103 / 103
おまけ4 男の体裁
3.タイプの違い
しおりを挟む
いつものように弟の部屋に遊びに来ていたタケルに、いつものようにお茶を出し、いつものように世間話をしていたところだった。ちなみに当の美紀の弟は、テレビの前でヘッドホンをつけてシューティングゲームに興じている。
「だってさ、カノジョを友だちに紹介しない男は微妙って言うじゃん。二股かけてたり浮気したり。そうでなくとも、友人に紹介するのが恥ずかしいようなカノジョなのかよって感じじゃん」
「親には会わせたんでしょう。そっちのがよっぽどリキ入ってますよ」
「親と友だちは違うじゃん」
ムキになって美紀は反論する。
「タイプの違いもありますよ」
思わず触りたくなるようなすべすべの頬にまた笑みを浮かべ、タケルはカップとソーサーをテーブルに置く。
「彼女を見せびらかして喜ぶタイプか、そういうのをカッコ悪いと思うのか。彼女の前でデレデレしてる顔を見られるのは恥ずかしいって奴、けっこう多いと思いますよ」
言われて美紀は、高校時代のことを思い出す。由梨の手作り弁当を突き返したバスケ部の男子。思い出しただけでムカムカする。
「聞いた感じ、お友だちの彼氏さんは、お友だちを尊重してくれてるのじゃないですか? 大人なんだと思いますよ」
まるで勝手に腹を立ててる自分がコドモみたいな言い方じゃないか。思いつつ、美紀はつぶやきを落としてしまう。
「お弁当……」
「え?」
「付き合い始めたばかりのカノジョに、お弁当を作ってもらったら、タケルくんは、みんなの前でちゃんと食べる?」
きょとんとして迷う様子もなくタケルは頷く。
「当たり前じゃないですか」
「そ、そうだよね」
彼の返事に満足する美紀に向かって、タケルはにっこりと微笑む。
「お姉さんが作ってくれたお弁当なら、僕は見せびらかしまくって食べますよ」
「……っ」
からかわれた。頬が熱くなって美紀は慌てて立ち上がる。膝が弟の背中にあたる。
「いてーよ、ねーちゃん」
「じゃまッ」
蹴り飛ばす勢いで弟の部屋を出る。ドアが閉まる間際、なんだよーと弟がぼやく声が聞こえた。
あんな高校生男子にからかわれたりして恥ずかしい。少し腹立たしい気持ちになりながらも階段を下りる美紀の足取りは軽い。そのうち本当に、お弁当なんて作ってしまいそう。
「だってさ、カノジョを友だちに紹介しない男は微妙って言うじゃん。二股かけてたり浮気したり。そうでなくとも、友人に紹介するのが恥ずかしいようなカノジョなのかよって感じじゃん」
「親には会わせたんでしょう。そっちのがよっぽどリキ入ってますよ」
「親と友だちは違うじゃん」
ムキになって美紀は反論する。
「タイプの違いもありますよ」
思わず触りたくなるようなすべすべの頬にまた笑みを浮かべ、タケルはカップとソーサーをテーブルに置く。
「彼女を見せびらかして喜ぶタイプか、そういうのをカッコ悪いと思うのか。彼女の前でデレデレしてる顔を見られるのは恥ずかしいって奴、けっこう多いと思いますよ」
言われて美紀は、高校時代のことを思い出す。由梨の手作り弁当を突き返したバスケ部の男子。思い出しただけでムカムカする。
「聞いた感じ、お友だちの彼氏さんは、お友だちを尊重してくれてるのじゃないですか? 大人なんだと思いますよ」
まるで勝手に腹を立ててる自分がコドモみたいな言い方じゃないか。思いつつ、美紀はつぶやきを落としてしまう。
「お弁当……」
「え?」
「付き合い始めたばかりのカノジョに、お弁当を作ってもらったら、タケルくんは、みんなの前でちゃんと食べる?」
きょとんとして迷う様子もなくタケルは頷く。
「当たり前じゃないですか」
「そ、そうだよね」
彼の返事に満足する美紀に向かって、タケルはにっこりと微笑む。
「お姉さんが作ってくれたお弁当なら、僕は見せびらかしまくって食べますよ」
「……っ」
からかわれた。頬が熱くなって美紀は慌てて立ち上がる。膝が弟の背中にあたる。
「いてーよ、ねーちゃん」
「じゃまッ」
蹴り飛ばす勢いで弟の部屋を出る。ドアが閉まる間際、なんだよーと弟がぼやく声が聞こえた。
あんな高校生男子にからかわれたりして恥ずかしい。少し腹立たしい気持ちになりながらも階段を下りる美紀の足取りは軽い。そのうち本当に、お弁当なんて作ってしまいそう。
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
歩みだした男の娘
かきこき太郎
ライト文芸
男子大学生の君島海人は日々悩んでいた。変わりたい一心で上京してきたにもかかわらず、変わらない生活を送り続けていた。そんなある日、とある動画サイトで見た動画で彼の心に触れるものが生まれる。
それは、女装だった。男である自分が女性のふりをすることに変化ができるとかすかに希望を感じていた。
女装を続けある日、外出女装に出てみた深夜、一人の女子高生と出会う。彼女との出会いは運命なのか、まだわからないが彼女は女装をする人が大好物なのであった。
~巻き込まれ少女は妖怪と暮らす~【天命のまにまに。】
東雲ゆゆいち
ライト文芸
選ばれた七名の一人であるヒロインは、異空間にある偽物の神社で妖怪退治をする事になった。
パートナーとなった狛狐と共に、封印を守る為に戦闘を繰り広げ、敵を仲間にしてゆく。
非日常系日常ラブコメディー。
※両想いまでの道のり長めですがハッピーエンドで終わりますのでご安心ください。
※割りとダークなシリアス要素有り!
※ちょっぴり性的な描写がありますのでご注意ください。
Rain fairy〜雨の妖精〜
久恵立風魔
ライト文芸
地方都市郊外の高校に通う聡はある日一人の少女と出会う。
雨守ツユ。彼女には実体がなく聡にしか見えない。彼女は妖精界から舞い降りた雨の妖精。泣く事で雨を降らす能力を持っていた。
そんな彼女を聡は笑わせようとする。そうしているうちに聡はツユに恋してゆく。
高校生の日常と恋愛をファンタジーを織り交ぜて描く青春ファンタジーラブストーリー。
登場人物
小日向聡 高校二年生。
長身で運動神経が良い。
いわゆるイケメン。
雨守ツユ 雨の妖精。
泣くことで雨を降らす。
悲しい過去を持つ。
浜辺綾夏 聡の同級生で幼馴染。
聡に密かに恋している。
赤塚健太 聡の同級生で幼馴染。
頭脳明晰、いわゆる優等生。
西岡優也 聡の同級生で幼馴染。
心優しい筋肉バカ。
小日向英二 聡の父親。
気象庁に務める。
小日向瑠璃子 聡の母親。
病院の調理師を務める。
小日向美優 聡の妹。
美空晴翔 ツユが過去に出会った高校生。
命を落とす。
火野フレア 炎の妖精。
雨を降らさないツユを戒める。
風上アイレーン 風の妖精。ツユと対立。
晴翔の命を奪う。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
赤髪
碧井永
ミステリー
10年前。父、母、兄を一ヵ月の間に立て続けに亡くした、雲雀史佳(ひばりふみか)。
以来ずっと、家庭のある幸せそうな周囲とその日常に居場所がなくて、人と距離をとって生きてきた。
親ナシということで保証人のない就職活動もうまくいかず、派遣社員として働いていた史佳だが、ある会社の募集に応募したことで、人事部社員に推薦され新しい職を得ることになった。だが新たな職場でも、派遣社員ということで肩身の狭い思いをする。
両親を亡くしたときのトラウマで尖端恐怖症の史佳は、尖った刃物を扱ったことで社内で気を失ってしまう。このとき、かばって怪我をしたのが、史佳を推薦した人事部社員・乃木馨(のぎかおる)だった。
高い社内成績のわりに、とっつきにくいと評判の馨。そんな彼と会話を重ねるうち、赤髪の彼が噂ほど地味でも口数が少ないわけでもないと史佳は知る。馨に支えられた史佳は、派遣社員であっても堂々と仕事ができるようになっていく。
人嫌いの馨の、唯一無二の親友が亡くなった兄・史矢(ふみや)であることがわかり、そこから二人は付き合うようになるのだが。
この二人の恋愛が、互いの両親のからみあった過去を暴きだすきっかけとなり――
番が見つかったら即離婚! 王女は自由な平民に憧れる
灰銀猫
恋愛
王女でありながら貧しい生活を強いられていたエリサ。
突然父王に同盟の証として獣人の国へ嫁げと命じられた。
婚姻相手の王は竜人で番しか愛せない。初対面で開口一番「愛する事はない」と断言。
しかも番が見つかるか、三年経ったら離婚だそう。
しかしエリサは、是非白い結婚&別居婚で!とむしろ大歓迎。
番至上主義の竜人の王と、平民になることを夢見る王女の、無関心から始まる物語。
ご都合主義設定でゆるゆる・展開遅いです。
獣人の設定も自己流です。予めご了承ください。
R15は保険です。
22/3/5 HOTランキング(女性向け)で1位になれました。ありがとうございます。
22/5/20 本編完結、今後は番外編となります。
22/5/28 完結しました。
23/6/11 書籍化の記念に番外編をアップしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる