9 / 21
5-1
アルバイトの帰り道、夜空を見上げる
しおりを挟む
和彦が自然食品店でアルバイトを始めて三週間ほどが過ぎた。
帰り道、夜空を見上げた。民家と民家のすき間から、覗き見る感じだ。
回りの明る過ぎる街灯にじゃまされ、よくは見えない。
空を見上げること自体、ずいぶん久しぶりなことに気付く。多分、日本へ帰って来てからは初めてだ。
旅行中、和彦はいつも空を見上げていた。
空がもっと広かったし、近かった。
街灯が少なく、街全体が暗いので、夜空もよく見えた。空と簡単に一体化できる気がした。
日本では空が遠く、空の存在が感じられない。
久しぶりに空を見上げる気になったのは、今日、さつまいもの袋詰めをしていたら、主婦のパートさんから、突然、
「さつまいもばっかり詰めてんと、もっと他のことしましょ!」
と言われたことが尾を引いていたからだ。
確かに、さつまいもはそんなに売れる物ではないだろうし、ある程度詰めたらやめるつもりだった。ただ闇雲に詰めている、と思われていたようだ。
どうも、他の人との接点が取りにくい。声も、小さくなる。
旅行中は、声が小さい、とは言われなかったし、英語を話す時は、外国語であるがゆえに、伝わることを心掛けて喋るので、自然と声も出ていたように思う。
職場で、和彦がしてきた旅について興味を持って尋ねてくるのは年配の溝口さんだけで、他のパートさんなどは、何も聞いてこないし、和彦も、パートさん達に旅の話などしても伝わらないだろう、と何も言わない。
和彦の方も、パートさん達が盛り上がっている家庭の話や子供の話はよく分からないし入って行けず、黙々と野菜を詰めている。
帰り道、夜空を見上げた。民家と民家のすき間から、覗き見る感じだ。
回りの明る過ぎる街灯にじゃまされ、よくは見えない。
空を見上げること自体、ずいぶん久しぶりなことに気付く。多分、日本へ帰って来てからは初めてだ。
旅行中、和彦はいつも空を見上げていた。
空がもっと広かったし、近かった。
街灯が少なく、街全体が暗いので、夜空もよく見えた。空と簡単に一体化できる気がした。
日本では空が遠く、空の存在が感じられない。
久しぶりに空を見上げる気になったのは、今日、さつまいもの袋詰めをしていたら、主婦のパートさんから、突然、
「さつまいもばっかり詰めてんと、もっと他のことしましょ!」
と言われたことが尾を引いていたからだ。
確かに、さつまいもはそんなに売れる物ではないだろうし、ある程度詰めたらやめるつもりだった。ただ闇雲に詰めている、と思われていたようだ。
どうも、他の人との接点が取りにくい。声も、小さくなる。
旅行中は、声が小さい、とは言われなかったし、英語を話す時は、外国語であるがゆえに、伝わることを心掛けて喋るので、自然と声も出ていたように思う。
職場で、和彦がしてきた旅について興味を持って尋ねてくるのは年配の溝口さんだけで、他のパートさんなどは、何も聞いてこないし、和彦も、パートさん達に旅の話などしても伝わらないだろう、と何も言わない。
和彦の方も、パートさん達が盛り上がっている家庭の話や子供の話はよく分からないし入って行けず、黙々と野菜を詰めている。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
Tokyo Flowers
シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。

大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~
石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。
さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。
困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。
利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。
しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。
この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。

サナギ
タニグチ・イジー
現代文学
以前に書いた作品です。最後の日付が作成年月日になります。note(https://note.com/izzyapoet/)にも作品をアップしています。
仕方なく「男性向け」を選びましたが、男性でも女性でもそうでない方でもどんな人でもお読み頂ける作品です。


イクォール
おにぎり
現代文学
ユウスケとアヤは、些細なことでじゃれ合うような関係だった。
ある日、ユウスケはアヤをからかった後、機嫌を直させるためにお気に入りのパン屋へ誘う。
焼きたてのクロワッサンを食べながら過ごす時間は、彼にとってかけがえのないものだった。
しかし、その幸せな瞬間は突然終わりを迎える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる