神護の猪(しし)

有触多聞(ありふれたもん)

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相飲まむ酒

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 下着が濡れる。

 昨夜よりも少ない量ではあるが、射精をしてしまった。

「あ、あ」

 唇が離れる。

 あっという間に達してしまったからなのか。

 与えられた快感が抜けきらないのか。

 ブラッドは蕩け切った表情のまま、気の抜ける声しか出せなかった。

「恥ずかしいことじゃない」

 アルバートはブラッドの頬に軽い口付けをする。

 耳まで真っ赤に染まり、両膝をこすり合わせて、射精した事実を隠そうとしているブラッドに対し、アルバートはなにも思っていないかのような表情を浮かべていた。

「服の上からでも気持ちよかったのだろう?」

 その問いかけに対し、ブラッドは視線を逸らした。

 ……最悪だ。

 下着が生暖かい。

 脱ぐ時間さえも与えられずに達したことも、直接触られたわけではないのにもかかわらず、達するほどの快感を得てしまったことも認めたくない現実だった。

 ……昨日まで童貞だったくせに!

 本当はブラッドが知らないだけで、経験豊富なのではないだろうか。

 一瞬、頭を過ってしまった可能性を否定する。

 アルバートが他人に好意を向けた事実はない。それはブラッドが誰よりもわかっていることだった。

「かわいいよ。ブラッド」

 興奮しているのだろうか。

 それとも、緊張しているのだろうか。

 アルバートは慣れていない手つきでブラッドの服のボタンを外していく。

「うる、さい」

 力のない声だった。

 羞恥心が抜けない。

 馬車の中で煽っていたとは思えない大人しい姿にアルバートは気を良くしたのだろう。頬に触れるだけでキスをした。

 ……触れるだけじゃ足りないくせに。

 キスをするのは癖なのだろうか。

 触れられた頬が熱を持っているかのように熱い。

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