34 / 324
第七話 東奔西走
7-1.夏祭り
しおりを挟む
「じゃあほんとに電車で来たの?」
「うん。七時間かかった。けど案外平気だったね。寝て起きたら着いてた感じ」
「そうだな」
「乗換六回は忙しかったけど」
目を丸くしている錦小路紗綾嬢の隣で綾小路高次は頭を抱えている。
(このバカップルが)
「学生らしくていいでしょ」
「そうねえ。私はやらないけど」
それはお抱え運転手に突然高速を五時間走らせたりするお嬢様は、電車に乗ったりしないだろう。
京都は円山公園、超有名料理店の超有名料理をいただきながら、中川美登利と錦小路紗綾は途切れることなく話し続けている。久々に会ったのだから仕方ない。婚約者の楽しそうな様子に相好を崩しながら綾小路も一ノ瀬誠と近況報告と情報交換をする。
「美登利はこの後どこに行きたい?」
「連れてってもらえるなら高雄がいいな」
「時期じゃないのに。貴船のほうが良くない?」
「ううん、高雄がいい。紅葉も素敵だけど夏の緑のレース模様も好きなんだ」
「……そうね。神護寺でかわらけ投げをしましょう」
「しようしよう」
女性陣がさくさく決めていくのに男は付き従うのみである。
「平和だな」
「ああ」
それから北陸の方までぐるりと回り、行き当たりばったりで帰り着いたころには商店街は夏祭り一色になっていた。
「おまえがいない間、ええかげん客が来なかったぜ」
顔をしかめて琢磨の不味いコーヒーをすすりながら宮前が愚痴る。
「まあまあ。ほら、お土産」
「おまえこれ、いやげものだろう。どこ飾れってんだ」
「自室のデスクに鎮座ましましてるといい感じじゃない?」
「てめえ、お返し期待してろよ」
坂野今日子と船岡和美には某人気店のあぶらとり紙を渡しながら美登利は肩をすくめる。
外から戻ってきた志岐琢磨が困ったふうに美登利に言った。
「今年はうちにも出店出せってんだがどうしたものか」
「店先で何か売ればいいんでしょう? アイスコーヒーなんかガンガン出るんじゃない?」
「この通りだってそうとう人が通るぞ、おまえに売り子はできんだろうが。俺だと客が寄ってこないし」
「あー」
「うん。七時間かかった。けど案外平気だったね。寝て起きたら着いてた感じ」
「そうだな」
「乗換六回は忙しかったけど」
目を丸くしている錦小路紗綾嬢の隣で綾小路高次は頭を抱えている。
(このバカップルが)
「学生らしくていいでしょ」
「そうねえ。私はやらないけど」
それはお抱え運転手に突然高速を五時間走らせたりするお嬢様は、電車に乗ったりしないだろう。
京都は円山公園、超有名料理店の超有名料理をいただきながら、中川美登利と錦小路紗綾は途切れることなく話し続けている。久々に会ったのだから仕方ない。婚約者の楽しそうな様子に相好を崩しながら綾小路も一ノ瀬誠と近況報告と情報交換をする。
「美登利はこの後どこに行きたい?」
「連れてってもらえるなら高雄がいいな」
「時期じゃないのに。貴船のほうが良くない?」
「ううん、高雄がいい。紅葉も素敵だけど夏の緑のレース模様も好きなんだ」
「……そうね。神護寺でかわらけ投げをしましょう」
「しようしよう」
女性陣がさくさく決めていくのに男は付き従うのみである。
「平和だな」
「ああ」
それから北陸の方までぐるりと回り、行き当たりばったりで帰り着いたころには商店街は夏祭り一色になっていた。
「おまえがいない間、ええかげん客が来なかったぜ」
顔をしかめて琢磨の不味いコーヒーをすすりながら宮前が愚痴る。
「まあまあ。ほら、お土産」
「おまえこれ、いやげものだろう。どこ飾れってんだ」
「自室のデスクに鎮座ましましてるといい感じじゃない?」
「てめえ、お返し期待してろよ」
坂野今日子と船岡和美には某人気店のあぶらとり紙を渡しながら美登利は肩をすくめる。
外から戻ってきた志岐琢磨が困ったふうに美登利に言った。
「今年はうちにも出店出せってんだがどうしたものか」
「店先で何か売ればいいんでしょう? アイスコーヒーなんかガンガン出るんじゃない?」
「この通りだってそうとう人が通るぞ、おまえに売り子はできんだろうが。俺だと客が寄ってこないし」
「あー」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる