上 下
19 / 324
第四話 幼き約束

4-4.どこかの誰か

しおりを挟む
 スタートの合図が上るまで各々ルートマップの確認をする。
 五つのコースの中からルートをひとつ選んでポイントでヒントを集め、最後に示された場所に行ってパスワードを確認してゴールする、というのが大会の趣旨だ。

 各コースによって商店からポイントで提供されるグッズや飲食に違いがあって、それを目当てにコースを決めるのが普通であるらしいが、
「ボクは赤、とにかく赤だ」
「わたしは青がいい」
 幼い二人はルート表示の配色で決めてしまう。
「まあ、なんでもいいけど」

 合図と同時に参加者がイベント広場を出発する。子どもたちふたりは先を争うようにそれぞれの方向に走り出す。
「ちょと待てって、危ない」
「じゃあね、池崎くん」
 美登利は自分も軽快に走り出して少年の後を追う。
 負けるもんか、と正人も少女の後に続いた。




 対岸が賑やかだと思ったら何かイベントがあるらしい。うるさいなと思いながら新聞を抱えて河原道を歩く。
 橋を渡って反対側のたもとまでくると、遊歩道を走っている女性と少年の後ろ姿が見えた。ベンチのある場所で立ち止まり隣に置いてある謎のオブジェを見回している。

 親子だろうか、最近のママさんはスタイルがいい、と思わず二度見して気がついた。
 異様に姿勢の良い立ち姿。あの子しかいないではないか。

 オブジェをさんざん見まわした後、何か気づいた様子で彼女がベンチの方に屈みこんだ。サンバイザーを取って少年に預け、手と膝をついてベンチの下を覗き込む。
 なんて良い眺め。じろじろ体の線を見ていたら、サンバイザーを持った少年が近づいてきた。
「おじさん、なに? 見ないでよ」
 なんつった今。舌打ちしそうになっていたら、彼女が声をあげた。
「あったよ、『堀』だって」

 そこで達彦に気づいて目を細める。
「どうりで……。村上さんでしたか」
 虫けらを見るような目つき。視線に気づいていたらしい。
「おねえさん、この人変態だよ。気をつけて」
「知ってる」
 美登利は少年からサンバイザーを受け取って被り直す。

「何やってるの?」
「ウォークラリーですよ」
「おねえさん早く行こう。ヒントはあと一個だよ」
「はいはい」
「待てって」

 行ってしまおうするのを引き留めて低く吐き出す。
「なんだ、あのガキ。冷めた眼といい、口振りといい、どこかの誰かを思い出すんだが」
「そうですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを

白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。 「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。 しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...