1 / 8
プロローグ
しおりを挟む
英雄とは大切な人を守ることができる人。
ただこれだけが英雄の条件なんだ。
とても簡単だろ。
必要なものは優しさであったり、強さであったり、人を心から愛することであったり、一見簡単に見える事柄だ。
しかし、凡人は本当の意味で優しく、強く、愛を持って生きることができない。
愛を持っていても守る強さがなかったり、守る強さを持っていても愛がなかったり、
凡人は何かが欠けていて英雄になれない。
でもそれさえ埋めることができれば英雄になれるんだ。
つまり誰にでも英雄になれる才能はある。
少年は幼く、理解が追いついていないのか首を傾げる。
「あんまり英雄ってすごくなさそうだね」
「そうかい?」
「だって愛とか強さとか持ってればみんななれちゃうんでしょ」
「そうだね、誰にでも英雄の資格はある。でも誰にでも英雄になれるわけじゃない」
「なれるけどなれない?よくわかんないよ」
少年は不満そうに頰を膨らませた。それを見て少し真面目な顔で老人は言う。
「ライはきっと英雄になれるぞ、俺が保証する」
「ほんと!」
途端に目を輝かせた少年は嬉しそうに古びたベットの上で飛び跳ねた。その瞬間にベッドが悲鳴をあげ、少年は慌てて坐り直す。それを見た老人は楽しげに笑った。
「ほんとになれるんだよね!」
「ああ、なれるとも。人より優しく、強く、愛を持って生きることができたならね」
老人は優しく少年の頭に手を置く。少年は気持ちよさそうに擦り付けた。
「でもね、僕はみんなから尊敬される英雄じゃなくて、大好きな人を守れる英雄になりたいんだ」
急に真面目な顔になった少年に老人は少し驚いた様子だったが、すぐに目を細め愛おしそうに少年を見つめる。
「そうかい、お前らしいね」
「そうかな?だってお爺ちゃんはいつも僕を守ってくれるからね。お爺ちゃんはかっこいいんだ!」
下の階からのパンの焼けた匂いが少年の鼻孔をくすぐると、話の続きよりも食欲が勝ったようで部屋を飛び出して行った。
老人もゆっくりと起き上がり、少年の後を追う。
古びたベットには少年が読んでいた英雄譚の絵本があった。
開かれたページには白銀に輝く剣を暁の中天へと掲げ、胸に龍をかたどった紋章を宿す男の絵が描かれていた。
「またお爺ちゃんとお部屋にいたのかい、今日は何を話してたんだい?」
「おかあさん!僕、英雄になる!」
ただこれだけが英雄の条件なんだ。
とても簡単だろ。
必要なものは優しさであったり、強さであったり、人を心から愛することであったり、一見簡単に見える事柄だ。
しかし、凡人は本当の意味で優しく、強く、愛を持って生きることができない。
愛を持っていても守る強さがなかったり、守る強さを持っていても愛がなかったり、
凡人は何かが欠けていて英雄になれない。
でもそれさえ埋めることができれば英雄になれるんだ。
つまり誰にでも英雄になれる才能はある。
少年は幼く、理解が追いついていないのか首を傾げる。
「あんまり英雄ってすごくなさそうだね」
「そうかい?」
「だって愛とか強さとか持ってればみんななれちゃうんでしょ」
「そうだね、誰にでも英雄の資格はある。でも誰にでも英雄になれるわけじゃない」
「なれるけどなれない?よくわかんないよ」
少年は不満そうに頰を膨らませた。それを見て少し真面目な顔で老人は言う。
「ライはきっと英雄になれるぞ、俺が保証する」
「ほんと!」
途端に目を輝かせた少年は嬉しそうに古びたベットの上で飛び跳ねた。その瞬間にベッドが悲鳴をあげ、少年は慌てて坐り直す。それを見た老人は楽しげに笑った。
「ほんとになれるんだよね!」
「ああ、なれるとも。人より優しく、強く、愛を持って生きることができたならね」
老人は優しく少年の頭に手を置く。少年は気持ちよさそうに擦り付けた。
「でもね、僕はみんなから尊敬される英雄じゃなくて、大好きな人を守れる英雄になりたいんだ」
急に真面目な顔になった少年に老人は少し驚いた様子だったが、すぐに目を細め愛おしそうに少年を見つめる。
「そうかい、お前らしいね」
「そうかな?だってお爺ちゃんはいつも僕を守ってくれるからね。お爺ちゃんはかっこいいんだ!」
下の階からのパンの焼けた匂いが少年の鼻孔をくすぐると、話の続きよりも食欲が勝ったようで部屋を飛び出して行った。
老人もゆっくりと起き上がり、少年の後を追う。
古びたベットには少年が読んでいた英雄譚の絵本があった。
開かれたページには白銀に輝く剣を暁の中天へと掲げ、胸に龍をかたどった紋章を宿す男の絵が描かれていた。
「またお爺ちゃんとお部屋にいたのかい、今日は何を話してたんだい?」
「おかあさん!僕、英雄になる!」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
やさしい『だけ』の人
家紋武範
恋愛
城から離れた農家の娘デイジーは、心優しい青年フィンに恋い焦がれていた。フィンはデイジーにプロポーズし、迎えに来ると言い残したものの、城は政変に巻き込まれ、デイジーがフィンと会うことはしばらくなかった。
しかし、日が過ぎてデイジーが城からの街道を見ると、フィンらしきものの姿が見える。
それはありし日のフィンの姿ではなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
10秒あれば充分だった
詩森さよ(さよ吉)
ファンタジー
俺、黒瀬透は親友たちと彼女とともに異世界へクラス召喚に遭ってしまった。
どうやら俺たちを利用しようという悪い方の召喚のようだ。
だが彼らは俺たちのステータスを見て……。
小説家になろう、アルファポリス(敬称略)にも掲載。
筆者は体調不良のため、コメントなどを受けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる