私とラジオみたいな人

あおかりむん

文字の大きさ
上 下
16 / 29

おそれ【恐(れ)】

しおりを挟む


おそれ【恐(れ)】恐れること。恐れこわがる気持ち。



『今日は何もなければ夕方には帰るよ。君は花の稽古の日だったな。あの先生はどうだい? 続けられそう?』とジャケットを羽織りながら尋ねた肇様の言葉に私は頷きました。肇様は『そう』とだけ言うと衣装棚から帽子を取り出して私に手渡しました。肇様の部屋から出て玄関に向かうと肇様は革靴を履いてその場で待っていた松田さんから鞄を渡され最後に私から帽子を受け取りました。『いってきます』と言う肇様に『いってらっしゃいませ』と声を掛けて私は松田さんと一緒に礼をしました。仕事へ出かける肇様を見送ってから私はお花の稽古の準備を始めました。篠花家の別荘での避暑を終えてから、私の生活には新しい決まり事がいくつかできました。ひとつは朝出かける肇様に帽子をお渡ししてお見送りすること。朝食は必ず一緒にとること。肇様のお母様のご紹介で週に二回お花の稽古へ通うこと。そして、夫婦で寝所を同じにすること。
 『大丈夫? 痛い?』耳元で聞こえる囁きに身体を震わせながら首を横に振りました。足の間に指を埋めたまま動かないでいてくれる肇様の手を見ながら、まだ慣れない異物感に浅く息をしていると『ちゃんと息してるな。じょうず』と肇様が私をあやすようにこめかみや目尻のあたりにくちづけました。布団に仰向けになっている私に寄り添うように横向きに寝そべる肇様の顔にすり寄りくちづけをねだれば、すぐに唇が重なりました。舌の付け根をやわく擦られて鼻から甘えた声が漏れます。くちづけが深くなりそちらに意識を向きそうになると、秘所に埋められたままだった肇様の指がゆっくりと動き始めました。中から抜けては入る感覚はやはり快感にはまだ遠く、どうしても身体が強張ります。すると肇様は抜き差しするのをやめて中の腹側を指で優しく押しながら撫で始めました。肇様の指先に触れられた場所から生まれるむずむずとしてもどかしい感覚に無意識に腰が捻じれてしまいます。中で緩い刺激を続けられながら、肇様の唇が顎から首筋、鎖骨へ降り、乳房を戯れのように吸ったあと乳首に触れました。びくりと身体を震わせた私の顔を見上げていたずらっぽく笑うと、私と目を合わせたままちろりと舌を出してわざと乳首を避けて乳房の肌に舌を滑らせます。そうされると中のむずむずが胸にまで広がったようになって息が上がってしまいます。頭が沸いて勝手に出てくる涙で視界を滲ませながら、背中をのけぞらせて自ら胸を突き出すと肇様の舌がゆっくりと近付いて平たい面で乳首をゆっくりこそがれました。焦れたそこから生まれる快楽は耐えがたく、はしたない声が勝手に出て身体がびくびくと跳ねました。乳首をねぶられて喘いでいると、中を優しく撫でて甘やかしていた指が急に腹側の壁を強く押し込み、同時に親指で陰核を潰されて悲鳴のような声が出ました。視界が断続的に白く弾け、下腹部に重い快感が膨らみ絶頂を予感させます。そのまま親指を左右に小刻みに動かして陰核を強く刺激されてしまえば、ぎゅっと丸まったつま先がぶるぶると震え、腹の底で甘やかな絶頂が弾け二度、三度と声も出せぬまま身体が跳ねまわりました。尾を引く絶頂の余韻に小さく震えていれば、肇様が軽く触れるだけのくちづけをしながら、中から指を抜き、秘所に手のひらを当てて割れ目全体をゆっくり上下に擦りました。下腹部にくすぶる快感の余韻からまた火がついてしまいそうで私は肇様の鎖骨のあたりに手をついて首を横に振りました。肇様は私の額にひとつくちづけを落として秘所から手を離すと私の呼吸が落ち着くまで頼りなく震える身体を抱き締めていてくれます。それから用意してあった布を手桶で湿らせて、汗や愛液で汚れた身体を拭ってくれるのです。
 別荘で初めて肇様に身体を触れられてから、私は時折肇様と肌を合わすようになりました。肇様は私を身も世もなく乱れさせるものの、ご自身は私に何も求めずこの行為が最後までなされることもありませんでした。最中や事後に硬くなった肇様のものが身体に当たることはあれど、そのことに私から言及したり、肇様がなにか言ったりすることもありませんでした。私ばかりが得をしていて不公平だとは思うのですが、例えば私がそれを慰めるよう言ったとしたら、最後までことが進んでしまう気がして恐ろしくて何も言えないのです。もし私が処女でなくなったら、母は用なしになった私を迎え入れてくれないのではないか。母にとって価値があるのは私の処女だけだからです。そう思うと、肇様にひどいことをしているとわかっていても、どうしても前に進むことができないのです。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...