との婚約を破棄して別れることを決意し、彼の家に乗り込む。でもそこで見たのは、切なそうに私の名前を呼びながらオナニーしている彼だった。
イラスト:樹史桜様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる