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しょじょ【処女】
しおりを挟むしょじょ【処女】少女期を過ぎた女性が、性的経験をまだ持たないこと。また、その女性。
私の中にある一番古い記憶は、酒の匂いをさせながら泣きじゃくる母に『お前のショジョには価値がある』と何度も何度も聞かされたことです。そのときは『ショジョ』がなんなのかわからず、ただ必死そうな母に合わせて頷いていました。私は母と二人暮らしでしたし、外には絶対に出るなときつく言われていたので、母以外の人間を目にする機会はほとんどありませんでした。ですが、時折母は男の人を連れ帰ってきて一晩中何かを叫びながらどたばたと布団の上で暴れていることがありました。そういった男の人はだいたい昼になる前には出てゆくのですが、中には幼い私に興味を示す人もおりました。母の邪魔にならないように身を潜めている土間の隅から引きずり出されて衣服を剥ぎ取られたあたりで大抵母が激昂して男の人を滅茶苦茶に殴ったり手当たり次第に物を投げつけたりします。『こいつのショジョにいくらの価値があると思っているんだ』『あたしがどれだけ苦労してこいつを生かしてるか知らねえのか』などと叫ぶ母に男の人は『きちがい』とか『くそあま』などと言い捨てて出てゆくのです。こういうことがあったとき、母は私を殴ります。訳が分からなくなるくらい殴られはしますが、身体のどこかに傷や不具合が残ることはなかったので、そのたびに私はきっと自分の『ショジョ』に価値があるおかげだなあ、と感謝したものです。
ある日、いつになく上機嫌な母に髪を洗って身体を拭くように言われました。言う通りにすると、今度は穴もほつれもない綺麗な着物を渡されました。身体を清潔にすることも服を着替えることもそれほど経験が無かったので、妙に緊張したのを覚えています。思えば、昼間に寝て夜の内に働く母が日も高いうちにめかしこんでいたことも常ではないことでした。いつもは上がることを許されていない座敷に座らされ『今から大事なお客様がいらっしゃるからね、いい子にするのよ』と優しく言われて私は何度も頷きました。そうしてやって来たのは三人の男の人でした。男の人というのは母が連れ帰ってくるような、髭が生えていて酒や煙草の匂いのする声の大きい人間だと思っていたので、汚れていない服に身を包みぴしりと背筋を伸ばして喋るその人たちは私にとってまるで未知の存在であったことは言うまでもありません。にこにこと笑う母が何度も私を指し示し『ダンナサマのオナサケをいただきできた子でございます』『目元などよく似ておりますでしょう。今年で十五になりますが、もちろんショジョでございます』と説明していました。母が熱心に話しかけていた男の人は正座したままの私を見下ろしていましたが、その目は腹を蹴られて吐瀉物まみれになった私を見る時の母の目と似ていましたから、上機嫌な母には悪いのですがあまり良いことにはならないだろうなと思っていました。『この娘は屋敷に連れ帰る。お前は追ってサタを待て』と男の人が捲し立てる母を遮ってそう言うと、私の二の腕を掴んで引き立てました。突然のこととつま先が地面に着くか着かないかくらいまで身体を持ち上げられていたので、私は生まれて初めての家の外に怯える暇さえ与えられずに待たせてあった車に押し込められてしまいました。私の世界の全てであった長屋からは母の金切り声が響いていましたが、あいにく車のやかましいエンジン音で内容までは聞き取れませんでした。母と土間の隅しか知らなかった私にとっては何もかもが初めてで頭はパニック寸前でした。なので母の『いい子にするのよ』と言う声を何度も頭の中で繰り返していました。そこから先は何もかも目まぐるしくて何を言われたのかあまり覚えていません。長屋よりもずっと大きな建物に着くなり知らない人にお風呂に放り込まれ、全身を何度も擦られました。着物を何枚も着せられぎゅうぎゅうと帯を絞められたあと、私を車に押し込めた男の人に広い部屋まで連れてこられました。その部屋には別の男の人と女の人が怖い顔をして座っていました。『ズガタカイ』と私を連れてきた男の人に言われたのですが、何のことやらわからないでいると頭を掴まれて畳に顔を押し付けられました。ややあって『顔を見せろ』と声が聞こえると、今度は頭を持ち上げられました。私の顔を見た怖い顔の男の人は『代わりに仕立てろ』とだけ言うと立ち上がって部屋を出て行きました。女の人は終ぞ言葉を発さないまま男の人について出て行ってしまいました。
こうして、私の斎明寺家での暮らしが始まったのです。
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