ユウとリナの四日間

奈月沙耶

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 薄い布団をよっつに折って隅に寄せたおにいさんは、昨日と同じようにパンを取り出した。リナは昨日と同じクリームパンと牛乳をもらう。食べ終わると、おにいさんはおもむろによいしょと、布団をベランダに干し始めた。スペースがないから仕方ないのか、薄い毛布も重ねて一緒に干す。押し入れからビニール紐を引っ張り出して、手すりの間を潜らせて布団をしばる。布団ばさみがないからこうするのだとリナは感心する。
 そうこうしていたら洗濯機の音が止まって、おにいさんは脱水を始める。脱水機が回ってる間にベランダの角ハンガーを持ってきて、洗面台の前の通路みたいになってる部分と台所の間に付いてるカーテンレールにひょいとひっかけた。脱水の終わった洗濯物を取り出しながら角ハンガーにぶら下げていく。そしてバスタオルとズボンと、白い上着とズボンの上下を持って行ってベランダのロープに干す。昨日自分がきていたTシャツとリナが着ていたTシャツはハンガーにひっかけてベランダのみっつの穴のフックに干す。角ハンガーの洗濯物も反対側のフックに吊るす。あっという間に洗濯が終わった。
 休む間もなく、おにいさんは押し入れからリュックを出してなにやら支度を始める。冷蔵庫から出した飲み物や食べ物が入っているらしいビニール袋、それからタオルなんかもリュックに入れる。なにが始まるのだろう。見つめるリナに向かって「おでかけしよう」とおにいさんは楽しそうに笑った。

 部屋を出てアパートの階段を下り、おにいさんは右手へ坂道を上がって行く。リュックを背負った後ろ姿を見つめてリナは戸惑う。この数日でアパートを離れるのは初めてだ。なんだか怖い。だけど足は自然におにいさんを追いかけていた。
 おにいさんは散歩の足取りで坂道の道路をゆっくり上がって行く。歩いてみるとけっこうキツイ。道路は更に右側にカーブをつけて続いていた。木々のこずえが影を差す車道の端をゆっくりと歩く。カーブミラーにお兄さんとリナが前後になって歩く姿が縦長に映ったとき、リナはとってもヘンな気分になった。なんだがとってもヘンだ。
 道路は今度は左にカーブしていく。その舗装された道とは別に、さらに右手に入って行ける小道が木々の奥に続いていた。おにいさんは迷うことなくそっちの小道に踏み込んでいく。後に続くリナはちょっとおっかなびっくりだ。そんなリナをおにいさんが気遣うように振り返る。それに励まされてリナはおにいさんについて行く。
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