思い出した夢

松ヶ崎稲草

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思い出しながら

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 マスコミの報道姿勢が萎縮する一方で、ネット上にはテレビのニュースでは流さない政権の暗部についての情報が溢れている。
 今は萎んでしまったとは言え、和彦が少しだけマスコミ、ジャーナリズムの世界を覗いていた一九九〇年代前半には決してみられなかった、十代、二十代の若者達が自主的にデモ行進を行い、安保法制反対や憲法改正反対、政権打倒を叫ぶという現象も起こったことがあった。
 吉田茂は彼らの取材や支援もしていたようで、その後、就職したり、と変化している彼らを追ってもいるらしい。
 五十代となった和彦も、今は全く無関係な場所にいるが、この状態から何かできることってないのかな、吉田茂の近況やネット上を賑わすあらゆる情報に触発され、忘れていた日々を思い出しながら考えてみるが、今のところは日常を生きるしかない、と思い直す。
 ただ、毎日、仕事をして、息抜きにネットサーフィンをする。
 子供の頃の立ち読みのはしごや二十代の頃の神保町の古書店街通いに似ていて、自分が抱えている問題を解決する手段を探して、ネット情報の海を彷徨っている感じがする。問題の本質は、以前から変わっていない気がする。
 薄闇に光る琵琶湖の水面を横目に見つつ風の冷たさに耐えながら十分ほど走ると、家族の待つ自宅のある少し古い住宅地へと差し掛かる。
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