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第23話 画策する男
23-1.クリスマス前
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「へえええ、そんなことがあったのか」
むしゃむしゃとケールを食べながら絵美はむーっと顔をしかめている。ケールって苦いもんね。
サラダの小皿を脇にどけてハーブチキンのお皿を引き寄せながら絵美は続けた。
「そんで理沙はシングルになって張り切ってると」
そうなのだ。今度は結婚を見据えた真面目なお付き合いをする、とさっそく静香と婚活パーティーに行く約束をしたらしい。
絵美のカレシのジュンヤくんは元々ユウタくんとコウジと同じグループだったし、詳細を伝えておいた方が良いかと思ったのだけど、絵美曰くそもそもジュンヤくんはコウジのことなんかまったく意に介していないらしかった。
しょーもない男だよな、コウジ。どっかで改心して、導いてもらえればいいのだろうけど。
「いや~、ああいうのは死ぬまで治らないんじゃないの?」
「そーだね」
野菜ジュースを飲みながら私もため息をついちゃう。
ああいう我が道を行く男っていうのは、自分が悪いとはまったく思っていないのだから改心しようがないのだよな。
ヤツのことを思い出しそうになって、私はいやいや、とナイフとフォークを手にする。せっかく癒しのハーブガーデンに来て癒しのお料理を堪能しているのだ、集中しなければ。
マダム・ミチコが招待割引券をくれたこのレストランはプチハイソサエティな香りのするご婦人客が多くて、普段は足を向けようとは思わない価格帯のお店だ。クリスマスには頑張ってるカップルで満席になりそうな。
ランチのハーフコースのお料理は、私と絵美からすれば量が少なく感じもしたけど、後でカフェの方へも行ってみようってことで妥協できた。
冬咲きのクレマチスやベゴニアや可愛いお花たちが点在しているガーデンを散歩して「平和だねぇ」なんてまったりしてからカフェで休憩。
それから鉢植えを売っている売店へと移動した。
私はベイ・ベリーの店頭に並べる鉢植えをいくつか見繕って届けてもらおうと真剣に選ぶ。絵美は、新婚家庭に持って行ってあげようか、と面白がっていて、それはフツウにアリだよね、と私が真顔で返すと、それじゃツマラナイじゃんと口を尖らせていた。
「あたしは鉢植えより花束だなあ」
「もうすぐクリスマスじゃん。フツウにもらえそうじゃない?」
「今年はジュンヤに何をあげようかな」
そういや、今絵美が肩からかけている某ブランドのミニショルダーはジュンヤくんからのクリスマスプレゼントなんだよね、去年の。ちきしょう、羨ましくなんかないやい。
「そういえばさ……」
帰りのクルマの中で、絵美が小さな声でつぶやいた。
「こないだ、指輪のサイズ確認された」
「マジで!?」
運転しながらめっちゃデカい声を出してしまった。だって、だってねえ。
「ありえると思う?」
「ありえる!!」
「だよねー」
絵美はどことなく困ったふうだ。なんで?? 嬉しくないのかな。
「ジュンヤって、けっこう流されやすいからさ。キョウスケさんの影響受けてるのかなって」
「別にいいじゃん。結婚ラッシュの波ってそういうもんでしょ。起こしてよ、ビッグウェーブを」
「……いいと思う?」
「いいと思う!」
つうか、ジュンヤを絶対手放すなよ、と私は主張しておいた。あの子は絵美に合ってるし、いい子だと思うもの。
むしゃむしゃとケールを食べながら絵美はむーっと顔をしかめている。ケールって苦いもんね。
サラダの小皿を脇にどけてハーブチキンのお皿を引き寄せながら絵美は続けた。
「そんで理沙はシングルになって張り切ってると」
そうなのだ。今度は結婚を見据えた真面目なお付き合いをする、とさっそく静香と婚活パーティーに行く約束をしたらしい。
絵美のカレシのジュンヤくんは元々ユウタくんとコウジと同じグループだったし、詳細を伝えておいた方が良いかと思ったのだけど、絵美曰くそもそもジュンヤくんはコウジのことなんかまったく意に介していないらしかった。
しょーもない男だよな、コウジ。どっかで改心して、導いてもらえればいいのだろうけど。
「いや~、ああいうのは死ぬまで治らないんじゃないの?」
「そーだね」
野菜ジュースを飲みながら私もため息をついちゃう。
ああいう我が道を行く男っていうのは、自分が悪いとはまったく思っていないのだから改心しようがないのだよな。
ヤツのことを思い出しそうになって、私はいやいや、とナイフとフォークを手にする。せっかく癒しのハーブガーデンに来て癒しのお料理を堪能しているのだ、集中しなければ。
マダム・ミチコが招待割引券をくれたこのレストランはプチハイソサエティな香りのするご婦人客が多くて、普段は足を向けようとは思わない価格帯のお店だ。クリスマスには頑張ってるカップルで満席になりそうな。
ランチのハーフコースのお料理は、私と絵美からすれば量が少なく感じもしたけど、後でカフェの方へも行ってみようってことで妥協できた。
冬咲きのクレマチスやベゴニアや可愛いお花たちが点在しているガーデンを散歩して「平和だねぇ」なんてまったりしてからカフェで休憩。
それから鉢植えを売っている売店へと移動した。
私はベイ・ベリーの店頭に並べる鉢植えをいくつか見繕って届けてもらおうと真剣に選ぶ。絵美は、新婚家庭に持って行ってあげようか、と面白がっていて、それはフツウにアリだよね、と私が真顔で返すと、それじゃツマラナイじゃんと口を尖らせていた。
「あたしは鉢植えより花束だなあ」
「もうすぐクリスマスじゃん。フツウにもらえそうじゃない?」
「今年はジュンヤに何をあげようかな」
そういや、今絵美が肩からかけている某ブランドのミニショルダーはジュンヤくんからのクリスマスプレゼントなんだよね、去年の。ちきしょう、羨ましくなんかないやい。
「そういえばさ……」
帰りのクルマの中で、絵美が小さな声でつぶやいた。
「こないだ、指輪のサイズ確認された」
「マジで!?」
運転しながらめっちゃデカい声を出してしまった。だって、だってねえ。
「ありえると思う?」
「ありえる!!」
「だよねー」
絵美はどことなく困ったふうだ。なんで?? 嬉しくないのかな。
「ジュンヤって、けっこう流されやすいからさ。キョウスケさんの影響受けてるのかなって」
「別にいいじゃん。結婚ラッシュの波ってそういうもんでしょ。起こしてよ、ビッグウェーブを」
「……いいと思う?」
「いいと思う!」
つうか、ジュンヤを絶対手放すなよ、と私は主張しておいた。あの子は絵美に合ってるし、いい子だと思うもの。
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